かながわ資料ニュースレター第55号(2016年8月発行)

新着資料から

◆『地域と人びとをささえる資料 古文書からプランクトンまで』
 神奈川地域資料保全ネットワーク編 勉誠出版 2016年 [K01/168]
    東日本大震災では、津波などにより多くの資料が紛失・汚破損しました。
  「それはどこか違う場所の無関係な出来事ではない」という危機意識から発足した神奈川歴史資料保全ネットワーク(現・神奈川地域資料保全ネットワーク)が、2014年に開催したシンポジウムの内容とその参加者の寄稿により作り上げたのがこの本です。
  “地域の資料”とは何を指すのか、誰にとってどのような意味を持つものなのか。そしてそれをどのように残していくのがよいのか――さまざまな実践から考えることができるようになっています。

◆『イベントで育つ科学の心 子どもの目が輝くイベントとは? 開け!科学の扉①』
 東京応化科学技術振興財団編 学研プラス 2016年 [K40/43]
  この本では、東京応化科学技術振興財団の「科学技術の普及・啓発助成」制度で助成を受けている神奈川県内の3団体の活動を紹介しています。
  「川崎北部少年少女発明クラブ」は、公益社団法人発明協会の委嘱を受けて2012年に始まりました。「神奈川県立青少年センター」は1962年に開館した施設ですが、事業の柱の一つである「青少年支援・指導者の育成」として、2005年から「おもしろ実験・科学工作指導者セミナー」を開催しています。「かわさきサイエンスチャレンジ」は、川崎市内外の企業・団体の協力によって2003年から夏休みの2日間に開催されている、ものづくり教室や実験ショーなどを行うイベントです。
  いずれも活動に携わっている人や参加者へのインタビュー、実際の活動の様子が、講座に使われた資料や豊富な写真とともに紹介されていて、このような体験によって科学の楽しさ・おもしろさが伝わるのだということがわかります。

新着のかながわ資料

新着資料の一部をご紹介します。

タイトル 著 者 出版者 出版年 請求記号
神奈川県企業博物館連絡会30年のあゆみ 神奈川県企業博物館連絡会 2016 K06/107/30
神奈川県立音楽堂60周年記念誌および別冊資料集 神奈川県立音楽堂 2016 K091/1-2/60-1・2
時宗文献目録 小野澤眞 高志書院 2016 K18/186
ひとすじの道 最初の来日修道女マザー・マチルドの生涯 横浜雙葉学園監修 日本カメラ社 2016 K19.1/200
津久井町史 通史編 原始・古代・中世 相模原市教育委員会教育局生涯学習部博物館 相模原市 2016 K21.95/26/2-1
北条氏綱と戦国関東争奪戦 湯山学 戎光祥出版 2016 K24/515
茅ケ崎物語 高橋昭和 講談社エディトリアル 2016 K26.53/15
足利持氏 (中世関東武士の研究20) 植田真平 戎光祥出版 2016 K28/463
丸子多摩川に生きる 上丸子村・青木根集落とその歴史的変遷 青木義雄 青木義雄 2015 K28.21/83
三浦一族の研究 高橋秀樹 吉川弘文館 2016 K28.3/24
鎌倉入門 (日本人の原風景3) 伊藤玄二郎 かまくら春秋社 2016 K291.4/454
逗子 市制60周年記念誌 逗子市 逗子市 2015 K31.32/36/60
横浜弁護士会から神奈川県弁護士会へ 会名変更記念誌 神奈川県弁護士会 2016 K32.1/86-2
われらは愛と正義を否定する 脳性マヒ者横田弘と「青い芝」 横田弘ほか 生活書院 2016 K36/1208
創立七十周年記念誌 神奈川県立三崎高等学校 神奈川県立三崎高等学校 2003 K37.33/12/70
むかーしむかしの道具たち 昔話が伝えるくらし 川崎市立日本民家園 川崎市立日本民家園 2015 K38/251
相模湾深海の八景 藤岡換太郎 有隣堂 2016 K45/285
「奇跡の自然」の守りかた 三浦半島・小網代の谷から 岸由二・柳瀬博一 筑摩書房 2016 K46.33/17
開成町の代表的樹木 開成町文化財保護委員会編 開成町 2016 K47.81/14
鎌倉広町緑地に舞う蝶 上村文次 弘報印刷株式会社出版センター 2016 K48.4/18
木版画の多色摺りに挑戦しよう! 子ども参加プログラム向けパンフレット2 新藤茂 鎌倉市鏑木清方記念美術館 2016 K73.4/18
多摩川1970-74 江成常夫 平凡社 2016 K74/106
湘南戦後文学紀行 ゆりはじめ 江ノ電沿線新聞社 2016 K91/118
室町の知的基盤と言説形成 仮名本『曽我物語』とその周辺 渡瀬淳子 勉誠出版 2016 K97/172

