「たてものツアー」を開催しました。

 秋晴れの10月11日(水)、「たてものツアー」を開催しました。
 日本近代建築の旗手と呼ばれている前川國男が設計した、県立図書館、音楽堂、青少年センターの3館を巡るツアーです。平日にもかかわらず、定員30名に対して倍以上のお申込みがあり、建築に対する熱い関心が伺えました。
 2016年にル・コルビュジエの建築作品が世界遺産に登録されたことを受け、彼の弟子である前川にも注目が集まっています。県立図書館では2016年11月に「図書館建築の歴史と未来を語り合う」と題し、講演会と図書館、音楽堂、青少年センターの建築ツアーを行いました。その日、音楽堂については公演があるため、外観を見学するに留まりました。参加者からは「音楽堂の中も見学したかった」という声が寄せられ、今年は音楽堂の設備点検日に日程を合わせて開催することとしました。

 今回のツアーは音楽堂からスタート。
 前川國男は、近代技術を積極的に活用した新しい建築をめざし、率先してその方法を開発しようとしました。このような彼の考え方は、テクニカル・アプローチと呼ばれ、音楽堂はそのテクニカル・アプローチが試みられた初期の作品です。
 骨組は鉄筋ですが、ホールの中は天井まで木で覆われていることから、「木のホール」とも呼ばれています。年月が経つほど木が乾燥し、美しい音響に変化していくそうです。
 戦後まもなく建てられたホールとは思えないほど、立派なオーケストラピットが備えられていたことに驚きました。戦後の混乱期、音楽関係者や県知事、建築家など、多くの人の情熱で作りあげられた音楽堂は、後世に文化を伝えていく大切さを体現しているようでした。現在では年間約17万人が来場し、音の響きを楽しんでいます。
 音楽堂は2018年4月から、電機設備や防水などの改修工事行うため1年間休館になります。前川建築の空間デザインや思想はそのまま残し、より快適な設備を整えていく予定です。

 1954年の図書館、音楽堂の開館から8年後の1962年に施行された青少年センターは、コンクリートの箱をくりぬいて作ったような大胆な建物と大きな庇が特徴的です。その後、1965年に婦人会館が、1966年に青少年会館(※2008年廃止)が施工され、前川による紅葉ケ丘一連の計画が完了します。
 現在の青少年センターは、神奈川県が2002年に策定した「神奈川県県有施設長寿命化指針」に基づき大改修が行われ、前川建築設計事務所の設計監理により2005年にリニューアルオープンしました。
 耐震性能を高めるため、神奈川県民には馴染み深いプラネタリウムや天文台、4階部分は撤去されています。その名残りスポットを屋上から順に見学しました。

 県立図書館は2グループに別れて見学を行いました。ゆったりとした閲覧室に比べ、みっちりと本が収納されている書庫は、1階と2階が通し柱になっていて、本が収まるほど重みで支柱が安定し、図書館全体を支えるよう設計されています。耐震力のある核があることで、閲覧室は柱だけの構造が可能となり、ガラスに囲まれた開放的で明るい空間になっています。図書館と音楽堂を覆っているホローブリックも、外観デザインだけでなく、プライバシーと明るさの確保に一役買っています。

 人の手でコンクリートを打った柱、滑らかな木製の手すり、図書館のために100回以上試作を重ねた椅子、食堂用にデザインされた「レヂスター台」(写真参照)など、当時の職人技も見ていただきました。
 個人の心に届くような、静かにひとりになれる空間作りを目指した県立図書館を、心地良く感じていただけたら何よりです。普段図書館で働く職員の「県立図書館のここが好き!」というスポットもご紹介しました。
 県立図書館の建築については、HPに写真と解説がありますのでご覧ください。
http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/yokohama/LibPhoto/LibPhoto.htm
 1人の建築家の設計による、年代の異なる建築群が長年に渡って保存、維持管理、運営されていることは珍しく貴重です。前川が47歳の時に音楽堂と図書館、57歳の時に青少年センターが設計されていることから、脂の乗りまくった前川建築を感じる事ができます。
 紅葉も美しい紅葉ヶ丘へ、是非一度足を運んでみてください。

(県立図書館 たてものツアー担当)