『正しいパンツのたたみ方』南野忠晴著

『正しいパンツのたたみ方』 南野忠晴著 岩波ジュニア新書 2011年 資料番号:22508220 請求記号:375.5/111  OPAC(所蔵検索)

 タイトルにちょっとびっくりして手に取った本です。
 岩波ジュニア新書は主に中高生世代に向けて書かれていますが、親世代の私が読んでも読みごたえがあって好きなシリーズです。副題に「新しい家庭科勉強法」とあり、家庭科を通して生活力を身に付け、自立して毎日を気持ちよく暮らそう、という著者の思いが伝わってくる素敵な本でした。
 著者は、高校で13年間英語の教員を務めた後、家庭科の教員になった経歴をお持ちです。
 家庭科は調理実習や被服実習などから、考え方や個性の違い、育った環境や自立度まで、お互いの違いが見える教科だそうです。衣・食・住・家族・保育・消費経済・福祉の各分野でどれも生活に密着している身近なものを一つの教科の中で学ぶので、学習分野としては「ごった煮状態」ですが、生活をトータルに見て学ぶことを通じて、食事・洗濯・掃除・買い物といった生活力を身に付けたり、社会には多種多様な人がいて、その数だけ生き方や考え方があることを理解することができる教科だと著者は言います。
 妻のパンツがうまくたためずにいつもダメ出しをされて悩んでいる教員仲間の話を聞いた著者は、人間関係に課題があるのでは、と思います。一緒に暮らすようになるまでは他人同士で生きてきたので価値観や家事のやり方が異なるのは当たり前で、生活の様々な場面で衝突が起きるのは自然なことですが、衝突を避けて無理に相手に合わせようとするとストレスがたまります。率直に話し合って二人で妥協できる点を探すことがお互いにとってプラスになるのでは、と考えます。やり方も含めて押し付け合わないこと、どうやったら気持ちよく協力し合えるか考えることが一番大切だ、という意見を読むと、確かにそうだなぁ、と思います。
 「家族」とはなにかを考える授業では、「お母さんとお父さんと子どもたち」、「友だちどうし」、「おじいさんとおばあさんとねこ」など様々なイラストを見ながら、「家族と思うか、思わないか、なぜそう思うか」についてクラスで議論することで、生活に身近な「家族」のあり方も多様であれば、捉え方も人によって違う、ということを学びます。
 「結婚相手はどんな人?」というワークショップ形式の授業では、「性格がよい」、「収入がよい」、「趣味が一致する」など様々な条件から自分が大切だと思う条件を選び、選んだ条件に合計100ドルになるように金額を付けて入札、最高金額を賭けた人が競り落とすというサイレント・オークション形式のワークやその後の分析を通じて、一人ひとりが相手(他者)との関係で何を大事にしたいと考えているかが見え、同時に自分がどういう人間であるかが見えてきます。
 授業の描写では、生徒たちが議論や発表に意欲的に参加する様子や、いろいろなことに気付いて目を輝かせている様子が目に浮かび、こんな授業、受けてみたかったなぁ…、と思いました。
 この本には毎日を気持ちよく暮らすヒントがたくさん詰まっています。現役の中高生はもちろん、だいぶ前に中高生だった方にもおすすめです。

(県立川崎図書館職員 ワークの分析結果は「関係志向」でした)