平成28年度 文字・活字文化の日記念講演を開催しました

 10月29日(土)に、恒例の「文字・活字文化の日記念講演」を開催しました。
 今年は、伊勢原市の「大山詣り」のストーリー(注)が日本遺産に認定された記念すべき年でもあり、長年大山の研究を行ってきた川島敏郎(かわしまとしろう)氏に「『大山不動霊験記』にみる大山信仰の諸相」と題してご講演いただきました。
 最初に、伊勢原市立大山公民館での夏季講座で13年かけて『大山不動霊験記』全15巻の解読にあたってきたことを説明されました。また、全巻揃っているところは現在のところ県内で4箇所しか確認できず、稀覯(きこう)な資料を県立図書館で所蔵していることをお褒めいただきました。
 当資料は、大山寺12坊の一つである養智院の心蔵が江戸時代後期に御師(おし)等から聞き書きした大山不動尊のご利益を集成したものです。作者の心蔵は実在の人物であることが個人蔵の不動明王坐像の胎内から発見された文書等により確認できたことについて、スライドを交えてお話しいただきました。
 巻構成は第1巻(全6話)が大山寺に関する記事、第2巻から第15巻(全125話)が大山不動尊の霊験・利益譚となっています。
 第2巻以降の霊験譚の内容を分析したところ、地域分布では神奈川県内のものがほぼ半数を占め、そのうち大住郡(現伊勢原、平塚、秦野市域など)が群を抜いて多く、地元での信仰が厚かったことが理解されました。現世利益の内容は病気平癒、災難除けが多く、落語の「大山」や古川柳等に取り上げられている借金逃れの話は皆無であること、ご利益の達成には常日頃からの大山崇拝が重要であることなど、具体的な霊験譚の例に触れながら解説いただきました。
 最後に「大山・日向アーカイブ」に向けて釈文や注を入力した大山関係のデータベースについて説明され、その内の『大山不動霊験記』全15巻分は当館のホームページにある「神奈川県郷土資料アーカイブ」へ提供し、既に閲覧できることをご紹介いただきました。 
 受講者の皆さんは大変熱心に聞き入っており、質問も講演終了後まで活発に出ていました。また、会場に展示した川島氏所蔵の大山関係の資料や当館所蔵の川島氏の著作、『大山不動霊験記』、大山関係の浮世絵、絵図、滑稽本について熱心にご覧になっていました。
 講演終了後にご協力いただいたアンケートを集計したところ大変好評で、ぜひ第二弾を開催してほしいという声が複数寄せられました。
 今回の講演会には定員50名のところ、172名の応募があり、抽選で約7割の方が受講できない結果となったことが大変心残りです。
 また大山関係の講演会を開催する機会がございましたら、ぜひお話を伺うことができればと思っております。

(注)日本遺産に認定されたストーリータイトルは「江戸庶民の信仰と行楽の地 ~巨大な木太刀を担いで『大山詣(おおやままい)り』~」

 過去の県立図書館、県立川崎図書館の「文字・活字文化の日記念講演」に関する記事についてはこちらをご覧ください。

(県立図書館図書課 文字・活字文化の日記念講演担当)