『「ジャックの塔」100年物語』 横浜市ふるさと歴史財団 監修

『「ジャックの塔」100年物語』 横浜市ふるさと歴史財団 監修・中区制90周年・開港記念会館100周年記念事業実行委員会 編著・横浜市中区役所地域振興課 編著 横浜 神奈川新聞社出版 2017年 資料番号:60712049 請求記号:K52.1 138  OPAC(所蔵検索)

 2017年7月、「ジャックの塔」という愛称で皆に親しまれてきた横浜三塔の一つ「横浜市開港記念会館」が100周年を迎えました。この本はその記念誌として刊行されたものです。

 表紙の雲一つなく澄み渡る青い空の中、赤煉瓦のジャックの塔が天を突いている姿が素晴らしいです。そして表紙を開いてすぐの扉ページには、同じアングルで撮られている1917(大正6)年のセピア色のジャックの塔が登場します。電柱や電線がまわりに張り巡らされていたり、民家らしき瓦屋根の一部も写りこんでいたりする昔の様子と今を見比べられる構成が面白いのと同時に、そこから100年もの時が感じられます。
 特に馬車道あたりから元町にかけて歴史情緒あふれる建物をみることができ、そこが横浜の魅力ナンバーワンといっても過言ではないと思います。歩いているだけで外国にきたような気分、素敵な街並みが気分を高揚させてくれます。中でもこのジャックの塔、クイーンの塔(横浜税関)、キングの塔(神奈川県庁)のエリアは三塔が固まっているだけあり壮観で、横浜三塔と呼ばれ市民に親しまれています。
 ジャックの塔100年…とはいいますが、ジャックの塔は完成後6年で関東大震災による火災で屋根、内部焼失という状況に陥りました。その後1927(昭和2)年に復旧、再開館します。1945(昭和20)年5月の横浜大空襲では破壊や焼失は免れるのですが、同年8月にアメリカに接収。1958(昭和33)年6月に返還…。波乱の時代を乗り越えながらもそこに在り続けて人々を見つめてきました。「保存か取り壊しか」という声があがる時もありましたが、保存して文化施設にという意見が多く、やはり市民に愛され横浜のシンボル的存在となっていることを感じます。
 象徴的で特徴のある時計台の他にも和田英作の壁画、「和」な雰囲気が面白い美しいステンドグラス、1989(平成元)年に復元したドーム屋根等も有しているこの建物は同年9月2日には国指定重要文化財となっています。
 そんなジャックの塔の歴史、建築、美術等が、図や写真を豊富に使用してぎっしり詰め込まれたこの本。横浜市民に親しまれているジャックの新たな魅力がきっと見つかるはずです。
 美しい写真が多いので読み物としてだけではなく、写真集としても見応えがあります。この本を見ると、きっとこの先も100年どころではなく、200年、300年と横浜を見つめ続けるジャックの塔の、在り続ける様子が心の中に見えてくるのではないでしょうか。

(県立図書館:ジョーカー)