かながわ資料ニュースレター第57号(2016年12月発行)

新着資料から

◆『中世鎌倉五山の建築』
 鈴木亘著 中央公論美術出版 2016年 [K52.4/27]
    本書によると、日本における禅宗寺院のための建物(伽藍)は、鎌倉幕府の執権北条時頼により建長5(1253)年11月に落慶供養された鎌倉の建長寺が最初だそうです。その約30年後には執権北条時宗の求めに応じて宋僧・無学祖元が円覚寺を開堂し、鎌倉期末から南北朝期にかけての日本では、禅宗が最も盛んになり、それに従い禅寺の創立も盛んとなります。この時代の建築は、来日した僧や留学(入宋・入元)僧を通じてもたらされた宋様式を模して行われました。
  本書は、日本の中世建築に大きな影響を与えた鎌倉五山禅寺の伽藍配置と建築様式の重要性を明らかにするため、中世鎌倉五山であった建長寺・円覚寺・寿福寺・浄智寺・浄妙寺について、創立から盛期における伽藍及び塔頭の建築構成・形式等について考察したものです。『吾妻鏡』などの歴史書、寺院の記録、絵図、発掘調査報告書などさまざまな資料を使い、詳細かつ具体的に論じられています。

◆『コケを見に行こう! 森の中にひっそり息づく緑のじゅうたん』
 佐古文男著 樋口正信監修 技術評論社 2016年 [K47.4/34]
  今回紹介する新着資料は、はからずも2冊とも“鎌倉”本になってしまいました。というのも、この本が「鎌倉のコケ」を取り上げているからです。ほかには等々力渓谷公園、屋久島など全国のコケの名所5ヶ所が紹介されています。
  鎌倉は「山に切れ込むように谷戸が存在し、気候は湿潤で、コケの生育に適した土地である」そうで、“コケ見スポット”は東慶寺、浄智寺、杉本寺、報国寺、妙法寺。いずれも花や史跡で有名な寺院ですが、コケに注目して訪れたことはほとんどないのではないでしょうか。
  各寺の概要やよく見ることができるコケの情報が、美しい写真とともに掲載されています。コケの仕組みやコケの観察方法なども載っていて、コケ散歩を始めるにはちょうどよいガイドブックです。

新着のかながわ資料

新着資料の一部をご紹介します。

タイトル 著者 出版者 出版年 請求記号
ひらつかの家康伝説 由緒と地域 平塚市博物館 平塚市博物館 2016 K06.62/28/2016-3
日米新聞 大正7年7月7日等4日分 日米新聞社 1918 K07.1/56/61,62,65,68
頼朝と街道 鎌倉政権の東国支配 木村茂光 吉川弘文館 2016 K24.4/290
足利持氏とその時代  (関東足利氏の歴史4) 黒田基樹 戎光祥出版 2016 K28/423/4
横浜を創った人々 冨川洋 講談社エディトリアル 2016 K28.1/614
上宮田雑記 (三浦海岸シリーズ10) 長島文夫 長島文夫 2016 K291.33/38
ブラタモリ 1 長崎 金沢 鎌倉 NHK「ブラタモリ」制作班 KADOKAWA 2016 K291.4/456
ヘイトデモをとめた街 川崎・桜本の人びと  神奈川新聞「時代の正体」取材班 現代思潮新社 2016 K31.21/107
戦時中・戦後体験記 二宮町遺族会 2016 K36.61/39
伊勢原市石造物調査報告書 第4集 成瀬地区前編 伊勢原市文化財協会 伊勢原市教育委員会 2016 K38.64/26/4
綾瀬の野草 綾瀬市教育研究所 綾瀬市教育研究所 2016 K47.57/1
「炉端の会」20周年記念誌 川崎市立日本民家園 川崎市立日本民家園 2016 K52.21/53
川崎市役所本庁舎さよならイベント 本庁舎記念アルバム 川崎市総務企画局本庁舎等建替準備室 川崎市総務企画局本庁舎等建替準備室 2016 K52.21/54
MUSLIM FRIENDLY RESTAURANT GUIDEBOOK KANAGAWA 慶應義塾大学SFC研究所イスラーム研究・ラボ 神奈川県産業労働局観光部国際観光課 2016 K67/289
まるごと氷川丸展 日本郵船歴史博物館 日本郵船歴史博物館 2016 K68.1/335
こうちゃんの氷川丸 田村朗 さく、吉野晃希男 え かまくら春秋社 2016 K68.1/336
愛の言葉 箱根ガラスの森美術館のひみつ 岩田正崔 世界文化クリエイティブ 2016 K70.85/16
横浜芝山漆器の世界 金子皓彦コレクションを中心に 横浜開港資料館 横浜市ふるさと歴史財団 2016 K75.1/41
宮川香山展 横浜・真葛ミュージアムコレクションから 広瀬麻美編 大本山増上寺 2016 K75.1/43
いきものがたり 水野良樹 小学館 2016 K76/105
昭和十八年の冬最後の箱根駅伝 早坂隆 中央公論新社 2016 K78/310
昭和十八年幻の箱根駅伝 澤宮優 河出書房新社 2016 K78/311
ハイカラケイバを初めて候 根岸競馬場開設150周年記念 馬事文化財団 2016 K78.1/51/2016-6
駅伝ランナー 2,3 佐藤いつ子 KADOKAWA 2016 K97.1/243/2,3

