文字・活字文化の日記念講演「活字文化の今後~春風社を事例として~」

文字活字記念講演 2005年に制定された「文字・活字文化振興法」により、読書週間の初日にあたる10月27日が「文字・活字文化の日」と定められ、あちらこちらで関連イベントが執り行われています。神奈川県立図書館でも、2006年度から毎年、記念講演を開催してきました。
 今年は、「文字・活字文化の日」に先立つ10月22日、生涯学習情報センター(横浜駅西口)を会場に、春風社の代表取締役三浦衛氏による講演を行いました。春風社は、地元横浜で今年創業12年を迎える学術出版社です。これまでに、映画「南極料理人」の原作(『面白南極料理人』)や、写真家・小関与四郎氏による迫真のドキュメンタリー写真集『クジラ解体』など、学術書の枠を超えたユニークな企画で400冊近くの本を世に送り出してきました。三浦氏自身も、本作りと会社経営にまつわるエピソードを豊富に織り交ぜたエッセイ『出版は風まかせ~おとぼけ社長奮闘記』や、20年ほど前までは印刷の主流であった金属活字による活版印刷を用い、函にもこだわった第2エッセイ集『父のふるさと秋田往来』を出版されています。

 昨年、2010年は「電子書籍元年」と呼ばれ、多くの関連書籍が発行されました。講師も、電子書籍に関して様々な本を読み、話をきき、活字文化についてあらためて考える機会を得たとのお話を皮切りに、「直接手にすることが難しい貴重書こそ電子書籍にふさわしい」という講師の見解と、「安価な本をお手軽に電子データで」という電子書籍ブームとの違和感について指摘されました。また「情報」にすぎない電子書籍に対し、「紙」と「インク」と「印刷」によってつくりあげられた「作品」である「本」をつくる愉しさ、喜びについて、豊富な体験談や出版に関するイメージを挿み、熱く語っていただきました。
 途中、A3用紙を折りたたんで16pの本の面付けを体験する場面がありました。講師の手元を追って紙を折り、ページを振るのですが、参加者の皆さんも苦労されているようでした。16pは最少単位で、32pや64pの場合もあり、間違えると乱丁本になるというお話が印象に残りました。

 当日は生憎の雨模様でしたが、交通の便の良い会場であったためか、それとも春風社のブログを見た講師目当ての参加者が多かったためか、欠席者は少なく、担当者としてはほっと一安心いたしました。
 お話を通して、講師の本づくりに対する熱意が多くの方に伝わったようで、終了後も講師を取り囲み熱心に話しかける参加者の姿が目立ちました。会場に当館で所蔵している春風社の本の一部を展示しましたが、こちらも休憩時間や講演の前後に手に取って見る方が多くいらっしゃいました。

(県立図書館資料部図書課)