『Window Scape3 窓の仕事学』 東京工業大学塚本由晴研究室編

『Window Scape3 窓の仕事学』 東京工業大学塚本由晴研究室編 フィルムアート社 2017 資料番号:81679920 請求記号:524.89/24/3  OPAC(所蔵検索)

「窓のまわりには、光や風などの自然のふるまいと、そこに寄り添う人間のふるまいがある。」
 世界各地の窓を調査し、気候風土と文化慣習の調和した窓のあり方を明らかにした『Window Scape』シリーズ。その第三弾、『Window Scape3 窓の仕事学』を紹介します。
 私がこの本を見ていると、旅好きの同僚が覗き込んできて、「この建物に以前訪れたが、窓の仕組みや役割には気が付かなかった。」と話していました。私自身も窓について深く考える時間を持つことはなかったのですが、窓のふるまいや仕事学という言葉に惹かれ手にとった本書から、窓本来の意味を感じることとなったのです。
 本シリーズ第一弾『Window Scape 窓のふるまい学』は、編者らが世界各地に調査旅行へと出かけ、それぞれの窓に集められた自然の摂理に従ったふるまいとそれらの窓に寄り添う人間のふるまい、そして都市空間をつくりだす窓自体のふるまいを調査したものです。第二弾『Window Scape2 窓と街並の系譜学』では、集合的なふるまいとしてとらえた都市空間をつくりだす窓を、第一弾に続いて再調査し体系化しています。
 第三弾の本書は、日本の手仕事の現場における、もの、人、自然、街を相互に連関させる「働く窓」について調査しています。全てが整った現在とは少し違う、古き良き時代を感じさせる風景がそこに展開しています。
 紹介されているのは、全国各地の79の窓。編者らはそこでヒアリング、観察、実測及び写真撮影を行い、それらを元にアイソメ図を作成し、さらに人やものと、光、風、熱などの要素を線で結んだものを描き重ね、相互連関図に表しました。また、全ての窓それぞれに短歌や俳句が添えられていて、その一文により、窓が一層存在感を増すと同時に、自然や働く人と一体感を生み出している様子を感じとることができます。
 本書は四章からなり、第一章「ものづくりの窓」、第二章「食品加工の窓」、第三章「商いの窓」、そして第四章では祭りの窓や畜産施設の窓など、独特なしくみを持つ「越境の窓」を紹介しています。例えば、第三章、愛媛県内子町にある竹細工工房の窓は、雨戸を庇の下に収納できる蔀戸となっており、お客さんとの会話を楽しむため冬でも蔀戸を跳ね上げ、桟の入ったガラス戸も開け放っているそうです。このように、「働く窓」は、現代建築のように全てにおいて計算しつくされてはいないものの、潜在的かつ合理的に人間の生活リズムと呼応し、仕事仲間のようにすら思えるほどです。
 本書の「働く窓」からは、建築的な要素を知ることだけでなく、少し前の日本各地の風景や、現在に続く伝統産業の様子を知ることもできます。現代社会、特に大都市周辺で多く見られる高層オフィスビルの輝く大きなガラス窓は、私たちに多量の光や風を与えてくれます。けれども本書の「働く窓」は、光や風などの自然の要素以外の何かを、人や街に与えてくれているように感じました。

(県立川崎図書館:ペンネーム「風になりたい」)