速報! 第1回図書館ビブリオバトル

新春拡大スペシャル3

 ビブリオバトルをご存じでしょうか。「知的書評合戦」ともいわれ、読書をスポーツ感覚でたのしむイベントです。数人の発表者(プレゼンター)が各自オススメの本を5分間で紹介した後、参加者が最も読みたい本に1票を投じ、最多得票の本を「チャンプ本」とする一種のゲームです。2007年に京都大学のある研究室で開始された試みで、近年かなりの広がりがみられ、去年11月には東京国際フォーラムで「ビブリオバトル首都決戦」(紀伊國屋書店・読売新聞社共催)も開催されました。県立図書館では職員が新たな視点で本と読書を意識し、併せてプレゼンテーション能力を高めるために、1月13日横浜・川崎の両館で職場研修としてビブリオバトルを挙行しました。その模様を実況放送風に再現してみましょう。

プレゼン風景(横浜)

プレゼン風景(横浜)

(横浜会場)
 コミッショナー(館長)の開会宣言に続き、いよいよ男女5人の戦士(プレゼンター)が武器ならぬ本を手に入場してまいりました。歴戦の古豪ともいうべきベテラン職員がいかなるバトルを繰り広げるか、会場の期待が高まっています。本と戦士の関係を何に例えたらよいでしょう。マシンと操縦者か、はたまた馬とジョッキーか、いずれにせよ本の魅力と戦士のプレゼン能力の双方が勝敗の鍵を握ると思われます。
 

表彰式(横浜)

表彰式(横浜)

 さあ、最初はキャサリン・サンソム『東京に暮す』(岩波文庫)であります。カウントダウン・タイマーのスイッチが入る。男性戦士やや緊張気味ながら、英国女性の戦前日本滞在記を実直に紹介。じわじわと聴衆の心を打つ有効打となるか。次も男性戦士、隆慶一郎『影武者徳川家康』(新潮文庫ほか)の登場。小説の歴史観をアカデミックに語っているぞ。しかし攻撃のポイントはそこなのかー。3番手も男性、『メディチ家のイソップ物語』(安田火災海上保険)で勝負に来た。複製とはいえお宝本だ。小口がすべて金ピカ。闘争心は薄いが本は強力か。続いては女性戦士、いとうせいこう、みうらじゅん『見仏記』(中央公論社ほか)の面白さを明るくパワフルに語っている。おーっと勢いが止まらないぞ。終了のゴングが聞こえていない。こ、これは暴走王小川直也の再来かー。最後も女性、ジュンパ・ラヒリ『見知らぬ場所』(新潮社)の小説としての味わいを、正統派ストロング・スタイルで堂々と伝えました。
 熱い戦いが終わりました。冷めやらぬ熱気と興奮のうちに投票が進んでいます。さて早くも開票、首位争いは2強の激戦です。そして注目の初代チャンプ本は、『メディチ家のイソップ物語』を5票差で振り切った『見仏記』に決定しました。いまコミッショナーから表彰状が授与されました。優勝戦士の談話。「えー、うれしいです。県立らしくない本なので、優勝はまさか、まさかの思いです。カウントダウンの合図は2つ鳴ったところ(30秒前)まではわかっていたんですが、そんなにオーバーして話した自覚はありませんでした」 以上、午前の横浜会場でした。

プレゼン風景(川崎)

プレゼン風景(川崎)

(川崎会場)
 こちら川崎図書館です。午後3時半を回りました。同じくコミッショナー臨席のもと、4人の戦士がスタンバイしています。こちらもパソコン画面に大きく「05:00」のカウントダウン・タイマーが表示され、緊張が高まってきました。
 まず登場したのはレフェリーを兼務する男性戦士、岡田暁生『音楽の聴き方』を穏やかに語っています。少し引き気味なのはカウンター狙いでしょうか。マッチメイクとプレゼン、お疲れ様でした。次からはすべて女性戦士、横浜もそうでしたが総じて女性の元気さが印象的であります。2番手は前田裕子『水洗トイレの産業史』(名古屋大学出版会)、これはいかにも川崎図書館らしい選書だ。学術書ながら興味深いウンチクが詰まっていることを伝え、話題の「トイレの神様」で締めたのはベテランの味でしょう。3人目からはやや若手の登場だ。まずシーナ・アイエンガー『選択の科学』(文藝春秋)です。この新刊書の魅力を3点に整理して紹介したのは、切れ味鋭い3連続技というべきか。かなり効いているようです。そして最後はケン・フォレット『大聖堂』(ソフトバンク文庫ほか)が来たぞ。波乱万丈の大長編小説を、滑舌よく大変なスピードで語る、語る。語り終えたところでバトル終了。
 さて、こちらも投票がいま回収されました。決定しました! チャンプ本は『選択の科学』です。全体の半数近い票を獲得しての圧勝となりました。表彰状を受け取ったばかりの優勝戦士の談話。「終わりました。精神的にプシューです。副賞があるかと期待したんですが、ないんですね。5分は長いかと思いましたが、やってみると短かった。とにかく疲れました」 以上、夕闇迫る川崎会場でした。

 こうして第1回図書館ビブリオバトルは終わりました。コミッショナーは、職員のプレゼン能力の向上と図書館蔵書の魅力を積極的・能動的にアピールすることを目指して、次回以降の開催にさらなる意欲を燃やしています。

(実況 古館伊知翁 ふるやかた・いちおう)

参考  「知的書評合戦ビブリオバトル」サイト