『日本刀の科学』 臺丸谷政志著

『日本刀の科学』 臺丸谷政志著 SBクリエイティブ 2016年 資料番号:81663643 請求記号:564.02 /30   OPAC(所蔵検索)

 近年、和食、和紙、祭りなどがユネスコなどに高く評価され、テレビや新聞等でも日本の文化が話題になることがあります。かつて武士の魂と言われた刀をはじめとした日本刀は、日本の文化の中で世界的にも最もよく知られた物の1つに挙げられるのではないかと思います。しかし、日本刀は、和食や和紙、祭りなどとは異なり、現代では日常生活で触れることがほとんどなく、博物館や美術館といった施設に行かなければ目にすることがなくなってしまいました。そんな日本刀を知る機会の1つとして「日本刀の科学」という本を紹介させていただきます。
 この本は、タイトルに「日本刀の科学」とあるように、日本刀について美術的な視点や歴史的な視点からではなく、科学的な視点を中心に書かれていますので、理系の方にも比較的読みやすいのではないかと思います。
 内容は1~8章で構成されており、第1章では「日本刀」というタイトルで日本刀についての基礎知識、各部の名称や変遷などがわかりやすく書かれています。
 第2章からは「玉鋼の科学」、「作刀伝統技術の科学」、「焼き入れの科学」というようにタイトルに科学という言葉が入り、材料である玉鋼や作刀工程などについて科学的な視点から書かれています。説明は、文章だけではなく、写真や図なども用いて、初心者でも想像しやすいよう工夫されています。第5章以降では日本刀の強靭さや打ち込みなど、実践で用いた時に発生する衝撃などについて計算やシミュレーションを用いて説明しています。第7章では、著者が日本刀研究を始めるきっかけともなった目釘について書かれています。目釘とは、刀身が柄から抜けることを防ぐ役割を持っており、ここでは、「竹目釘はなぜ破損しないのか」というタイトルで、数値シミュレーションなどを用いて衝撃工学の視点から説明しています。
 日本刀などを目にした時、刃のどのあたりが最も切れるのか疑問に思ったことはありませんか。その答えは、第8章「日本刀の物打ちはどこか」に書かれています。辞書などでは物打ちを「切先三寸」と書かれていることもありますが、実際に裁断に最も有効な「物打ち」がどの部分に当たるのか、実験や数値シミュレーションなどを用いて工学的な観点から検証しています。この章では、最後に、物打ちを体得した達人と強靭な刀が揃ってこそできる兜割りが紹介されています。
 また、columnという形で「峰打ちは本当にあったのか」や「竹刀の物打ち」など、日本刀に関心を持ちやすいように、本文にも関係した内容が取り扱われています。
 この本を読んで日本刀について知った後、博物館や美術館などへ行って日本刀の実物を見るのも新たな発見があって面白いかもしれません。

(県立川崎図書館:博物館好き)