トピックスのとびら

図書館には図書、雑誌、神奈川資料、新聞、視聴覚資料、インターネットといったたくさんの情報のとびらがあります。
そのとびらを開いて、時事的な話題を複合的な視点から紹介します。

No.138 アメリカ社会の今(2017年1月発行) PDF版219KB



 2016年11月のアメリカ大統領選挙では、大方の予想を覆し、共和党のドナルド・トランプ氏が勝利しました。選挙期間中の過激な発言の数々は国内外に様々な反響を巻き起こし、アメリカ国内政治はもとより国際情勢、世界経済の先行きに大きな影響を及ぼすことが予想されています。かつての「偉大なアメリカ」を取り戻そうとするトランプ大統領。アメリカ社会は今どのような課題を抱えているのでしょうか。「格差」、「社会の分断」、「保守主義」、「反知性主義」などのキーワードから現在のアメリカ社会を探る資料を紹介します。



図書のとびら

紹介資料表紙紹介資料表紙 『誰がアメリカンドリームを奪ったのか?』 上・下
ヘドリック・スミス著 朝日新聞出版 2015 請求記号:332.53/94/1、2(22800403) (22800429) 公開

上:資本主義が生んだ格差大国
下:貧困層へ転落する中間層

 トランプ氏の大統領選勝利には白人中間層の怒りが要因の一つであるといわれています。本書で著者は「現在のアメリカは、権力、金、イデオロギーでくっきりと二分された国になっている」とし、最大の難題で最も危険な断層線を収入と富の著しい格差であると断言しています。富裕層を優遇する政策やグローバル化などにより、中間層と呼ばれる普通の人々が普通の夢を持つことすらかなわず貧困層へ没落していく事例が多数紹介され、格差の現実が突きつけられます。全米ベストセラーとなった現代アメリカ論です。

紹介資料表紙 『世界に分断と対立を撒き散らす経済の罠』
ジョセフ・E・スティグリッツ著 徳間書店 2015 請求記号:333.6/708 (22810352) 公開

 ノーベル経済学賞を受賞している著者は、大統領経済諮問委員会の長、世界銀行チーフエコノミストなどの要職を経たのち、「行動する経済学者」として世界経済の現状を取材し、グローバル化がもたらす弊害に警鐘を鳴らし続けています。本書では話題となったトマ・ピケティ著『21世紀の資本』(※当館所蔵)にも触れながら、今の米国社会においても、租税政策や教育・医療などの社会政策により人々に機会の均等を保障することで不平等を解消できると訴えています。
※『21世紀の資本』トマ・ピケティ著 みすず書房 2014.12 [331.82/14(22777486)公開]

紹介資料表紙 『分断されるアメリカ』
サミュエル・ハンチントン著 集英社 2004 請求記号:302.53NN/318 (21717897) 公開

 ベストセラー『文明の衝突』の著者が、アメリカ人のナショナル・アイデンティティ(国民としての自己認識)に生まれつつある変化について論じています。アイデンティティの4つの要素「人種」「民族性」「信条」「文化」はそれぞれ希薄化し、その結果、アメリカ社会はアングロ・プロテスタントとヒスパニックによる二言語・二文化に分断されつつあるとしています。大統領選挙期間中、トランプ氏の「メキシコとの国境に壁をつくる」との発言が物議を醸しましたが、10年以上前に出版された本書でその危険性がすでに指摘されていたことは驚きです。

紹介資料表紙 『保守主義とは何か』
宇野重規著 中央公論新社 2016 請求記号:311.4/21 (22879340) 公開

 「保守」を自認するトランプ氏ですが、大統領選において保守派の支持も分かれました。本書によると本来「保守主義」は、急速な進歩・革命を疑問視し、社会は過去からの連続性の上に少しずつ進んでいくべきであるという考え方であり、それなりの年齢に達した分別のある思想というニュアンスもあったそうです。本書ではヨーロッパ、アメリカ、日本の保守主義について、歴史的・思想的に明らかにしています。第3章ではアメリカの保守主義について解説し、宗教化と市場化を併せ持つ点で他国にはない特異性があるが、いずれの点も今日の世界情勢の重要な要因であることから、アメリカの保守主義の展開が重要な意味を持つと述べています。

