企画展示「宮川香山図録展示-横浜から世界へ羽ばたいた芸術」開催中です!

 2016(平成28)年5月に没後100年を迎えた横浜の陶工「初代宮川香山」の業績を、当館の所蔵する展覧会図録や作品集を中心に、その活躍した時代背景なども併せて紹介する企画展示です。
 初代宮川香山(以下香山)は、明治時代の日本を代表する陶工で、横浜で独創的な真葛焼(まくずやき)を制作しました。1842(天保13)年に京都の真葛ヶ原に、陶工眞葛長造の4男として生まれた香山(本名虎之助)は、1870(明治3)年に横浜に移住し、翌年太田村不二山下(現・横浜市南区庚台) に窯を開きました。ここで制作された「眞葛焼」は、彫刻的な装飾を施して立体的かつ写実的に表現された「高浮彫(たかうきぼり)」と、明治10年代半ば頃から香山が、釉薬に関して研究を重ねて制作した、優美で表現豊かな磁器作品の「釉下彩(ゆうかさい)」とに大別されます。どちらの作品も国内はもとより、万国博覧会など、海外でも高く評価され、「マクズ・ウェア」として広く知られています。
 香山は、1896( 明治29)年、陶芸界から二人目の帝室技藝員に選出され、翌年には緑綬褒章を授与されるなど、明治期の名工として揺るぎない地位を確立していましたが、1916(大正5)年に本郷駒込の別邸で75歳の生涯を閉じました。
 眞葛香山窯は、初代の没後、養子の半之助が2代目香山を継ぎ、3代目香山(葛之輔)へと続きましたが、1945(昭和20)年の横浜大空襲で焼失し、3代目香山(葛之輔)も家族、職人と共に亡くなりました。戦後は葛之輔の弟で、平塚に疎開していて難を逃れた智之助が4代目香山を継ぎましたが、復興の叶わないまま1959(昭和34)年に亡くなりました。これにより眞葛窯は廃窯となり、香山の名も絶えてしまい、眞葛焼は幻のやきものとなりました。
 初代香山没後100年の昨年は、展覧会が各地で開催され、テレビ番組で取り上げられるなどの影響で、関心が高まったせいか、当館で開催した講座も盛況でした。当館でも新たに展覧会図録を4点収集し、今回の展示でも公開しています。
展示している図録には、1986(昭和61)年に開催された「宮川香山展 戦火に消えた幻の名窯-横浜真葛焼」展のものや、1989(平成元)年に開催の「みなと横浜が育てた真葛焼」展のものなど、比較的古いものもあり、普段皆様の目に留まる機会も少ないことから、今回図録以外の香山関係の資料と共に公開しています。また、会場には手に取って見ることのできる図録も2点用意しましたので、ぜひ香山の作品世界をご堪能ください。

 展示は前半を「香山が活躍した万国博覧会」と題して、香山と眞葛焼の名声を高めた万国博覧会について解説し、対応した展示ケース1には1900年のパリ万国博覧会にあわせて、日本美術の変遷を解説すべく編纂、刊行された『稿本日本帝國美術略史』(請求記号:702.1/312 常置)や『世紀の祭典万国博覧会の美術』(請求記号:702.06NN/151)などの美術の視点から観た万国博覧会に関する資料、「明治の超絶技巧」を特集した雑誌『別冊太陽』通巻217号(請求記号:Z051/168 常置)、『美術手帖』第68巻1034号(請求記号:Z705/4 常置)などを展示しています。

 展示の後半は、「眞葛焼解説」として、眞葛焼の概要、「高浮彫」と「釉下彩」それぞれの特色、初代香山が選出された帝室技藝員について、などを解説しています。対応した展示ケースは2から4です。
 展示ケース2には、眞葛焼や初代香山を取り上げた資料を展示しています。県立図書館・文化資料館・音楽堂による刊行物『神奈川文化』のNo.324(請求記号:K097/1/34-35 常置)は神奈川のやきものを特集し、中でも眞葛焼を中心に取り上げています。他にも『横浜市史稿』(請求記号:Z705/4 常置)や、高浮彫の作品に批判的な記述のある「府縣陶器沿革陶工傳統誌」(『明治後期産業発達史資料』第187巻(請求記号:602.1/141/187 常置)所収)などを展示しています。
 展示ケース3では眞葛焼の展覧会図録を紹介しています。前述の『宮川香山展 戦火に消えた幻の名窯-横浜真葛焼』(請求記号:K75.1/27 常置)、『みなと横浜が育てた真葛焼』(請求記号:K75.1/23 常置)の他、没後100年の記念展覧会図録、『宮川香山 虫明焼と明治の陶芸 没後100年』(請求記号:K75.1/40 常置)、『宮川香山 没後100年』(請求記号:K75.1/39 常置)の他、『真葛香山 作品集』(請求記号:K75.1/42 常置)、『宮川香山展 驚異の明治陶芸 横浜・真葛ミュージアムコレクションから』(請求記号:K75.1/43 常置)の合わせて4点を新たに収集しました。この内『真葛香山 作品集』と『宮川香山展 驚異の明治陶芸 横浜・真葛ミュージアムコレクションから』の2冊を実際に手に取ってご覧いただけるように展示しています。
 また、このケース内には当館で所蔵する、おそらくは2代目もしくは3代目の香山の時代に眞葛窯で作成された茶器の、急須(1口)と煎茶碗(5客)『呉須赤絵「魚之図」』を写真で紹介しています。
この茶器は、俳人・俳画家として活躍され、第5回(昭和31年度)神奈川文化賞を受賞された、飯田九一氏の旧蔵品です。九一氏が収集した、松尾芭蕉、宝井其角、与謝蕪村らの真筆など、多数の短冊・色紙など俳諧関係資料と共に、当館に昭和48年に寄託され、その後平成20年に寄贈されました。
 展示ケース4には眞葛焼をコレクションする、神奈川県立歴史博物館の『宮川香山作品目録 神奈川県立博物館人文部門資料目録(10)』(請求記号:K06/25-2/10a 常置)や宮川香山眞葛ミュージアム館長の著書『世界に愛されたやきもの 初代宮川香山作品集』(請求記号:K75.1/34 常置)、眞葛焼の屈指のコレクターである田邊哲人氏の著書『帝室技藝員眞葛香山』(請求記号:K75.1/30 常置 )などが並びます。展示コーナー内には、眞葛焼を所蔵するミュージアムの作成したグッズなども紹介し、彩を添えています。
 また、本館1階多目的ルーム前の展示ケースには“番外編”として、『図説 万国博覧会史 1851―1942』(請求記号:606.7S/75)、『博覧会と明治の日本』(請求記号:606.9/51)、『博覧会の時代 明治政府の博覧会政策』(請求記号:606.91PP/16)など、明治政府の殖産興業政策の一環であった万国博覧会に関わる資料を展示しています。

 今回の展示を通じて、休館中ではありますが県立歴史博物館に多数の眞葛焼が所蔵されていることや、横浜に常設の眞葛ミュージアムがあることなども紹介し、横浜の地に独自の陶磁器産業の発達があったこと、そして宮川香山と眞葛焼についての関心が高まれば、幸いなことと思います。

展示期間:平成29年2月10日(金)~5月10日(水)
展示会場:県立図書館本館1F展示コーナー

(情報整備課:企画展示担当)