かながわ資料室ニュースレター第39号(2013年12月発行)

新着資料から

◆『鶴岡八幡宮に行こう 源頼朝が創建した鎌倉の八幡さま』 
加藤健司指導・薗田稔監修 学研パブリッシング 2013年 [K17.4/ 67]

  本書は1冊丸々、鶴岡八幡宮のガイドブックです。鎌倉全体の案内本では個別に扱われないような旗上弁財天(鎌倉・江の島七福神の弁財天)や今宮などの末社も、大きなカラー写真と説明で紹介しています。また、祭事についても有名な流鏑馬やぼんぼり祭だけでなく、鈴虫放生祭など例大祭の詳細や、徐摩神事(正月)、火焚祭など数多くの行事を写真付きで知ることができます。さらに鶴岡八幡宮の由来を語る美しいイラストは、大人も子供も楽しめる内容となっています。八幡宮ゆかりの著名人として、生誕110周年を迎えた小津安二郎を紹介しています。昭和24(1949)年公開の『晩春』には鶴岡八幡宮もシーンに出てきます。
 吉田茂穂宮司のインタビューでは、宮司になる意外な一因として、鶴岡八幡宮の裏手に住み、鎌倉を愛した小林秀雄の大ファンだったことが明かされています。また、東大寺へ東日本大震災の合同復興祈願を呼びかける話は胸を打たれます。

◆『藤間家所蔵浮世絵全覧 相州茅ヶ崎柳島』
藤澤茜編著 藤間雄蔵 2013年 [K72.53/16]

  藤間家は文正元(1466)年没の藤間右馬之助を祖とする茅ヶ崎の旧家で、柳島湊での廻船業や農業を営み、江戸中期より柳島村の名主を務めました。本書は藤間家が所蔵する浮世絵版画439点を全図、カラーで紹介するものです。
 当所蔵品の収集に、作品の年代などから13代目当主の藤間柳庵(享和元[1801]年~明治16[1883]年)が関わったと考えられています。文学に明るく、世事に敏感だった柳庵はペリー来航時に浦賀に赴き、詳細な観察記録を著作『太平年表録』にて残しています。カリフォルニアの港を描いた歌川貞秀の横浜絵に、その嗜好を窺うことができます。また、風俗粛清を謳った天保の改革により役者や遊女を描いた絵は出版規制を受けましたが、収集品には353点の役者絵や、浮世絵に影響を受けたフィンセント・ファン・ゴッホの旧蔵品と同じ図柄の『新吉原 江戸町弐町目 稲本屋内香川』が含まれており、大変貴重な内容となっています。

かながわ資料室の新着資料

かながわ資料室の新着資料の一部をご紹介します。

タイトル 著 者 出版者 出版年 請求記号
しなやかな仕事術林文子PHP研究所2013K15.1/14
野の花のように咲き生きて田中順子廣済堂出版2013K19.13/36
関東・甲信越古代遺跡ガイド東京遺跡散策会メイツ出版2013K21/110
鎌倉こまち今昔鎌倉こまち今昔編集委員会銀の鈴社2013K21.4/36
中世鎌倉の都市構造と竪穴建物鈴木弘太同成社2013K24.4/274
北条氏年表黒田基樹高志書院2013K28.7/127
関東大震災と土砂災害井上公夫古今書院2013K291.4/425
京急電鉄のひみつPHP研究所PHP研究所2013K68/514
江ノ電 講談社2013K68.4/51
箱根登山鉄道125年のあゆみ生方良雄JTBパブリッシング2013K68.85/156
犬塚勉展犬塚勉NHKプロモーション2011K72/157
クラシック大好き!神奈川フィルの名曲案内神奈川フィルハーモニー管弦楽団メイツ出版2013K76/95
高校野球神奈川グラフ 2013神奈川新聞社神奈川新聞社2013K78/38/2013
最後のクジラ赤坂英一講談社2013K78.1/169
フットボールサミット 第14回『フットボールサミット』議会カンゼン2013K78.18/1
カメラが撮らえた富士山の明治・大正・昭和石津伸子中経出版2013K291/787
横浜謎解き散歩小市和雄中経出版2013K291.1/270
箱根・足柄散歩24コース神奈川歴史教育研究会山川出版社2013K291.8/67

コラム・かながわ・フォーカス

[神奈川の祭り ~昭和の記録写真から~]

≪毘沙門(びしゃもん)・大乗(おおのり)の獅子舞≫…三浦市(八雲神社(※))
  ※現在は合祀して神明神社

 ◆写真撮影日:昭和36年7月12日 [請求記号:K9,K31]

【解説】
  獅子舞といえば正月に行われる姿が代表的ですが、始まりは除魔などを目的とした呪術的な伎楽(仮面劇)でした。中世になると修験者などが獅子舞で神楽を演じ始め、特に伊勢神宮の巫女神楽を獅子に代行 させた代神楽(大神楽)が庶民に広まります。代神楽は軽業や曲芸を含み、通常は胴幕に2人入りますが、芸を行う際は1人になります。正月に見られる獅子舞は、この代神楽の1人になる部分が独立したもので、鳶(とび)職や農民が門付けによる小遣い稼ぎで行いました。しかし三浦地方には、代神楽の原形が残されました。
  三浦獅子舞は丸一という江戸の代表的な代神楽の神楽師が村の青年たちに教え、成年戒行として普及しました。三浦七福神の毘沙門天を祀る慈雲寺のある毘沙門地区と、隣の大乗地区には明治26(1893)年頃 に伝わります。神社の祭礼で奉納され、以前は7月11日の晩に各々の獅子が相手方の頭屋(区長)の庭で舞い、12日は神社で一緒に舞い、13日はコマイと称して氏子宅を廻りました。舞手は女装(長襦袢)の青年で、毘沙門の獅子は牝シシといいます。これは巫女舞に通じるためともいわれます。囃子方は下方(シタカタ)とい い、中老の役でした。楽器は締太鼓・笛・スリ鉦・三味線が使われます。曲はサンバ・サガリハン(下り端)・神歌・スズメ(鈴の舞)・四つの舞・地ヅカイ・中伝・鹿の遠見・クモと呼び、所要時間は45分です。
  現在は舞手不足で行われなくなり、子供達による練習のみが農協出荷所などで続けられています。

