『カヤネズミの本』 畠佐代子著

『カヤネズミの本』 畠佐代子著 世界思想社 2014 資料番号:81599094 請求記号:489.47/7  OPAC(所蔵検索)

 みなさんはねずみという動物に対してどの程度興味をもたれていますか。ねずみといえば「ハツカネズミ」「ドブネズミ」等の典型的なねずみが思い付くかもしれません。もしかしたら奇妙な生き物としても名高い「ハダカデバネズミ」を思い出す方もいるでしょう。
 では「カヤネズミ」はどうでしょうか。名前だけは聞いたことがあるという方もいるかもしれません。ですが「どんな姿。どのくらい大きいの。暮らしている所はどこ。何を食べているの。」と聞かれたときにすぐには答えられないのではないでしょうか。日常ではなかなか出会えず、その生態が周知されていないのが「カヤネズミ」というねずみの正体です。今回紹介するのは、そんな謎に満ちた「カヤネズミ」を写真つきで簡単に知ることのできる『カヤネズミの本』です。

 この本は、著者が学生の頃から現在まで続けている「カヤネズミ」のフィールドワークの成果を、まとめたものです。
 まず「カヤネズミ」の生態について第一章、第二章で語られます。彼らの体長は約6cmととてもちいさく、大人の手の親指の長さくらいだといいます。そんなちいさな彼らが暮らしているのが、稲田や背の高いイネ科の植物(総称:カヤ)で作られたボールのような巣です。そして彼らはとても軽く、やわらかい草でも簡単に移動可能で、非常に警戒心も強く、人間が近づくとすぐに逃げてしまうそうです。そう考えると私たちが生活しているなかで彼らに出会えないこともうなずけますね。他にも「カヤネズミ」の食事や、そこでの暮らし方、天敵等、基礎的な情報が書かれています。
 第三章、第四章では「カヤネズミ」のすみかや私たち人間との関わり、その現状について語られます。その中で目を引くのが「カヤネズミ」が絶滅の恐れがある野生動物だということです。昔、日本の田んぼでごく普通に見かけられる生き物だった彼らは、土地開発や農業の近代化、人々の認識の低下によってすみかを奪われ、数が減っているそうです。稲作や火入れ等の恒例行事の中で、彼らは臨機応変に巣を作り替え、生きながらえてきました。私たちは、彼らのすみかを奪わずにどのように土地開発や伸びたカヤを刈ればいいのか。この章では彼らと共存していくための工夫や、著者たちが行っている保護活動について詳しく書かれています。

 最後になりますが、ねずみは汚い、あぶないというマイナス面ばかり注目されることも多く、駆除される事もあります。しかし「カヤネズミ」のように虫を食べ、稲作に益をもたらしてくれるねずみもいるのです。害をもたらすという認識で個々のねずみを知ろうとせず駆除し、その土地にどんな生き物が住んでいるのか調べもせずに人間の勝手ですみかを奪うのは非常に悲しい事です。もし「カヤネズミ」の事を少しでも気になった方がいたらぜひ手にとって、このちいさな命に触れてみてはいかがでしょうか。

(県川:げっ歯類を愛する司書)