県立図書館で“知的刺激”に満ちた1年を

 新年あけましておめでとうございます。元号が令和となってから、最初に迎える新年をいかがお過ごしでしょうか。昨年は、相次ぐ台風により、東日本を中心に各地で甚大な被害が発生しましたが、今年は、明るく平穏な1年となることを願うばかりです。

 さて、1989年12月の東西冷戦終結宣言から、今年で30年余りが経過しました。しかし、この間も、アフガニスタンや中東などでは紛争等が絶えず、最近では、アメリカと中国やロシアといった大国同士の対立、緊張から、“新冷戦”の到来が叫ばれています。また、二酸化炭素等の温室効果ガスによる地球温暖化の影響は、地球規模で各地に様々な気象変動や異変を引き起こしています。
このような混沌とした現代社会にあって、これからの世界を紐解く一つのヒントとなるような本があります。それは、ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』(上) (下)です。この本は、フェイスブックの創始者であり、現CEOでもあるマーク・ザッカーバーグ氏によって紹介され、一躍世界的に有名になったことでも知られています。
 この本の中で、ホモ・サピエンスとはそもそもどのような生き物であるのかということについて、石器時代から現代までのホモ・サピエンスの進化全域にわたって解説しながら、“幸福”という視点から様々な分析がなされています。それでは、ホモ・サピエンスとは、どのような生物なのでしょうか。端的に言ってしまえば、“虚構”や“幻想”といったものを、実態のあるものと同じように信じることができる特殊な生物ということになりますが、著者の目は、その過去だけでなく、未来にも向けられます。AIの進展や生命科学の進歩などにより、神の領域にまで入りつつあるこの特殊な生物(ホモ・サピエンス)は、これからどこに向かおうとしているのか、また、どこに向かうべきなのか、そのようなことを我々一人ひとりに問いかける、鮮烈な“知的刺激”を受ける一冊です。

 ここで話題を変え、音楽に関するお話しをさせていただきたいと思います。
県立図書館(本館)は、県立音楽堂とともに、日本における近代モダニズム建築を代表する建築家である前川國男氏により設計され、昭和29(1954)年に完成しました。県立図書館(本館)と県立音楽堂とは、いわば姉妹館のような存在です。この県立音楽堂は、「木のホール」として、かねてよりその音響の良さに定評がありましたが、昨年リニューアル工事が完了し、前川建築の意匠とも相まって、一段とその魅力を増しましたので、是非足をお運びいただければと思います。私事で恐縮ですが、昨年の9月29日、この新装なった県立音楽堂で開催された「音楽堂ヴィルトゥオーゾ・シリーズ」のコンサートを聴く機会がありました。当日のプログラムは、佐藤俊介さんとオランダ・バッハ協会管弦楽団によるJ.S.バッハの管弦楽組曲やブランデンブルク協奏曲等を中心としたものでしたが、そのヴィルトゥオーゾ(達人)ぶりとともに、古楽器(バロック期の楽器)を生き生きと楽しげに、まるでジャズのようにスイングしながら演奏している姿に深い感銘を受けました。実は、若い頃の印象で、古楽器の音色はあまり好きではなかったのですが、このコンサートに知的刺激を受け、今ではすっかり古楽器ファンとなりました。
 そんな俄かな古楽器ファンですが、ここでお薦めのCDをご紹介したいと思います。古楽器演奏というと、昔からオランダやベルギーが盛んで、古楽器演奏の草分け的存在であるG・レオンハルトやクイケン兄弟などが有名ですが、今回ご紹介するのは、G・レオンハルトの弟子であるトン・コープマン指揮(チェンバロ演奏)、アムステルダム・バロック管弦楽団による「ブランデンブルク協奏曲(全集)」です。才人トン・コープマンの機知に富んだ解釈により、知的刺激とともに奏楽の喜びをも感じ取ることができるアルバムとなっていますので、古楽器嫌いの方も、是非一度手に取ってお聴きいただきたいと思います。

 今回ご紹介した図書やCDをはじめ、県立図書館では、「人生100歳時代」における様々な“知的刺激”に応えるため、社会・人文系の図書・資料、クラシック音楽やジャズなどの映像・音響資料等を取り揃え、皆様のご来館を心よりお待ちしております。

県立図書館長 松井 聡明