かながわ資料室ニュースレター第38号(2013年10月発行)

新着資料から

◆『J.C.ヘボン和英語林集成手稿』 
J.C.ヘボン著・木村一編・鈴木進編 三省堂 2013年 [K83.1/46]

  J.C.ヘボンは文化12(1815)年にアメリカに生まれ、安政6年(1859)に宣教医として来日します。横浜に住み、医療奉仕、聖書の翻訳、明治学院の元となるヘボン塾の創設などを行いました。『和英語林集成』はヘボンが編纂し、慶応3(1867)年に初版が発行された、日本初の本格的な和英辞典です。第3版に用いられたヘボン式ローマ字は、パスポートの氏名など日本語の正式な表記に採用されています。なお、当館にも初版[請求記号:K83.1/6b]と、明治5(1872)年に出版された第2版[請求記号:K83.1/6A]が所蔵されています。
 本書は、明治学院大学図書館に残る「ヘボン自筆ノート」に記された『和英語林集成』「手稿」を翻字したものです。AaからKane,ru,taまで見出し語6,736語を収録し、ローマ字と漢字、語義などが表記されています。推敲を経て初版が刊行される過程が確認できる、学術的に大変貴重な資料となっています。

◆『つなぐ 外国人支援草の根ボランティア』
小野里純子著 文芸社 2013年 [K36/12]

  著者は横浜市港南台に在住し、同じ町に住んでいた体調不良の外国人の受診を助けるという出来事から、国際交流と外国人支援を目的としたボランティア団体「ハーティ(hearty)港南台」を創設します。まず多言語問診票を作成し、普及を目指しました。初めは医師側の反応は冷ややかでしたが、新聞で紹介され、全国の病院から依頼が来るようになります。またイベントを数多く開催して、外国人との交流を深めました。さらに日本語会話教室も活発に行います。そんな日本語学習者の一人だったフィリピン人の故郷ジョーンズ村が極貧のために苦しむのを目の当たりにし、海外支援に乗り出します。 バザーで資金を募り、企業や県立高校、JICAなどの援助を受けて遂に図書館とDVシェルターを完成させます。
 本書は、熱意のみで地域から世界へと支援と交流の輪を広げた著者の、関わった人々すべてに対する感謝の念で満ちています。  

かながわ資料室の新着資料

かながわ資料室の新着資料の一部をご紹介します。

タイトル 著 者 出版者 出版年 請求記号
平塚の石仏 3石仏を調べる会平塚市博物館2000K38.62/15A/3
湯山学中世史論集 6湯山学岩田書院2013K24/447/6
持続可能な社会に向けた環境人材育成太田志津子化学工業日報社2013K51.52/19
鎌倉の古道と仏像原田寛JTBパブリッシング2013K18.4/342
野澤節子松村多美北溟社2013K93.1/381
ル・マン24時間林義正三栄書房2013K78.62/22
ゼロからわかる鎌倉学研パブリッシング2013K291.4/425
鎌倉長谷寺原田寛かまくら春秋社2013K74.4/34
京急線さんぽ交通新聞社2013K291/786
鳩のうったえ八鍬志郎Tuulee2013K48/101
鉄道車輌ガイド vol.15ネコ・パブリッシング2013K68.85/155/15
バスグラフィック vol.18ネコ・パブリッシング2013K68.1/311/18
房総の頼朝伝説笹生浩樹冬花社2013K28.39/38
北条時頼高橋慎一朗吉川弘文館2013K28.4/129
映画で知る美空ひばりとその時代斎藤完スタイルノート2013K77.1/116
街並みの形成上川勇治住宅新報社2013K51/498
小田急電鉄半世紀の軌跡荻原二郎彩流社2013K68/512
あゝ我が人生七十年余の修羅よそして今蛍鶴田理一郎日本図書刊行会2013K28.13/26

コラム・かながわ・フォーカス

[神奈川の祭り ~昭和の記録写真から~]

≪筒粥神事(つつがゆしんじ)≫…横浜市港北区(熊野神社)
  横浜市指定無形民俗文化財

 ◆写真撮影日:昭和36年1月14日 [請求記号:K8,K30]

【解説】
  筒粥とは粥をもってする年占で、東洋の稲米民族の間に普遍していました。全国各地で行われ、管粥(クダカユ)・粥 占(カユウラ)・粥試(カユタメ)し・御粥(オンカユ)などと呼ぶ地方もあります。また年占とは、一年の豊凶・気象を予知して豊産を得よう とするものです。熊野神社の筒粥神事は社伝によると、村上天皇の天暦3(949)年より続くと云われます。
 まず大釜に神池の一つ「のの字池」から汲んだ水を3斗(約54L)入れ、玄米1升(約1.8L)と神木の梛(ナギ) の葉を混ぜます。筒に使う芦は、昔は近くの小川の傍の聖地から採取しましたが、今は鶴見川の岸辺から 採って来ます。芦は長さ18cm、直径1cmほどで、節を抜いて2ヵ所で縛り釜の中に入れて、早朝から10 余時間浄火にかけます。夕刻に取り出し、筒の中に入った粥の分量によって三分・五分・七分・八分・十 分に占別します。占う項目は「大麦・小麦・早稲・中稲・晩稲・ひえ・あわ・大豆・小豆・ささげ・ぶん どう・麻・菜・大根・荏・ごま・きび・芋・そば・芥子・夕顔・あいこ・茶・日・雨・風・世の中」で、 天候・景気も占います。これを木版刷りの神札に記入し、附近の農家に配りました。農家はこの占表を見 て作付けを考えましたが、現在は、昔の農作物の種類を知る手掛かりとなっています。

