『トンボの不思議』 新井裕著

『トンボの不思議』 新井裕著 丸善出版 2013年 資料番号:81578957 請求記号:486.39/10 OPAC所蔵検索

 虫に興味を持った子どもたちの影響で、最近、昆虫を間近で見る機会が増えました。
 夏には虫捕りにつきあってセミやチョウやトンボ、バッタやカマキリをたくさん追いかけました。そんな時に見つけたのが本書です。トンボを何種類かつかまえたり見かけたりしていたので、身近に感じて手に取りました。
 著者は埼玉県農林部の研究職員を長年勤めたあと、現在は里山保全活動をされている方で、トンボ愛好歴40年、「トンボを見ているのが飯より好き」というほどのトンボ好き。誰もが知っているわりにその生態についてはあまり知られていないトンボの魅力を私のような“超”初心者にもわかりやすく教えてくれます。
 最初に、トンボに関するイエス・ノー・クイズが掲載されています。例えば、
Q.トンボには耳がある
Q.日本で見られるトンボは約50種である
Q.トンボの幼虫は水草を食べている
 みなさんはおわかりですか?答えは3問とも「ノー」。トンボ初心者の私は、掲載されている15問のうち、半分も正解できませんでした。
 トンボは、幼虫時代は水中に住み、成虫になると大空を飛び交いながら地上で暮らす生き物で、南極や北極を除いてほぼ世界中に住んでおり、世界で6000種ほどが知られ、そのうち日本では約200種が記録されているそうです。
 幼虫はエサを食べて大きくなりますが、成虫になるとそれ以上は大きくならない、ということを初心者の私は知りませんでした。少し前に、小さなトンボを見て「子どものトンボがいる」と言った息子に、「ほんとだね」と返事しましたが、間違っていました。
 シオカラトンボはオスだけが白い粉を吹いた体色になること、それも成熟につれて白い粉を吹くことも初めて知りました。旅行先できれいに粉を吹いたシオカラトンボを見かけて、「やっぱり自然が豊かなところに住んでいるトンボは神奈川のトンボより色がきれいだな」と思ったのも、もしかしたら成熟の度合いが違っただけなのかも…。
 他にも様々なことが紹介されています。特に、俗に「ヤゴ」と呼ばれる幼虫については、昆虫研究者の研究テーマになることは少なく、トンボ愛好家の間でもそれほど関心を持たれないらしく、ヤゴの研究書はもちろん入門書も多くないのだそうです。本書で紹介されるヤゴの生態は貴重な情報かもしれません。
 生態の謎を解くための観察の話も散見され、相当な時間と労力が費やされたことがわかります。好きだからこそできること。著者のトンボへの愛をたっぷり感じました。
 本書は、幼虫時代の暮らしを紹介する水中編と、成虫時代の生活を描いた空中編に分けて構成されています。関東の都市周辺でよく見かけるトンボ30種類の見分け方も紹介されています。図はありますが写真は掲載されていないので、図鑑のような使い方をすることは難しいですが、図鑑と一緒に読んでみるとトンボへの理解が深まり、親しみもわいてくるのではないでしょうか。

(県立川崎図書館職員 トンボが好きになりました)