平成28年度「社会・人文系再発見シリーズ」連続講演会 ◆ 講演録

女性活躍からその先へ -男女ともに生きやすい社会をめざして 第2回


「男女共同参画社会実現に向けた神奈川県の挑戦~『女性活躍先進県』を目指して~」

  丸山 尚子氏 (かながわ男女共同参画センター所長)
  平成29年2月12日(日) / 神奈川県立図書館 本館1階会議室

【講演概要】

かなテラスイメージ画像 神奈川県は、「かながわ男女共同参画プラン」に基づき、県全体で男女共同参画の実現を目指して取り組んでいます。かながわ男女共同参画センター(かなテラス)はその推進拠点です。

かながわ男女共同参画センターは、1982年「県立婦人総合センター」としてスタートしました。神奈川県はこの年を「かながわ女性元年」と位置づけています。その後、1991年「かながわ女性センター」に改称、2002年の県男女共同参画推進条例施行、2006年のかながわDV被害者支援プラン策定等を経て、2015年に「かながわ男女共同参画センター」(愛称「かなテラス」)に名称変更し、藤沢合同庁舎へ移転しました。その際、女性関連資料は県立図書館へほぼ一括して移管し、「女性関連資料室」として、より利用しやすい形で公開しています。今年かなテラスは2年目を迎えました。県では、現在「かながわ男女共同参画プラン」改定作業を行っており、今秋パブリックコメント(県民意見聴取)を予定していますので、ぜひ意見を寄せてください。

そもそも、男女共同参画社会とは何でしょうか。男女共同参画社会基本法第2条で「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意志によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」とされています。性別に関係なく、誰もが個性と能力を発揮できる社会を実現するためにはどうすればよいのか。神奈川県は、そういう意識を持たない人に働きかけ、繰り返し発信していくことが必要だと考えています。

1982年、女性のための総合センターとして、全国に先駆けて開設したかながわ女性センターには、当時全国各地から女性が集い、先駆的モデルとなりましたが、移転前に行った有識者の座談会では、「周回遅れ」と言われてしまいました。そうした中、かなテラスは、男女共同参画社会の実現に向けた第二ステージとして、男性と若者、企業の意識改革に重点をおいて事業を展開することとしました。男性対象の事業では、市町村と連携した男性セミナー、若者対象の事業では、かなテラスが大学や高校への出前講座を行うほか、本庁の所管課である人権男女共同参画課が、男女共同参画の視点をもって自らの人生を選択する力を養うライフキャリア教育の推進に取り組んでおり、高等学校では、すべての生徒に、1年生にはリーフレット、2年生には副教材を配布しているほか、大学生向けのパンフレットやロールモデル集を作成して配布し、大学への出前授業も行っています。

さらに、男性と企業を対象とした目玉事業として、2015年11月、「かながわ女性の活躍応援団」を結成しました。応援団の構成員は、神奈川県知事を団長に、企業のトップ11名。男性ばかりの写真と「woman act.女性がどんどん主役になる」というキャッチフレーズのミスマッチが大きな話題となりました。woman act.とは、女性が社会の主役となって活躍する姿をイメージした合言葉です。にもかかわらず、なぜ、団員は男性のみなのか。女性が活躍するためには、トップの意識改革が重要です。県内企業のトップは9割が男性。男性トップへの働きかけは女性からするよりも男性から働きかけていただく方が効果的と考え、あえて男性のみで構成しました。

講演中の写真 女性の活躍は国の成長戦略の柱の一つです。2016年4月「女性活躍推進法」が全面施行され、事業主は自社の女性の活躍状況の把握・課題分析や、行動計画の策定・届出、情報公表などを行うことになりました。応援団には、団としての行動宣言に加えて、団員一人ひとりがそれぞれ自社での女性活躍推進に関する取組みと、社会的ムーブメントを広げるための取組みを宣言して頂きました。

この1年間の取組みもそれぞれが発表しており、団長である黒岩知事は、女性が開発に貢献した商品から優れたものを認定する神奈川なでしこブランドや、特区を活用した家事支援外国人受入事業、地域限定保育士試験の年2回実施に取組みました。保育士の全国共通試験は神奈川の取組みを契機に年2回となりました。さらに、知事、副知事等幹部全員が「かながわイクボス宣言」を行い、知事が全国知事会に提案したことで、知事全員が宣言することになりました。

今年度、団員がさらに10名加わったほか、自ら参加していただく「かながわ女性の活躍応援サポーター」という仕組みを作り募集したところ、第1号は従業員5名の小さな企業のトップでした。大企業だけでなく中小企業にも、業種や分野に関わりなく広がっていき、県がそれをさらに発信していく。こうした取組みにより、今より一歩でも先に進むよう働きかけて、早く「女性の活躍」という言葉が必要ない社会、女性の活躍応援団が必要のない社会になること、そして神奈川が全国一の「女性活躍先進県」となることを目指しています。

女性の活躍応援団のアドバイザーである、神奈川県男女共同参画審議会会長、21世紀職業財団会長の岩田喜美枝さんの発言で特に心に残っているのは、採用時に優秀だった女性の能力が、5年後には男性と逆転している。それは女性を育てないからだと。子育てなど時間制約があっても、仕事の量は減らしても質を落とさず、責任を持たせて、実力を付けさせることが必要だということです。

国の男女共同参画推進本部は平成15年に、「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が30%になるよう期待する」としています。
そのためには、国、都道府県、市町村、企業等それぞれの役割を果たし、協力して取り組んでいくことが不可欠です。神奈川県は「女性活躍推進県」を目指してアピールを続けていきます。「かながわ男女共同参画プラン」改定に向けたパブリックコメントに、ぜひ意見を寄せてください。

【質疑応答】
◆高等学校・大学にはライフキャリア教育のリーフレットを配布しているとのことだが、義務教育の小中学校へはどうしているのか。
→ライフキャリア教育は、かなテラスではなく、本庁の人権男女共同参画課が担当しており、現在小中学校には行っていない。対象を広げられないかという発言が審議会等でもある。それとは別に、小学校にも男女共同参画の冊子は配布している。

◆男性グループはどのような団体が関わっているのか。
→団体を集める事業はしていない。NPO等の事業を募集し、負担金を出す事業があるが、昨年度は3つとも男性の団体だった。ファザリングジャパンなど。

◆女性の仕事における責任を軽減しているのは、女性への優しさ、労りでしているのでないか。
→女性への優しさでしているとしても、そのために、結果的に女性が育たないということ。

※ 講演後、女性関連資料室及び女性関連資料書庫の見学会を行いました。
見学会の写真1 見学会の写真2