『岩佐美代子の眼 古典はこんなにおもしろい』 岩佐美代子述

『岩佐美代子の眼  古典はこんなにおもしろい』 岩佐美代子述 岩田ななつ聞き書き 笠間書院 2010年 資料番号:22396352  請求記号:289.1/5271 
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 2024年発行の新紙幣1万円札の肖像に渋沢栄一が選ばれました。この本は渋沢栄一のひ孫にあたる、岩佐美代子鶴見大学名誉教授・文学博士の生涯と文学の面白さを紹介したものです。
 後に東宮大夫も務められた民法学者の穂積重遠を父に持ち、幼少のころから古典作品を原文で読まれ、4歳より13年間昭和天皇第一皇女照宮成子内親王のお相手を務めました。(宮様のお相手任命の辞令が宮内省からでています。)空襲、戦争、戦後の時代に翻弄されながらも、岩佐氏の眼差しを通した世界は、優しさと愉快さに富んで語られています。

 岩佐美代子氏といえば京極派和歌・中世女流日記研究者です。しかしながら当時京極派といえば、正統とされていた後醍醐天皇の南朝方に反対していた天皇側として、その京極派の作品を研究することは一種のタブーでした。当時京極派は誰も研究しておらず、北側の人間が一生懸命生きていたことを無いようにすることに疑問を持たれていたのです。独学で和歌を勉強する素地と、宮様を通して天皇家を身近に実在の人として同じ時間を共有されていたことも理由にあったのかもしれません。

 妻として母として、介護も抱えながら独学で研究者となられた岩佐氏は、若い人達にこう伝えます。いろんな時代の作品をたくさん読み、経験をつむためにちゃんと生きなさい、生活の中で文学をわかりなさいと。また、周りの人の目からの良し悪しでなく、自分が満足できる「今までできなかったこと」をしようと考えた岩佐氏は、意欲的に活動していきます。寡婦となられてからは国立国会図書館で非常勤として「書名索引」作りなどを担当したり、仲間と非常勤待遇改善運動をおこなったりもしました。(賃上げ運動や有給休暇の獲得、交通費の支給など)。他にもセクハラ裁判の支援活動をしたり、鶴見大学で研究者として活躍しました。      
 一女性研究者の自伝としてだけでなく、幾重にも興味深く読めるこの本を読み終わったとき思いました。「自分は精一杯、いきているのかな?」

 最後になりましたが、原稿を書いている時に岩佐氏の訃報をニュースで知りました。謹んでご冥福をお祈りいたします。

関連書:『穂積重遠』 大村敦志著  ミネルヴァ書房刊 2013年
資料番号:22668305 請求記号:289.1/5832 OPAC(所蔵検索)

(県立図書館:伸びしろは無限大)