『ず・ぼん 19 図書館とメディアの本』ず・ぼん編集委員会編

『ず・ぼん 19 図書館とメディアの本』ず・ぼん編集委員会編 ポット出版 2014年 22883219 請求記号:010.5/153/19  OPAC(所蔵検索)

 すごくニッチで、熱い雑誌です。この雑誌はまず試みが熱いです。ポット出版は自社ホームページで『ず・ぼん』バックナンバーの全文記事を公開しています。もちろん記事の著者からオーケーがもらえたものに限ってなのですが、これをはじめて知ったときは衝撃を受けました。利益を得ることよりも、「情報を伝える」というメディアとしての目的を大切にしているのだと感じました。(最近の何号かは目次のみの公開です。)そして、繊細な話題にもザクザク切り込んでいく記事ばかりなので、読んでいてドキドキします。『ず・ぼん 19』では著作権の扱いがテーマのひとつとして取り上げられているのですが、記者の切り込みぶりにドキッとしました。現在、国立国会図書館は、自身がデジタル化した資料のうち、絶版等の理由で入手が難しい資料に限って国立国会図書館の承認を受けた全国の公共図書館に送信する「図書館向けデジタル化資料送信サービス」を提供しています。このサービスのインタビューで記者の質問から真剣さと熱さを感じる一幕がありました。記事は臨場感たっぷりなので、ぜひ読んでみてください。
 恥ずかしながら、『ず・ぼん 19』を読んで初めて「オーファンワークス」という言葉を知りました。とはいえ、私のような人は少なくないようで、記事の最初は「オーファンワークスってなんなの?」というところから始まります。日本語に訳すと「孤児作品」、どんなに探しても権利者がわからない作品のことを言います。現在、著作権が切れるのは著者没後50年。しかし、没年が分からないことで発行後200年以上たっているにも関わらず、自由に利用できない資料があります。権利者がいれば問い合わせができますが、オーファンワークスではそれができません。
ところで、著作権が切れて自由に利用できるようになった資料のことをパブリックドメインというのですが、2013年に文化庁は、文化庁eBooksプロジェクトとしてパブリックドメインのいくつかを電子書籍として配信しました。すると、1カ月で9万ダウンロードを達成!利用できる形に整えれば、読みたい、利用したい、という方はたくさんいることが分かりました。
 日本には、オーファンワークスを解決できるものとして「文化庁長官裁定制度」が存在します。「相当な努力をしても権利者が見つからない場合、著作権に関しては文化庁の長官が権利者の代わりに使用許可を出す」というものです。この制度のおかげで国立国会図書館の近代デジタルライブラリーができました。(現在では国立国会図書館デジタルコレクションと統合されています。)「相当な努力」の部分に大変な額のお金がかかってしまうのが難点なのですが・・・。オーファンワークスへの取り組みは、この2点を起点として、今後発展していくのではないでしょうか。
 著作権は動画配信サービスや音楽・画像のダウンロードなど私たちにとって身近な問題です。ちょっと難しい話題ではありますが、この機会に考えてみてはいかがでしょう。意外に使える図書館の魅力に気が付かれるのではないでしょうか。そして、最初から最後まで熱い『ず・ぼん』の雰囲気もきっとお楽しみいただけると思います。

(県立図書館:『ず・ぼん』が面白くてたまらない)