企画展示「かながわと美術館」開催中

 神奈川県は全国で初めて公立の近代美術館を開設したことで知られていますが、観光地・箱根や鎌倉に大小多くの美術館を擁するなど、美術館とは縁の深い土地柄です。

 神奈川県立近代美術館は国内初であり世界でもニューヨークのMoMA、パリの近代美術館につぐ世界で三番目に開館した近代美術館でした。
 また、国内初ということでは箱根の彫刻の森美術館は国内初の野外美術館であり、横浜のそごう美術館は百貨店内の美術館として国内で初めて博物館法の登録をした美術館です。
 県内では鎌倉や箱根には美術館が集中していますが、鎌倉や湘南、箱根などの地は数多くの文人や芸術家が居住したり、あるいは一時期療養に訪れたりした場所でもあり、アトリエがそのまま美術館となっているところもあります。温泉地では足湯に浸かることができたり、温泉に入れる施設が付属している美術館などというものもあります。
 美術館に収蔵されている絵画にも県内から見える富士や湘南の海など美しい風景を題材にしたもの、横浜や川崎の都市風景などを題材にしたものなどが多くみられます。

 美術館からは少し離れますが、「ゴジラ」の美術監督井上泰幸は海老名のアトリエで仕事をしていましたし、アニメ「エヴァンゲリオン」の舞台として箱根が描かれていたり、横浜がジブリ映画「コクリコ坂」「猫の恩返し」の舞台となっていたりと神奈川県は映画やアニメにも縁が深いところです。箱根などの自然や緑を伴った街並み、都市の風景などが背景として絵になるからでしょうか。アニメや漫画などに力を入れている美術館には、川崎の市民ミュージアムや藤子・F・不二雄ミュージアムなどがあります。

 また、最近ではル・コルビュジエの設計した国立西洋美術館が世界遺産になり全国的に近代建築への関心が高まっています。ル・コルビュジエの弟子坂倉準三設計の旧神奈川県立近代美術館鎌倉館本館は閉館しても文化財として残り、建築賞を受賞した美術館はコレクションとともに建物も観光資源として注目をあびるようになっています。横須賀美術館やポーラ美術館などはこの代表格でしょうか。ちなみに県立図書館の建物もル・コルビュジェの弟子前川國男設計で神奈川県立近代美術館とともに「日本の近代建築20選」(DOCOMOMO Japan 1999)に選ばれています。

 閉館してしまった美術館にも素敵なものがいくつもありました。鎌倉のミナミ宝飾美術館ではダリの作品が数多く公開されていました。収蔵品が散逸してしまったのは残念です。逗子のイヴ・タンギー美術館では41点の作品が集められていて、あまり作品数が多くなかったイヴ・タンギーの最大のコレクションを有していたようです。
 また、浮世絵の常設館として横浜にあった平木浮世絵美術館も素晴らしいコレクションを有する美術館でしたが、現在は財団としてコレクションを貸し出す形となり常設館を持たない形となりました。
珍しい美術館としては江の島のキルト美術館や香水瓶美術館、相模原の和竿美術館などがありました。またヴェネツィアン・ガラス・コレクションの北鎌倉小瀧美術館、シャガールのリトグラフが見事だったリ・カーヴ美術館など閉館を惜しむ声をよく聞きました。
 閉館に追い込まれる状況はわが県だけではなく、美術館には厳しい時代のようですが、私たちを楽しませてくれる美術館は是非長く続いてほしいものです。

 神奈川と芸術・画家たち、箱根や鎌倉などの観光地と美術館など、神奈川を美術館という施設を通じて概観しようという今回の展示は会場の狭さもあり所蔵しているコレクションの紹介などはほとんどできませんでしたが、この展示をきっかけに美術館に出掛けてみようという方がいられれば望外の喜びです。

展示期間:平成29年5月12日(金)~8月9日(水)
展示会場:県立図書館本館1F展示コーナー

(調査閲覧課:企画展示担当)