『わたしが正義について語るなら』 やなせたかし著

『わたしが正義について語るなら』 やなせたかし著 ポプラ社 2013年 資料番号:22706766 請求記号:158/121  OPAC(所蔵検索)

 日本の子どもに大人気のアンパンマン。日本では、子どもから大人まで幅広く認知されているヒーローです。
 今回ご紹介する本は、『アンパンマン』の作者であるやなせたかしさんが、自分自身の考える正義について語った一冊です。実は、やなせさんは、『アンパンマン』という作品を通して、自分の思うところの正義を描き続けてきました。この本の中では、『アンパンマン』に込めた正義への熱い思いについて触れています。
 やなせさんは、1919年高知県に生まれ、2013年に94歳で生涯の幕を閉じました。『アンパンマン』が誕生したのは、やなせさんが50歳を過ぎた頃です。本書の中では、やなせさんの生い立ちや様々な経歴も紹介されています。特に、やなせさん自身の戦争体験は、やなせさんが正義について考えるきっかけを生み、『アンパンマン』の誕生に深く関わっています。
 やなせさんは、兵隊として戦争に行った経験の中で、一番辛かったこととして、重労働よりも何よりも餓えを挙げています。そのことから、戦後自分が何かをやるとしたら、まず餓えた子どもを助けることが大事と考えるようになりました。アンパンマンが自分の顔を食べさせることによって、餓えている人たちを救う発想は、この体験から生まれたものです。
 しかし、アンパンマンは、スマートで超人的なヒーローではありません。他のヒーローとは違いどこか格好悪い一面も持ち合わせ、弱点もあります。敵を殺すことはせず、自慢することもありません。そこにも、やなせさんが考えるヒーロー像というものが隠されています。
 アンパンマンは、周りの人が喜ぶことに幸せを感じる少し人間らしいヒーローです。最強ではないかもしれませんが、人の幸せを願い、困った人を自己犠牲しながら助けることができる、その「愛と勇気」に私たちは魅かれ、国民的キャラクターであり続けるのかもしれません。
 やなせさんの人生経験から私たちに残してくれたメッセージは、やなせさんの作品の中で今もなお生き続けています。この本は、やなせさんの作品をより深く理解できるだけでなく、やなせさんの人柄がにじみ出ています。正義という観点だけではなく、やなせさんの人生観も感じながら読んでいただきたいと思います。

(県立図書館:桜アンパンナ)