『サバからマグロが産まれる!?』 吉崎悟朗著

『サバからマグロが産まれる!?』 吉崎悟朗著 岩波書店 2014年 資料番号:81622128 請求記号:666.6 /14 OPAC(所蔵検索)

 近頃、世界中でマグロが減り続け、将来マグロが食べられなくなるかもしれないという報告や、葛西臨海水族園に搬入された106匹のクロマグロが原因不明の大量死をしたというニュースが話題になりました。身近な食材であるマグロは、刺身、寿司ではおなじみで、赤身やトロなどが世代を問わず人気です。
 今回は、マグロをサバから産ませる取り組みについて、なぜそれが必要なのか、どのような実験が行われているのかを伝える1冊を紹介します。

 絶滅危惧種に指定されているクロマグロは、スズキ目サバ科マグロ属に属する魚で、大西洋クロマグロと太平洋クロマグロの二種類が存在します。
 本書によると、北東大西洋のクロマグロが絶滅危惧種に指定された背景には、産卵前後のマグロの「蓄養」が一つの要因として挙げられています。「蓄養」とは地中海に産卵に来た、エネルギー消費し、痩せて売り物にならないクロマグロをイケスに囲い込み、しばらく餌をたくさん与えることによって、マグロに再び脂をのせる方法です。この方法で脂をのせたマグロは、再びトロがたくさんとれるようになる為、日本人が非常に高値で買い取る様になりました。その結果、北東大西洋クロマグロの資源量の減少に拍車をかけてしまいました。
 一方の太平洋クロマグロは、全漁獲量の約七割を日本の漁船が占め、未成魚(三歳以下)も食用や種苗(養殖用の稚魚や幼魚)として漁獲されています。全漁獲量の九割以上が未成魚となっているため、産卵できるクロマグロが減ってしまい資源量の減少を進めてしまいました。
 ちなみに魚市場に並んでいるマグロは20kg~50kgで、産卵できる親マグロは100kg以上のマグロです。減ったクロマグロの種苗を増やすのに、親マグロになるまで飼育するとなると、成熟までに4~5年ほどかかります。養殖クロマグロの出荷サイズは30kg程度なので、親マグロを育てるには、養殖クロマグロを出荷サイズに育てるよりも大きな施設、膨大な時間、そして莫大な労力と餌代が必要になるのです。そこで、体重が300g程度で成熟するサバ類を代理親にできないかという話になるのですが、当時実験に使うマグロの仔魚は貴重で手に入りづらかった為、まずは入手が容易だったニジマスとヤマメを使って実験を開始しました。結果、ヤマメからニジマスを産ませることに成功します。ただ、この本の発行時、残念ながらサバからマグロを産ませることはまだできていませんでした。
 この本を読んで、マグロを消費しているのはほぼ日本で、日本が獲り過ぎていることが原因で資源量が減ってしまっている事実は衝撃的でした。しかし、同時にマグロは日本でとても人気のある魚だということを改めて知ることができました。この技術を使えば、クロマグロ以外の絶滅が危惧されている魚も救うことが出来るかもしれないと考えると、とても夢が広がるなと思います。実験の方法などは写真や可愛らしいイラストを用いて説明してあり、読みやすいので、興味をお持ちになった方は是非ご覧になってみてはいかがでしょうか?

(県立川崎図書館:生き残りのクロマグロ)