紹介資料表紙 『反知性主義 アメリカが生んだ「熱病」の正体』
森本あんり著 新潮社 2015 請求記号:192.53/5 (22796593) 公開

 アメリカ社会を分析する用語として使用されてきた「反知性主義」ですが、近年、日本社会の批評にも使われるようになってきました。本書ではその意味合いの違いを指摘し、アメリカにおける「反知性主義」をアメリカにおけるキリスト教史とともに解説しています。反知性主義は必ずしも知性そのものに対する反感ではなく、知性が特権階級だけの独占的な所有物になることへの反発であるそうです。トランプ支持の背景にはインテリ層に対する反発があったとの指摘もありますが、そこに宗教的な理由が存在することに気づかされます。

雑誌のとびら

紹介資料表紙 「特集 「混迷するアメリカ : 大統領選の深層」」
『世界』 岩波書店 第889号  2016年12月  p49-85 請求記号:Z051/3

 今回の大統領選の背景に、貧困・格差問題・人種差別などのアメリカ社会の歪みと、サンダース旋風に見られる民主主義の根強さを読み取り、大統領選の深層からアメリカ政治の現在を探る特集です。
 民主党予備選挙で1200万票を勝ち取ったサンダース上院議員へのインタビュー「諦めるなどという贅沢はありません、いいですか」のほか、古谷旬・北海商科大学教授へのインタビュー「米国ポピュリズム政治の源流から読み解く大統領選」、山岸敬和・青山学院大学教授の論考「苦悩するオバマケア」などを掲載しています。

紹介資料表紙 「特集 「世界を蝕むポピュリズムと排外主義」」
『中央公論』 中央公論新社 第130巻第8号  2016年8月  p49-115 請求記号:Z051/3

 第Ⅰ部「英EU離脱の衝撃」、第Ⅱ部「共振する『トランプ現象』」の二つの柱により、世界各地で起こっているポピュリズムと排外主義の流れを追っています。間弘嗣・青山学院大学教授らによる鼎談では、現在の政治状況がエリートと専門家の敗北と彼らに対する逆襲であると分析され、大衆が持つ素朴な知恵にも敬意を払う必要があり、今後、世界のエリートの在り方が問われると結ばれています。ほかに世界の指導者的立場にある「ミニ・トランプ」6人を取り上げる一方、ジャパン・ソサエティ会長らトランプ支持者へのインタビューも掲載しています。
 入江昭・ハーヴァード大学名誉教授の論考では、教育・教養水準の低い階層がEU離脱や自国の主権にこだわっていると指摘され、今後は教育者の役割が飛躍的に重要になるべきと述べられています。

新聞のとびら

「米国社会とは」
読売新聞 2016年12月5日 p17 

 「米大統領選はドナルド・トランプ氏の勝利で終わった。大方の予想を裏切った結果だったが、アメリカ社会がそもそもどんな社会なのか、多くの日本人は知らないのではなかろうか。その一端について、アメリカ社会に詳しい渡辺靖・慶応大学教授に論考を寄せてもらい、森本あんり・国際基督教大学学務副学長には語ってもらった。
  渡辺 靖氏 時空の狭間 驚きの連続 (略) 森本 あんり氏 建国時の知恵 機能せず (略) 」

インターネットのとびら

国立国会図書館/『調査と情報-ISSUE BRIEF-』No.929「アメリカ新政権と日米関係の展望」
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10225342_po_0929.pdf?contentNo=1
 『調査と情報-ISSUE BRIEF-』は、国立国会図書館調査及び立法考査局が発行する国政上の課題に関する簡潔な解説シリーズです。
 本号では、2016年11月大統領選挙の結果、新政権の発足に向けた状況、日米関係の展望などがまとめられています。大統領選における出口調査では、アメリカが直面しているもっとも重要な課題として「経済」を挙げた投票者が52%と最も多かったそうです。支持候補別の投票者の傾向も示されています。

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