『水族館の文化史』 溝井裕一著

『水族館の文化史』 溝井裕一著 勉誠出版 2018年 資料番号:23010259 請求記号:480.76/133 OPAC(所蔵検索)

 あなたが水族館に魅力を感じるのは、どのような瞬間でしょうか。大きなサメと沢山の魚が大きな水槽の中で一緒に泳ぐ、圧倒的な迫力を目にした時ですか。あるいは、イルカやシャチ、アシカとトレーナーによる楽しいショーを見ているときでしょうか(私はお風呂に浸かるカピバラを見るとホッコリします)。

 水族館は、私たちが普段目にすることができない水中世界を体験させてくれます。宇宙旅行が現実味を帯びてきた現代にあっても、海には多くの神秘や謎が残されており、我々はその一端を水族館で感じることができます。それでは、この魅力的な施設はどのように発展して現在の形に至ったのでしょうか。
 本書は、水族館の歴史にまつわる多様なエピソードを紹介するだけでなく、現代の水族館が抱える課題や新たな試みを紹介してくれます。

 水族館のはじまりは、19世紀のヨーロッパでした。水生生物を鑑賞するため、魚を持続的に飼うシステムを「アクアリウム」と名付けて一般に開放すると、世界中の珍しい生物が見られるこの施設はあっという間に人気を博し、日本を含め世界中に広がっていきました。
しかし、近年は乱獲や環境汚染によって環境・動物保護活動が高まりをみせており、批判の声は動物を飼育しショーを実施する水族館に向けられています。そのため、これからの水族館には動物の飼育だけでなく、自然保護や動物福祉の推進という役割が求められています。
 また、最近ではロボットやVRといった新しい技術を水族館で活用した事例が現れています。本物のように精巧な機械が水槽を泳ぎ、自宅で海中世界を体験できる未来において、水族館はどのような役割を担うのでしょうか。

 古代には人々から神聖視されていた水中生物が、文明化によってその神秘性が失われ、水族館で管理される対象となりました。しかし、我々の水中世界への憧れや探求心が消え去ったわけではありません。水族館は技術の発展や役割を再定義しながら、今日も我々を魅了すべく進化を続けています。

(県立図書館職員:トドガスキー)