資料紹介講座「コレクション紹介-報徳思想関係資料-」を開催しました。

 去る10月26日、当館の特別コレクションである「報徳思想関係資料」を紹介する講座で講師を務めました。「報徳思想関係資料」とは、江戸後期の農政家・二宮尊徳に関わる資料を収集したものです。小田原に生まれた尊徳は、県内のみならず栃木・茨城・福島などの多くの農村を、分度(注1)と推譲(すいじょう)(注2)に基づく「報徳仕法」によって困窮から救いました。1856年10月20日に亡くなり、今年は没後160年に当たります。

 当日は、まず尊徳の生涯について簡単に説明を行いました。ここでは講談師・早川貞水が著した『教育講談 第7編 二宮金次郎』などの児童書の挿絵や、伊東九一郎『二宮尊徳肖像』などをパワーポイントで紹介しました。
 次にコレクションの概要について紹介しました。その内訳は、尊徳や門弟の伝記が最も多く、次いで尊徳の教えである報徳思想の理論書や研究書、そして報徳思想を広める目的で結成された団体の機関誌などとなっています。その他にこんな資料もある、ということで、三波春夫歌『噫々(ああ),二宮金次郎』のレコードをかけたり、報徳二宮神社の初代宮司・草山貞胤が作歌した『公徳經濟二宮翁の歌』の楽譜を紹介したりしました。また時代により所蔵数に偏りがあることを紹介し、その背景を加藤仁平著『永遠に生きる二宮尊徳』などをもとに説明しました。
 最後にコレクションの代表的な資料を紹介しました。尊徳が残した資料は報徳仕法の実践的なマニュアル(仕法雛形)の他は日記や書簡が主で、報徳思想の多くは尊徳の門弟や研究者たちによって後世に伝えられました。当コレクションでも一番古い資料は明治6年の福住正兄著『報徳訓釋義』(ほうとくくんしゃくぎ)で、尊徳が直接残した資料はありません。そのため、講座では尊徳の門弟や研究者たちの生涯を説明するとともに、彼らの伝記(小田原市城内国民学校編『福山瀧助翁』・留岡幸助著『二宮尊徳と剣持広吉』など)や、著書(福住正兄著『報徳方法 富国捷徑』(リンクは初編)・斎藤高行著『二宮先生語録』・岡田良一郎著『報徳富国論』(リンクは上巻)・佐々井信太郎編『二宮尊徳全集』(リンクは第1巻)など)を紹介しました。また、二宮金次郎像のもととなった負薪読書図が最初に掲載された幸田露伴著『二宮尊徳翁』と、尊徳の最初の伝記である富田高慶著『報徳記』(リンクは一)の記述を比較し、その違いを説明しました。さらに当館にしかない資料として、終戦の年に発行された『報徳遺蹟写真集』や、客に傘を貸し合う目的で結成された旅館組合の看板である『福住正兄万福講定宿びら』などを紹介しました。

 会場内には、紹介した資料を全て陳列しました。軸物や尊徳の肖像画は展示ケースに収まらないため、以前開催した本館での企画展示の際は、実物を展示できませんでしたが、今回は全て、受講者の皆様に実物をお見せすることができました。

(注1)過去に遡って年貢収納額の平均を計算し、収納額の限度を定めること。
(注2)余財を村の開発資金に充てること。
(県立図書館地域情報課 講座担当)