トピックスのとびら

図書館には図書、雑誌、神奈川資料、新聞、視聴覚資料、インターネットといったたくさんの情報のとびらがあります。
そのとびらを開いて、時事的な話題を複合的な視点から紹介します。

No.137 子どもの貧困(2016年12月発行)

 2000年代後半、日本の子どもが貧困状態にあるという問題が急浮上し、日本に衝撃を与えました。今、日本の子どもの6人に1人が相対的貧困の状態にあると言われています。この問題は単なる経済的困窮にとどまらず、子どもたちの抱えている問題とその背景は広範囲にわたり、日本の社会に大きな損失を与えかねない、喫緊の課題とされています。2013年「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が成立し、翌年には大綱が閣議決定されました。2015年「子供の未来応援国民運動」が始動し、子ども食堂、学習支援など民間の支援活動も広がりつつあります。けれども、子どもの貧困は外からは決して見えない、見ようとしなければわからない問題で、それだけに理解されずらく、十分な認識はまだ得られていないと言われています。今、目の前にある課題に、わたしたち大人が総力をあげて考える時が来ているのではないでしょうか。

図書のとびら

紹介資料表紙 『子どもの貧困 2―解決策を考える』
阿部彩著 岩波書店 2014 請求記号:H6/アベ/2 (111080057)女性関連資料室2公開

 2008年『子どもの貧困-日本の不公平を考える』(当館所蔵)※で我が国に子どもの貧困が存在することを明らかにした著者が、本書では海外の研究データなどあらゆる知見から解決策という難題に挑んでいます。ほとんどの社会問題がそうであるように、この問題の決定的な解決策を見出すことはできていません。様々な方法が提示されていますが、利点と欠点があり、何が優先されるべきか、より効果的な策は何かなど、試行錯誤を繰り返し時間をかけて取り組んでいく問題であることがわかります。その中でも著者は乳幼児期の子どもとその親への支援をもっとも重視すべきであると述べています。現状を語るだけでは前に進まないと痛感した著者が、この問題解消に向け何をしていくべきか、その糸口を示しています。
※H6/ アベ /1 (111042925)女性関連資料室2公開

紹介資料表紙 『女性と子どもの貧困  社会から孤立した人たちを追った』
樋田敦子著 大和書房 2015 請求記号:G8/ヒダ (22874648)女性関連資料室1公開

 本書は女性と子どもを取材したものです。どこにでもある普通の家庭。けれども、外からは決して気づくことのできない苦しい生活の実態や、貧困が招いた悲しい事件など、その背景と原因を分析し、どのように対処したらよいのか、ということにまで言及しています。病気、リストラ、離婚、介護など、誰にでも起こりうることがきっかけとなって、いつ貧困生活に陥るかわからないと言います。そのとき、どうすべきか。本書を見ながらともに考えて欲しいと語っています。

紹介資料表紙紹介資料表紙 『子どもの貧困/不利/困難を考える』1巻・2巻
埋橋孝文ほか著 ミネルヴァ書房 2015 請求記号:369.4/548/1,2(22822985)(22823686)公開

 2巻からなる本書は、多方面の研究者の共同研究によって、子どもの貧困を様々な角度からとらえ、福祉と教育の現場での支援のあり方を論じています。生活困窮により子どもが様々な資源や機会を奪われると、その子供は疎外感や劣等感を感じ、結果、自己肯定感が低くなってしまうと言われています。このような状況のまま支援を行ってもうまくいかず、まず、自己肯定感を高めるための支援が必要であることを強調しています。また、子どもたちが社会で生きていくうえで、様々な不利・困難が覆いかぶさることは明確であり、それに対する「負けない力」を育む支援の在り方を提示しています。もっとも重要なことは、子どもたちが尊厳ある人生を送ることであると述べています。

紹介資料表紙 『生活保護世帯の子どものライフストーリー』
林明子著 勁草書房 2016 請求記号:367.61/47 (22858914)公開

 経済的に困難な状況は、子どもの学習、学校生活、進路などに影響を与え、貧困は世代を超えて継承される傾向が明らかになりつつあります。本書では、生活保護世帯の子どもを対象に調査を行い、子どもたちがどのようにして進路を決定していくのか、そのプロセスを明らかにし、経済的困窮が次の世代に繰り返される仕組みについて論じています。子どもたちのライフストーリーからは、多くの子どもたちが家庭内の家事役割に専念し、家庭内で自己肯定感を獲得していく一方で、学校生活からは離れていくことがわかります。経済的困難が学力や進路に直接的に影響を与えるのではないことを踏まえて、今後の支援のあり方を導き出しています。

