『ユマニチュード』 望月健著

『ユマニチュード』 望月健著 KADOKAWA 2014 資料番号:22769723 請求記号:493.75/43  OPAC(所蔵検索)

 義理の祖母が認知症となり、現在は施設で暮らしています。私は彼女からすると孫の配偶者なので、すでに記憶にはなく、たまに帰省するたびに初対面の挨拶を交わしています。
 認知症というと、テレビなどでは、徘徊や妄想などの問題行動を起こし、家族がとても苦労するといった図式で取り上げられることが多いようです。義理の祖母は生来、穏やかな気質でしたので、家族に暴力を振るったり、暴言を吐いたりといったことはなかったのですが、徘徊だけは治まらず、義父や義母は大変苦労をしておりました。
 今回ご紹介する『ユマニチュード』という本は、フランス人のイヴ・ジネスト氏が考案した認知症のケア技法「ユマニチュード」について、著者が「クローズアップ現代」「NHKスペシャル」といった番組で取材して得た知見や体験をまとめたものです。
 認知症の症状には脳の細胞が壊れることによって直接起こる「中核症状」と中核症状の進行と本人の性格や環境などが要因となって起こる「行動・心理症状」の2種類があるそうです。記憶障害や理解・判断力の障害などは中核症状、暴力・暴言や抑うつ・妄想などは行動・心理症状となります。義理の祖母の問題行動とされていた徘徊も行動・心理症状の1種となるようです。ユマニチュードを用いたアプローチを行うことによって、認知症の人とのコミュニケーションを改善し、行動・心理症状を最小限に治めるというのがユマニチュードによる認知症ケアの効果であり、「認知症が治る」わけではありません。
 ユマニチュードとは「知覚・感情・言語による包括的コミュニケーションにもとづいたケアの技法」であり、「『人とは何か』『ケアする人とは何か』を問う哲学と、それにもとづく150を超える実践技術」と定義されていますが、この技法のうち、基本的な要素は「見つめる」「話しかける」「触れる」「寝たきりにしない」の4つであるとのことです。本書でもこの4つの技術について簡単に解説はされていますが、技術そのものを伝えることを目的とした本ではないため、そういうものを求められる方は巻末の参考文献などを元に、より専門的な本をお読みになった方が良いかもしれません。ですが、プロの介護者ではない、むしろ介護ケアに関する知識がほとんどない素人にとっては、気を付けるべきポイントがまとめられ、ケアの考え方とともに解説されているので大変参考になります。
 ユマニチュードによるケアで症状が改善された事例なども、本書ではいくつか取り上げております。けれども、テレビや図書でこういった新しい技法を紹介する際には、うまくいった事例を多く取り上げる傾向があり、この技法がどれだけ有効なのかどうかは、エビデンスに基づく評価を待たなければならないでしょう。
 それでも、意思疎通が難しいと思っていた認知症の方々と向き合う勇気を得た気がしています。今度帰省するときには、この本で学んだ技法を試してみようと思っています。

(県立図書館:あんころ亭きなこ)