うちのおたから自慢 『モルフ商会引札』
モルフ商会、1895 [K58.13/2/m29-2]

 「引(き)札」とは、商店が商品売り出しなどを宣伝するために配るもので、“ちらし”と同義です。
 これは右側に明治29年の略暦が刷られているので、28年中に印刷して29年の年賀のあいさつに配られたものと思われます。
 「モルフ商会」は、慶応元(1865)年にスイス人モルフが起こした生糸輸出会社で、やがて英国産繊維製品や雑貨の輸入も行うようになりました。この引き札にも「英國コーツ會社製造世界第一等カタン糸」という取扱商品の用途や特長が書かれていますし、三宝の上には樽か鏡餅のように糸巻が積んであります。この札を配った4年後、モルフ商会は横浜からは姿を消しました。

モルフ商会引札

『モルフ商会引札』

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【参考文献】
『図説 横濱外国人居留地』横浜開港資料館編,有隣堂,1998年[K26.1/125]

100年前の“観光地”  横浜貿易新報社選「新避暑地十二勝」より
【新避暑地十二勝 第10位 茅ケ崎】
――「横浜貿易新報」大正3年7月25日(土)7面

 “茅ヶ崎”といえば夏の海。大正時代のこの記事でもまず、「茅ケ崎の海岸は実に県下有数の海水浴地である」と紹介されています。
 海岸の眺望は実に絶佳である、?(はる)かの沖には大島の噴煙が揺曳(えうえい)し、 群青の夏空を背景として白帆が満々たる海面を旋転してゐる、左手(ゆんて)には房総半島が一抹の藍を刷き三浦半島が更らに濃い藍で一線を画してゐる、江の島はすぐ鼻の先に滴るばかりの緑に包まれて横たはつてゐる、右手(めて)には箱根の翠巒に続いて伊豆半島が突出してゐる。その後ろには富士が聳えてゐる。
 この記事にある江の島などのほとんどの風物は今も美しく見渡すことができますが、今は見えないものが1つ――そう、大島の噴煙です。大島は明治45(1912)年2月の噴火以来断続的に活動を続け、この記事の書かれた大正3(1914)年も、5月に噴火をしています。前号で紹介した長井沿岸の記事にも、「セン大島が噴火したらう!?彼の時なんか火柱がスツカリ見えて、海が真赤になつちやつたとさ。そいだもんだから遠くの知らない人達は、長井が火事だと思つて飛んで来たツて」と書かれており、当時大きな話題となっていたようです。
 現在は“サザン(オールスターズ)”と“しらす”が名物の感のある茅ヶ崎ですが、この頃の特産物としては、「鮮魚、大麦、小麦、甘藷、砂利、桃、西瓜、葭簀、煮干、繭」が挙げられています。「殊に小麦は相州小麦と云つて市場に定評あるものである、野田の亀甲萬、山サ等はこの相州小麦を原料とするのである」。小麦畑の広がった茅ヶ崎――今ではあまり想像がつきませんね。

茅ヶ崎海岸より見る江の島 *2016.11撮影

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【参考文献】
・気象庁Hp「全国の活火山の活動履歴等 伊豆大島」http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/317_Izu-Oshima/317_index.html
・茅ヶ崎市Hp『特別展 ちがさきの食文化と道具たち』茅ヶ崎市文化資料館編,茅ヶ崎市教育委員会,2006年 http://www.city.chigasaki.kanagawa.jp/bunka_rekishi/bunkashiryokan/kankobutsu/1006134.html