『すてきなあなたに』 大橋鎮子著

『すてきなあなたに』 大橋鎮子著 暮しの手帖社 1988年 110144474 請求記号:R13.1/オオ/1 女公2(女性関連資料室2)  OPAC(所蔵検索)

 「1988年出版の本なんて。そんなカビ臭い本、手に取りたくないわ。」と思う方もいらっしゃるかもしれません。確かに本は古くて埃っぽいけど、中身は時がたっても変わらないスマートで「すてき」なお話ばかりです。NHKの朝の連続ドラマ『とと姉ちゃん』(2016年上半期)の主人公、小橋常子さんのモデルである大橋鎮子さんが『暮しの手帖』に連載されていたエッセイをまとめた本だと言ったら、「あら「すてき」に決まってるわね」と納得していただけるでしょうか?

 私とこの本との出会いは小学生低学年の頃で、友人のお母様が母に貸してくださり、母が私に読み聞かせてくれたのでした。紅茶や日本茶の入れ方、簡単でお洒落なお料理、洋服のコーディネートなどの上品な暮しを綴ったこの本は、背伸びしたい年頃の私にとってのバイブルでしたが、それ以上に惹きつけられたのが、穏やかな言葉で綴られた温かいエピソードの数々です。
 初対面の方と楽しくひと時を過ごす会話のヒントや、「どうしてこれを?」と悩んでしまうようなお土産の楽しみ方、久しぶりの方とのやりとりでの気遣い… 私はすぐに夢中になり、母が読んでくれるのを待ち切れず自分で読み始めました。日常の大切なことはこの本から学んだと言って過言ではありません。

 私の大好きなエピソードを2つご紹介させてください。
 「おんなじ柄」は、「お気に入りの柄の洋服を着て国電に乗ったら、同じ柄の服を着た人と乗り合わせてしまった。思わずにっこりして頭を下げたら相手の方もニコッとして私の礼を受けてくれた」というお話。
 「あなかがり」は、「お店で買ったスカーフを帰宅して広げてみたら隅に1センチ程の穴があり、同色の糸で丁寧にかがってあった。はじめは返品しようと思ったけど、その丁寧な糸かがりを見ている内に「この穴を開けてしまった人はどんなにびっくりし、心配し、かがったのだろう」と思うと、ちょっと見にはわからない程の丁寧にかがられたこのスカーフがかえって愛おしくなり一層好きになった」というお話です。

 この2つとも、私なら嬉しくない出来事です。
「おんなじ柄」はモノトーンや単色ならいざ知らず、柄がかぶるなんて、真似したわけでなくても嫌だし、「あなかがり」した商品なんて、難ありで売っていたならともかく、不良品をつかまされたようで悔しいです。
 でも大橋さんは「私の好きなこの柄を、他にも好きになってくれた人がいる」と嬉しく感じ、「こんなに丁寧に心をこめてかがったんだ」とその気持ちを愛おしく思っておられます。ちょっとした気持ちの持ち方で嫌な出来事が幸せな出来事に変わってしまうんですね。この本は、日常の何でもない出来事を小さな「すてき」に変えてしまう、そんな「ちいさなしあわせ」の集まりです。
 この本を手にとって、あなたの日常にあるたくさんの「すてき」を見つけてみてはいかがでしょうか?
(県立図書館 ポットに一つ あなたに一つ)