雑誌のとびら

紹介資料表紙 特集「子どもたちの未来」
『福祉〔月刊〕』全国社会福祉協議会 第99巻第7巻 2016年6月 p10-45 請求記号:Z369/149

 子どもの生活を支援する活動団体について紹介しています。児童館、学童保育、自主夜間中学校、事業財団、チャイルドライン。それぞれの考え方や取り組みがわかります。支援活動は広がりつつありますが、今後望まれることは、それらが互いに協力連携し活動できる社会づくりだと述べています。記事の最後では「子供の貧困対策に関する大綱」に基づく、政府の施策内容について説明しています。また、2年前の記事になりますが、特集「子どもの貧困-漂流する若者たち」(2014年6月号)では、若者を取り巻く様々な問題を取り上げています。インタビュー記事では、『子どもの貧困』の著者でもある阿部彩氏が日本社会における子どもの貧困についてわかりやすく説明しています。併せて、ご覧下さい。

紹介資料表紙 特集「全国首長調査 貧困対策最前線 連鎖を防げ! 子どもへの支援重視」」
『日経グローカル』 日本経済新聞社  №304通巻739号 2016年11月 p10-31 請求記号:Z369/149

 生活困窮者自立支援法施行から1年半が経過しました。全国の47都道府県、814市区を対象にアンケート調査を行い、実際の現場である自治体の貧困対策の状況についてまとめています。子どもの貧困対策については、「現在の貧困だけでなく、将来の貧困を防ぐ観点から対策を考える必要がある」など、貧困の連鎖を問題視する意見が大半を占め、また、最も重視している支援は教育支援であるという結果でした。注目事例では、神奈川県の「かながわ子どもの貧困対策会議」、「ひとり親への支援」が紹介されています。

視聴覚資料のとびら

『交響曲第5番,フランチェスカ・ダ・リミニ』
請求記号:CD11/チヤイ (41316217) 視聴覚資料室公開
 演奏しているシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラは、エネルギッシュでリズム感溢れる演奏が魅力と言われています。今回は、このオーケストラを設立した、ベネズエラの子ども支援「エル・システマ」について紹介します。
 貧しい子どもたちに無償で音楽教育をし、貧困・犯罪・暴力から救い出し、未来に希望をもてるようにすることを目的とした音楽活動です。ベネズエラ全土で約37万人の子どもたちが学ぶこの活動は政府の資金を主な財源とし、国を挙げての子ども支援として高く評価されています。日本では東日本大震災が発生した翌年に被災地の子どもたちを支援していくために、一般社団法人エル・システマジャパンが設立されました。現在、福島県相馬市、岩手県上閉伊郡大槌町で希望するすべての子どもたちが無償で音楽を学んでいます。このCDで演奏しているオーケストラはエル・システマの選抜メンバーです。(ちなみに指揮者の グスターボ・ドゥダメル は貧しい家庭ではありませんでしたが、エル・システマの音楽教室に通っていた生徒でした)
参考:『世界でいちばん貧しくて美しいオーケストラ』(当館所蔵、請求記号:762.61/1)、エル・システマジャパンのホームページより

インターネットのとびら

内閣府/内閣府の政策/共生社会/子どもの貧困対策
http://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/index.html
 子どもの貧困対策に関する法律、大綱に基づく実施状況、地方公共団体の取組などの情報を見ることができます。 リンクの 「子供の未来応援国民運動(子供の未来応援プロジェクト)」のサイトには、悩み事の内容から、どこにどのような支援があるのか検索できるようになっています。

神奈川県/県民局 次世代育成部/子ども家庭課
http://www.pref.kanagawa.jp/div/1395/
 神奈川県の子ども家庭課のサイトに「子どもの貧困対策」、「ひとり親世帯への支援」などの情報があります。「子どもの貧困対策」では、神奈川県子どもの貧困対策推進計画や、ひとり親家庭に向けた支援情報などの案内リーフレットを見ることができます。「神奈川県貧困対策推進計画」(平成27年)は、冊子体でも発行されていて、当館かながわ資料/新聞・雑誌室内で閲覧できます。

日本財団/支援活動について/子どもの貧困対策
http://www.nippon-foundation.or.jp/what/projects/ending_child_poverty/
  日本財団は、国民運動推進事務局の一員として、子どもの貧困対策の推進に取り組んでいます。子どもの居場所づくりに力を入れ、また「子供の未来応援基金」を設置しています。日本財団のレポートによると、このまま子どもの貧困の問題を放置した場合、わずか1学年あたりでも、経済的損失は2.9兆円、政府の財政負担は1.1兆円増加するという推計結果※が出ています。
※2013年15歳1学年の子どものみを対象として試算

お問い合わせ先へのリンク