忌竹の写真
写真1
本殿左側の境内に4本の
忌竹をめぐらし、三叉の木
を支えにして、大釜がかけ
られる。
大釜の写真
写真2
午前4時から午後4時頃ま
で煮沸される。玄米と、熊
野新宮権現の神木である梛
の葉を入れる。
芦筒の写真
写真3
筒には芦の茎を用い、その
数は27本ある。2ヵ所を
縛り、葭簀(よしず)のよ
うに編んで釜に入れる。
占いを書く写真
写真4
芦筒の中に入った粥の分量
で5種に占別し、五穀・野
菜・天候などの豊凶を占い、
神札に記入する。

※画像をクリックすると拡大します(写真1~3)

【参考文献】
『神奈川県文化財図鑑 無形文化財・民俗資料篇』 神奈川県教育庁社会教育部文化財保護課編 神奈川県教育委員会 1973年 [請求記号:K06/29/3]
『神奈川県史 各論編5 民俗』 神奈川県企画調査部県史編集室編 神奈川県弘済会 1977年 [請求記号:K21/16-2/5a]
『神奈川県民俗芸能誌 増補改訂版』 永田衡吉著 錦正社 1987年 [請求記号:K38/15A]
『かながわの民俗芸能案内』 神奈川県教育庁文化財保護課編 神奈川県教育委員会 1971年 [請求記号:K38/24]

(兼松 記)

コラム・かながわ あの人・この人

三浦 義同【みうら よしあつ】 生年不詳(※一説には寛正5(1464)年) ― 永正13(1516)年 没

   室町・戦国時代の武将。従四位下陸奥守。
 扇谷上杉高救(たかひら)の子で高行と名乗っていましたが、三浦 時高に男子がいなかったので、高行はその養子となり、 義同と改名します。ところが時高に晩年、実子高教ができ たため、義同を殺して高教に家督を継がせようとします。
 義同は一旦、小田原の総世寺に逃れ、出家して道寸と号 しました。しかし明応3(1494)年に挙兵し、時高・高教 を新井城(三浦市)に攻め滅ぼします。のち家督を実子の 義意(よしもと)に譲って新井城におき、自分は岡崎城(平塚市)に移 って勢威を振いましたが永正9(1512)年、北条早雲に攻 められ城を落とされます。義同は住吉城(逗子市)に移り ますがここも破られ、新井城まで退いて防戦します。3年 間の籠城の末、遂に食糧尽き、永正13(1516)年に落城、義同は家臣百余名と 共に討死して三浦一族は滅びました。
   義同は和歌を嗜み、『古今和歌集』を自筆書写したこと でも知られ、辞世の一首を「打つ者も打たるるものも土器(かわらけ) よ、砕けて後は元の土塊(つちくれ)」と詠んでいます。墓所は、義同 が再興した鎌倉の円覚寺寿徳庵にあります。
 三浦七福神の鶴園(かくおん)福禄寿を祀る真言宗飯盛山明王院妙音 寺(三浦市初声町)には、三浦義同の手刻と伝えられる末 那板(まないた)不動明王があります。高さは63cmで、俎板に半肉彫 りし彩色を施した風変な像です。台座も使い古した俎板で、 中央に凹部の個所が残っています。酉年の4月のみ開扉さ れる秘仏です。また同寺には、義同の鐙(あぶみ)もあったとされま すが現在は失われています。

鎌倉管領九代記
「三浦道寸対死付新井城没落并怨靈」
『鎌倉管領九代記 巻第6』 田中庄兵衞
 1672年 [請求記号:K24/21/6]より。
(右頁の絵は、三浦道寸と息子・義意が北条早雲
に新井城を攻められ籠城し討死する際、義意が
己の首を掻き切り自害する場面を描いている。)
新編相模国風土記
『新編相模国風土記 第5集』 間宮士信ほか編
谷野遠 1888年 [請求記号:K291/1/5]
(右頁に妙音寺の記述がある。本尊は現在の
不空羂索(ふくうけんじゃく)観世音菩薩ではなく、
海中より出現した未那板不動、となっており、
三浦道寸の鐙を所持、とあり鐙の絵が載っている。)

※画像をクリックすると拡大します

【参考文献】
『開運 三浦七福神 歩いて巡る 公認ガイドブック』 宇佐恵介著 妙音寺 2009年 [請求記号:K18.3/21]
『神奈川県史 別編1 人物』 神奈川県県民部県史編集室編 神奈川県 1983年 [請求記号:K21/16-4/1a]
『横須賀市史 上巻』 横須賀市編 横須賀市 1988年 [請求記号:K21.31/15/1]
『日本古代中世人名辞典』 平野邦雄・瀬野精一郎編 吉川弘文館 2006年 [請求記号:281.03/309]
『三浦半島の史跡と伝説』 松浦豊著 暁印書館 1985年 [請求記号:K291.3/38]

 (兼松 記)