うちのおたから自慢 『吾妻軍歌集』
軍港堂発行 1908年(増補4版) [K76/25]

 今年4月、横須賀市は呉市・佐世保市・舞鶴市とともに、「旧軍港4市」として日本遺産に認定されました。これらの都市は、いずれも日本海軍と深く関わって発展した町です。
 今回紹介するのは、横須賀市にあった、その名も「軍港堂」という書店が発行した軍歌の歌詞集です。縦11㎝・横15㎝の横長で、表紙には碇と鎖がデザインされています。裏表紙の書き込みにより、「軍艦相模」に搭乗していた人が「明治四拾参年」に入手したものだとわかります。どのようなメロディーで歌われていたのかは、楽譜が載っていないのでこの資料からはわかりませんが、掲載された53曲の外にも3曲ほどの歌詞が余白に手書きで足されてありますので、この当時は歌詞さえわかれば歌えたのでしょう。
 軍港堂は、海軍を満期除隊した股野三蔵が、海軍新兵用教科書刊行のため明治29(1896)年に起こした出版社・書店です。横須賀だけでなく佐世保・舞鶴等、他の海軍基地へも代理店を通して商売しました。明治40(1907)年に初版が発行されたこの『吾妻軍歌集』は、なかでも一番のベストセラーだったそうです。昭和19(1944)年に、建物の強制撤去等により廃業しました。

吾妻軍歌集

吾妻軍歌集より中身
『吾妻軍歌集』より
上:表紙
下:右頁は目次後半部分、左頁は1曲目の歌詞

【参考文献】
『横須賀郷土資料叢書 第八輯 横須賀港独案内/横須賀案内記/現代の横須賀』横須賀郷土資料復刻刊行会、1981年[K08.31/1/8-1~3]
横須賀市ホームページ

100年前の“観光地”  横浜貿易新報社選「新避暑地十二勝」より
【新避暑地十二勝 第8位 龍の口遊園】
――「横浜貿易新報」大正3年7月23日(木)7面

 龍之口遊園は東京の田中加藤治(かとうぢ)氏と龍口寺(りうこうじ)執事三角(みすみ)顕要(けんえう)氏らの尽力の下に五年計画、五万円の経費を投じて昨年から着手されたもので、龍口寺、常立寺(じゃうりふじ)、本蓮寺、法源寺の持山を切拓いて五万坪の一大遊園を作り出すべく目下着々工事の進行中である(中略)
 桜、楓(もみぢ)、躑躅等の花木一万本は昨年既にこの遊園の適当な箇所に植付けられたのである、遊園の奥には釈迦堂を安置し、池を掘り土橋を渡すといふ、而して釈迦堂の反対の丘にはベースのグラウンド設けらるゝといふから竣成の暁には県下否関東に稀な遊園地が出来上るに違ひない。(原文表記のまま)
 今回の記事はこのような書き出しです。これによると、なにやら広くて立派な遊園地ができるようで――でも現在、龍口寺周辺にそのような施設はありません。本当にできたのでしょうか?できたとすれば、いつ消えたのでしょう?そしてそれはなぜ?
 記事では大正6(1917)年頃完成予定となっていましたが、実際の龍口園(竜口園)の開園は昭和3(1928)年でした(“大正末期”とする資料もあり)。なぜこれほどまでに遅れてしまったのか、理由はわかりません。記事中の構想とは違って野球場や釈迦堂があったという記録はありませんが、常立寺からエレベータで入場でき、6階建て(一説には5階)の展望台や動物園があったそうです。ところがわずか6年後、昭和9(1934)年には閉園してしまいます。その理由も不明です。
 跡地は、昭和48(1973)年から藤沢市の風致公園「片瀬山公園」となっています。

片瀬山
江島神社から片瀬山を望む *2016.7撮影
当時の絵はがきには山上に建つ塔が写っているが、今は何もない。

【参考文献】
『藤沢の地名 第2版』日本地名研究所編,藤沢市,1990年[K291.52/24A]
『保存版 ふるさと藤沢 藤沢市制施行70周年記念写真集』郷土出版社,2010年 *藤沢市図書館所蔵
「文書館だより 文庫 第9号(2006.7)」藤沢市文書館,http://digital.city.fujisawa.kanagawa.jp/