『一九八四年 新訳版』 ジョージ・オーウェル著

『一九八四年 新訳版』 ジョージ・オーウェル著 早川書房 2009年 資料番号:22352785 請求記号:933.7/444  OPAC(所蔵検索)

 2017年1月、ドナルド・トランプが大統領に就任した米国で、1949年に出版された英作家ジョージ・オーウェルの『1984年』がAmazonの書籍ベストセラーランキングで上位に浮上し話題になったことを記憶されている方も多いと思います。半世紀以上も昔に出版された本が、今ベストセラーとして読まれているならと、手に取ってみた方もいらっしゃるのではないでしょうか?かく言う私もその一人であります。
 『1984年』は一言で説明するなら、近未来の全体主義国家を描いた小説です。出版が1949年とあって、未来にあたる小説の中の1984年の時代背景は現実より古めかしい感じがしました。
 物語はビッグブラザーという指導者に率いられた一党独裁国家が舞台です。独裁者を思わせるビッグブラザーを心から崇拝するよう国民は強制され、国民の反逆行為を防ぐために“テレスクリーン”という監視カメラのような装置と“思考警察”によって徹底的に国民を監視するのです。思想はもとより、結婚の自由も許されず、言語を簡略化させられたことで人々の思考は乏しくなります。党による歴史の改ざんが日常的に行われることで、矛盾する二つの事柄を同時に信じるという“二重思考”という術を身につけることになるのです。思想や生活において徹底した統制を受け、人間の認識や精神までも“党”に管理されるのです。
 そんな中、主人公ウィンストンはこの体制に対して懐疑を抱くようになります。同じく体制に不満を持つ女性ジュリアとの出会いにより、いつしか二人は恋人同士となり、ともに自由のために戦う決意をするのですが…。党がそんな二人を見逃すわけもなく、人間としてのアイデンティティを追い求める主人公ウィンストンと、党の中枢で権力を担うオブライエンとの争いへと話は移っていきます。
 最後まで手に汗握る展開が続くわけですが、私が思い浮かべていた“全体主義国家”とはひと味違い、思想や生活についても徹底的に統制を行う『1984年』の舞台は恐ろしく感じました。また小説に登場する“テレスクリーン”については今の現代社会において違った形で存在するように思えてなりません。SNSの普及により、私たちは常にネットワークでつながっており、個人情報がいつでもどこでも収集されてしまう、現代の情報社会は便利になった反面いつの間にか何処かで監視されているように感じてしまいます。作者オーウェルさえも想像していなかった現代の情報社会は“テレスクリーン”を超越しているように感じてなりません。
 オーウェルの『1984年』の世界から、今に通じる何かを感じてみませんか?

(県立図書館職員:ガンコちゃん)