二人立ちの写真
写真1
歌は下田節、またはカノガ
節と称し、「金玉七つだよ」
「三寸下れば生まれた在所
だよ」などの合の手が入る。
胴幕の写真
写真2
基本は二人立ちで、神歌・鈴
の舞・中伝では一人立ちにな
る。獅子頭は高さ・横が一尺
一寸、縦が一尺ある。
神歌の写真
写真3
神歌:神楽歌を伴う。後立
ちは胴幕を巻き、前立ちの
首と背中に括り付ける。前
立ちは装束を持つ。
地ツカイの写真
写真4
地ヅカイ:前立ちは座って足
を胴幕でくるみ、獅子頭を持
って様々な芸をする。後立ち
は立って胴幕を高く上げる。

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【参考文献】
『神奈川県史 各論編5 民俗』 神奈川県企画調査部県史編集室編 神奈川県弘済会 1977年 [請求記号:K21/16-2/5a]
『神奈川県民俗芸能誌 増補改訂版』 永田衡吉著 錦正社 1987年 [請求記号:K38/15A]
『神奈川県の民俗芸能 神奈川県民俗芸能緊急調査報告書』 神奈川県教育委員会編・発行 2006年 [請求記号:K38/220]
『三浦市民 622号』 三浦市総務部編・発行 2007年 [請求記号:ZC]より「三浦市のまつり 市民特派員リポート」 高梨信一著  

(兼松 記)

コラム・かながわ あの人・この人

下岡 蓮杖【しもおか れんじょう】 文政6(1823)年 ― 大正3(1914)年 没

  日本の職業写真家の祖。2014年は没後100周年に当たります。
  伊豆国下田にて浦賀船改御番所判問屋の桜田与惣右衛門の三男として生まれ、 久之助と名付けられます。後に蓮の根に似た杖を造り愛用したことから名を蓮杖、 下田の〝下〟と幼い頃育った岡方村の〝岡〟を取って姓を下岡と名乗りました。13 歳で江戸に出て、まず日本橋の足袋問屋に奉公します。弘化元(1844)年に狩野 董川の門に入り董円・董古と号して絵を学んでいましたが、江戸の島津邸にて銀板 写真に魅了され写真師を志します。安政3(1856)年、駐日総領事ハリスが下田玉 泉寺に滞在した際、下田奉行の足軽を3年ほど務め、この間にハリスの副官兼通訳 であるヒュースケンから写真の大略を教わったとされます。安政7(1860)年に横 浜で米人写真家ウンシン(一説には弟子のラウダ)から湿版写真術を学び、写真機 や薬品を譲り受けました。化学の知識に乏しく、貧しくて便所を暗室にするなど苦 労を重ねた末、文久2(1862)年に横浜野毛に写真館( 一説には野外の写場)を開業、初めて写真師という新職 業を創業します。後に店を弁天通り5丁目に移し、大い に繁昌したようです。慶応3(1867)年に馬車道太田町 に「不二家全楽堂」を新設して、横山松三郎ら多くの門 下を育成しました。さらに弁天通り二丁目にも出店して います。風景・社寺・風俗などの着色写真の写真帖が外 国人土産として有名になり、欧米にも知られました。
  また、蓮杖は石版印刷を創始したり、明治2(1869)年に東京-横浜間の乗 合馬車、明治5(1872)年に牛乳販売を始めますが、全て失敗に終わりました。 明治6(1873)年には洗礼を受けます。明治8(1875)年には浅草に移って写真 背景画などを描き、92歳で亡くなりました。墓は巣鴨染井霊園にあります。
  蓮杖は浄瑠璃も4篇創作しており、その一つが左図の『横濱開港奇談浄瑠理 七福神宝入船』で、横浜に纏わる著名人が七福神を演じるものです。ペリーが 毘沙門天、江戸最大の商人で幕府に横浜の商業・金融の管理を命じられた三井 が大黒天、太田屋新田の差配に当り太田町の名主となった太田源左衛門が布袋、 横浜村の名主でペリー来航時に横浜応接所建設に務めた石川徳右衛門が恵比寿、 吉田新田の開発者である吉田勘兵衛が福禄寿などとなっています。

下岡蓮杖人物画
『寫眞師始祖
 下岡蓮杖人物画』
「行年七十九翁 蓮杖董古
今信筆」「全樂堂」の落款
あり[請求記号:K74/2]
七福神宝入船
『横濱開港奇談浄瑠理
 七福神宝入船』
『横濱開港奇談お楠子別れの段』
下岡蓮杖著・発行 1893年
[請求記号:K96.1/2]に合綴

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【参考文献】
『神奈川県史 別編1 人物』 神奈川県県民部県史編集室編 神奈川県 1983年 [請求記号:K21/16-4/1a]
『横浜もののはじめ』 横浜市図書館編・発行 1961年 [請求記号:K26.1/17]
『下岡蓮杖 日本写真師始祖』 前田福太郎著 新伊豆社 1966年 [請求記号:K28.1/69]
『日本近世人名辞典』 竹内誠・深井雅海編 吉川弘文館 2005年 [請求記号:281.03/303] 

 (兼松 記)