気仙沼市大島の文書救出ボランティアに参加して

気仙沼市大島「浦の浜港」

 津波の被害を受けた「浦の浜港」(クリックで拡大)

 平成23年3月11日、東日本大震災が起こりました。
 その後の対処は、もちろん人命に関わることが第一ではありますが、過去を知るための資料も、失われれば二度と入手することができない大切なものです。
 わたしはもともと被災文書の救出ということに興味を持っていましたが実際に経験する機会がなく、今回は何かできることがあるだろうかと思っていました。そこへ、神奈川大学日本常民文化研究所の「気仙沼市大島の漁業協同組合の文書救出ボランティア」という機会がめぐってきたのでした。
 5月13日から31日まで行われた作業のうち、わたしが参加したのは5月20日から23日までの第3班の活動です。それぞれの班で活動内容は違ったようなので、すべてについてお知りになりたいかたはこちらをご覧ください。
→気仙沼資料保全の記録 >http://d.hatena.ne.jp/jouminbunka-1/  

気仙沼市大島の資料救出

  作業の様子(クリックで拡大)

 気仙沼市大島は、気仙沼港からフェリーで30分ほどのところにある島です。今回の津波により「島が二分された」というニュースなどでご記憶の方も多いと思います。その大島に着くまでに、たとえば気仙沼駅からフェリー乗り場へ歩いていく間に見た2階だけきれいに残っている家や、ある地域から急に見通しがよくなってしまう町の様子、フェリーに乗って通った工場地帯の石油備蓄タンクがひっくり返っているさまや、大島の山のある部分だけが茶色く変色している様子(後で聞いたところによると、気仙沼から飛び火して、消火が実にたいへんだったそうです)などに、テレビなどの映像で見るのとは比較にならないほど衝撃を受けました。フェリー自体も、広島県江田島から借りてきた船だそうです。降りた港にも瓦礫の大きな山が築かれていました。港の先の陸地には本来使っていたフェリーが打ち上げられてあり、傷はないから海にもどせれば使えるのだと、後でうかがいました。
 作業場所の漁業共同組合の建物は港の一画にありましたが、その建物のまわりにかつて何があったのかなどはまったく想像がつかないような状態になっていました。建物のなかも、元の状態がわからないくらいぐちゃぐちゃになっていましたが、3班目だったので被災直後の状態よりずっとましになっていたと思います。

 最初の作業は2階の床に積もったガラスなどのごみと泥を除くこと。床にたくさん赤い花びらのようなものが落ちていたので、飾っていた花がちらばったのかと思っていましたが、天井近くのパーテーション上部に引っかかっていた湿り気のあるものを見て、ようやくそれが海藻であることに思いいたりました。2階は四方がガラス窓だったのですが、海に面した方とその反対側のガラスがすべて割れてなくなっていたのに対し、そうでない側はさほど割れていないのを見て、津波の破壊力を思い知らされました。

気仙沼市大島の資料救出

海水に濡れた資料(クリックで拡大)

 さて、実際の主な作業は海水に濡れてしまった資料を乾かし、カビを抑えるためにエタノールを吹き付けるというものでした。乾かすために、新聞紙・タオル(シーツ)を敷いた上に資料を広げ、頁を一枚一枚めくって風を通し、濡れがひどいものにはキッチンペーパーをはさみます。すでに発生しているカビで見事なまでに色あざやかになっている資料もありましたが、そのようになってしまったらエタノールをいくら吹き付けてももう元には戻らないと教わりました。
 夜には、その日の作業の反省と翌日の予定の打ち合わせ(ミーティング)があり、その後の時間で簡単に、先生から大島の歴史や人物についての解説がありました。この解説があったおかげで大島や自分の扱っている資料についての理解が深まり、作業に励みが出ました。
しかし、厖大な量の作業に加えて、作業後の資料に再カビ発生という事態もあり、本当にこの処置でよいのかという迷いから、役に立つことをしているのだろうかと途方にくれたというのが正直な感想です。最終的には、すべての資料を奈良文化財研究所で真空冷凍乾燥を行った後に地元に戻して保存する、ということになったそうなので安心しました。

 ボランティアというのはむずかしいということを、心から感じました。よかれと思ってやったことが、必ずしもよい結果を残すとは限らないということです。期待してくださった地元の方たちに申し訳ない気持ちになります。生半可なことで手を出してはいけない――それでもやはり、しないよりはできることをしたほうがよいとも思うのです。ですから、ふだんから少なくとも自分の専門に関わる部分の知識は、持っておくべきだと感じました。このような体験ができたことに感謝しています。

(注)「神奈川歴史資料救出保全ネットワーク(仮称)」設立への動きを伝える新聞報道(『神奈川新聞』2011年7月8日p1)でも、この神奈川大学日本常民文化研究所の活動が紹介されました。

(県立図書館職員 図書課の新古米)