映画『ノルウェイの森』にエキストラで参加しました!

新春拡大スペシャル1
 一昨年(2009年)の6月頃でしょうか、村上春樹の『ノルウェイの森』が映画化されるに当たり、当館(横浜の県立図書館)がロケ地の候補に挙がっているという話を聞きました。映画の関係者の話では、昔、村上春樹が当館をよく利用していたので撮影に使いたいということだったそうです。結局、時が経ち、図書館から見た周りの風景も変わってしまったのでロケには使われませんでした。監督はベトナムを舞台にした映画『青いパパイアの香り』や『夏至』で有名なトラン・アン・ユン。ベトナム出身の世界的に有名な監督です。カンヌやヴェネチアの映画祭でスタンディングオベーションのなか、撮影協力のところに神奈川県立図書館、というクレジットが流れるところだったかも、と思うと残念でしかたありません。

 当館が撮影に使われないのならどこの図書館がロケ地に決まったのだろうか。素朴な疑問を持ち、ロケ地について何か情報はないかなと、映画『ノルウェイの森』のホームページを見てみたら、ロケ地についての情報はありませんでしたが、エキストラを募集していました。撮影隊が来ないならこちらから行ってみようか、映画がどんなふうに作られていくのか実際に行って見てみようか、そんな軽い気持ちで応募しました。しばらくして参加してもよいという返事をもらったので、指定の日時に群馬県高崎市の指定された場所に行きました。真夏の太陽がぎらぎらした暑い日の午後でした。
 受け付けを済ませて待っていると、まず衣装さんのところに連れて行かれました。何百着という衣装が用意され、時代に合わない服装の人はそこで着替えることになっています。映画の舞台になったのは1960年代後半の夏。ズボンのタックや靴などにも念入りにチェックが入っていました。
私はスーツで行ったのですが、それでよいとOKが出ました。次にメイクさんのところに行くように言われ髪型のチェックがありました。短い髪の人はそのままでいいのですが、長い髪の人は盛り髪に! あの時代にはこんな髪型が流行っていたのですね。私も髪を作ってもらいました。トイレに行くと、参加者の人が写真を撮り合っていました。知らない人同士なのに何となくみんなうれしそうでニコニコしていました。
 撮影現場のコンサートホールに入ると500人ぐらいでしょうか、エキストラの皆さんが集まっていました。私たちはクラシックコンサートの観客の役です。助監督から撮影にあたっての注意事項があり、そのあと、舞台で監督と出演者3人の挨拶がありました。撮影は、コンサートが始まっているのにワタナベ君(松山ケンイチ)と永沢さん(玉山鉄二)とハツミさん(初音映莉子)の3人が遅れて入ってくるというシーン。同じシーンを何度も何度も繰り返し撮影し、終わったのは夜の9時頃でした。最後の撮影が終わるとみんなホッとしたのか、拍手が起こりました。最後に助監督から、「撮影が終わると今度は編集の作業に入り、公開は来年(2010年)の冬頃になります」ということを伺いました。映画を作るというのは本当に大変なことなのですね。
 帰りに参加賞としてオリジナルグッズをいただきました。本の装丁に合わせた赤いボトルと緑のボトルのどちらかを選ぶようになっており、赤いボトルには「ノルウェイの森 上」と書いてあって、その下に村上春樹とトラン・アン・ユンの名前が並んでいます。東京マラソンに参加したことのある人に見せたら、走るときこういうのを使いますよとのこと。そこでピンときました。村上春樹もランナーなんですよね。世界的な大会に参加して走っているのは有名な話です。お土産の記念品にここまでこだわって作っているとしたら、映画の製作ってすごいですね。
 2010年12月にいよいよ映画が公開され、さっそく観に行きましたが、あのシーンはあんなに時間をかけて撮影したのに、ほんの少ししか使われていなくて正直びっくりしました。でも撮影したものを全て使うわけにもいかないでしょうから、そういうこともあるんでしょう。原作が出版されたのが1987年。映画を観た後、23年ぶりに原作を読んでみました。2度読みましたが、3人でコンサートに行く場面を見つけることができませんでした。でもわざわざそういうシーンが入っているということは、この映画にとってこの場面はきっと必然だったのでしょう。
 またいつか、当館が映画の撮影に使われるという話が持ち上がるといいですね。その時は全館あげてエキストラとして参加しましょう。建ってから50年以上も経つ雰囲気のある建物ですが、できればあまり古くならないうちに声がかかることを願ってやみません。
 後日談。映画を観終わった後、クレジットタイトルの撮影協力のところに、神奈川県立近代美術館、という文字を発見しました。同館のホームページを見たところ、鎌倉館の蓮池をのぞむ1階のテラスで撮影されていたことがわかりました。ワタナベ君と直子が久しぶりに出会うシーン。何気ない風景なのにとても美しく撮影されていました。トラン・アン・ユン監督ってやっぱりすごいですね。

*この原稿は東宝の許可を得て書いています。
(ミッドナイトブルーのワンピース)

県立図書館がロケ地に使われた主な映画
『赤いハンカチ』(日活 1964)監督:舛田利雄 主演:石原裕次郎
『夢は夜ひらく』(日活 1967)監督:野口晴康 主演:園まり
『ゴジラ×メカゴジラ』(東宝 2002)監督:手塚昌明 主演:釈由美子