資料紹介講座「横浜眞葛焼の創始者 宮川香山の業績をたどる」を開催しました

 1月25日(水)に、平成28年5月に没後100年を迎えた横浜の陶工「初代宮川香山」の業績をたどる講座を開催しました。講師は、県立歴史博物館の学芸員で、中世から近代の工芸(金工、漆工、陶磁など)を担当されている小井川理(こいかわ・あや)さんにお願いしました。
 初代宮川香山(以下香山)は、明治時代の日本を代表する陶工で、横浜で独創的な眞葛焼(まくずやき)を制作しました。1842(天保13)年に京都の眞葛ヶ原に、陶工眞葛長造の4男として生まれた香山は、 1870(明治3)年に横浜に移住し、翌年太田村不二山下(現・横浜市南区庚台) に窯を開きました。ここで制作された「眞葛焼」は、彫刻的な装飾を施して立体的かつ写実的に表現された「高浮彫(たかうきぼり)」と、優美で表現豊かな磁器作品の「釉下彩(ゆうかさい)」とに大別されます。「釉下彩」は、明治10年代半ば頃から香山が釉薬の研究を重ねて制作したものです。どちらの作品も国内はもとより、万国博覧会など、海外でも高く評価され、「マクズ・ウェア」として広く知られています。
 香山は、1896( 明治29)年、陶芸界から二人目の帝室技藝員に選出されました。また、翌年には緑綬褒章を授与されています。
 こうした香山の業績について、「1.眞葛焼創業の時代」、「2.初代宮川香山の作陶」、「おわりに-初代宮川香山の業績」に分けて講義が行われました。香山が活躍した時代背景にある、万国博覧会や内国勧業博覧会での日本美術の評価や近代産業としての窯業の展開、明治政府の輸出振興政策などの説明がありました。加えて輸出振興に伴って、美術工芸品を取り扱う商人の他に輸出用陶磁器に最終的な仕上げを施す絵付け専門の工房(窯場)が横浜に集中した経緯も話されました。また香山の作陶の変遷を「横浜以前・移住直後」、「明治前期」、「明治中期から後期、そして大正」として、それぞれの 時代の作品の特徴などを、画像を参照しながら丁寧に解説されました。
 最後にまとめとして、初代香山の業績は、「高い技術力、多彩な作陶、確固たる美意識」に加え、時代を牽引し、「やきもの」から「陶芸」へ、芸術としての歩みを進めたこと、その経営手腕により、眞葛香山窯を作陶から仕上げの絵付けまでを行える国際的競争力を有する工房にしたこと、時代に応じた作風の展開を行った結果、多彩な作品が残ったことを挙げられました。
 会場には今年度受け入れた香山の展覧会図録4点の他、過去の図録や作品集、講座資料の参考文献、その他関係資料など、十数冊を閲覧できるように展示しました。講座の前後や途中の5分休憩の間にも、手に取って熱心に見入る方が多数おいでになり、中には入手方法を尋ねられるなど、資料への関心の高さを感じました。特に記念展示の図録『宮川香山 没後一〇〇年』(請求記号:K75.1/39 常置)と『宮川香山 虫明焼と明治の陶芸』(請求記号:K75.1/40 常置)は人気がありました。また講義翌日にも、3階かながわ資料/新聞・雑誌室カウンターで、講義資料と共に配布した「トピックスのとびらNo.134」(2016年9月発行)を持参し、掲載されている香山の図録の閲覧を希望した受講者もいらっしゃいました。
 講座では欠席者も少なく、講義中は多くの方が皆熱心に集中している様子で、講義の後には個別に質問する方もあり、関心の高さがうかがえました。やはり、昨年メモリアルイヤーということで、展覧会が各地で開催されたり、テレビ放映があった影響が大きかったようです。
 香山と眞葛焼については、2月10日(金)から5月10日(水)の期間、県立図書館本館1階展示コーナーで企画展示「宮川香山図録展示-横浜から世界へ羽ばたいた芸術」を開催中です。今回の講座でも触れられた、香山の評価を高めた万国博覧会との関わりや明治期の工芸政策、眞葛焼の特徴、特に高浮彫や釉下彩の紹介などをまとめたパネルと、当館で所蔵する香山の展覧会図録など眞葛焼に関係する資料を展示しています。講座の際に閲覧していただいた資料も展示しています。こちらもぜひ、ご覧になってください。
(県立図書館情報整備課 講座担当)