「専門家に資料を学ぶ 天体☆」研修報告

国司真氏 2013年は2月のロシアの隕石落下に始まり、パンスターズ彗星やアイソン彗星など天文現象が目白押しです。最近では宇宙に興味をもつ女性を指す「宙ガール」という造語がうまれるなど人々の天文への関心が高まってきています。
 県立川崎図書館では11月に「専門家に資料を学ぶ」を開催しました。「専門家に資料を学ぶ」とは館内整理日に、当館の蔵書や専門分野の資料について専門家の視点から評価やアドバイスをしていただく職員研修のことです。
 通算で4回目となる今回のテーマは「天文」。講師に「かわさき宙と緑の科学館」の学芸員の国司真さんを迎え、当館の天文に関する資料をご覧いただい後、その印象や資料の紹介、アドバイスなどをお話いただきました。
 まずは当館が所蔵する天文に関する資料のチェックです。先生は普段から図書館をよく利用するそうで、書架を見る姿はなれたものです。
 「この本の○○先生は××にお勤めで、専門は□□~」と背表紙に書かれた名前を見ただけで、流れるように著者の経歴や研究内容がでてきます。先生は職業柄、質問を受けることがよくあるそうです。正確に応えるために調べることや、専門外の質問だったときに他の研究者を紹介することもあるので、どんな本がありどんな研究者がいるのか普段からアンテナをはっているといいます。
その後も科学技術室からやさしい科学コーナー、書庫の本、辞典類、雑誌、に至るまでじっくりと見て回り、研修が始まる頃にはブックトラックが先生のピックアップした資料で埋まりました。
研修は科学技術室の天文学の書架の前で行われました。先生はプラネタリウムでの案内のような穏やかな語り口で本を手に取りながら説明してくれました。
 図書館や博物館、科学館などの社会教育施設にはいろいろな人がやってきます。「幅広く」、「より深く」、「極めるため」と利用者の理解度によって求めるもののレベルも変わってきます。すべての要求に応えるために、社会教育施設はいろいろな引き出しを用意しておくべきだといいます。 
 そのなかでも専門的なレベルになってくると、普及している一般書ではなく専門書が必要になり、論文を執筆する際など過去に遡って調べることもあるので、古いものから最新のものまですべて揃っていることが理想だといいます。
 年鑑・年報といった資料は天文学においては大事になってくるそうで、最新のものが必要だといいます。例えば、国立天文台が編纂している『理科年表』(国立天文台編纂、丸善出版)に掲載されている北極星の距離は1985年版では「800光年」、1986年版では「400光年」と書かれています。これは一年間で北極星がアインシュタインもびっくりの大移動をしたわけではなく、測定の精度があがったことにより数値に変化がおきました。
 事典類は出版社や編纂者によってそれぞれ特色がでてくるそうです。いくつかの事典の編纂の違いについて解説していただきました。事典類は最新の情報が掲載されているものだけでなく、歴史的な事項を調べるうえで古いものも必要になってくるということでした。例えば『星百科大事典』(R.バ-ナム.Jr著、地人書館出版、1984年)は基本となる資料で、天文学者が論文を書くのによく参照していたそうです。
 雑誌は最新の情報を知るだけでなく、バックナンバーで過去の情報を知る際にも使うことができます。現在休刊している「月刊天文」の継続前々誌である「天気と気候」を1934年に刊行された第一巻から所蔵しているのはすごいとお褒めいただきました。「日本天文学会 講演予稿集」は現在日本でどのような研究をしている学者がいるのか把握するのに役立つそうで、いままで意識したことがない使い方だったので目から鱗が落ちました。代表的な一般向け天文雑誌である「天文ガイド」と「星ナビ」(未所蔵)の違いも教えていただきました。
 天文の資料に関してはプロではないアマチュアが書いた資料が数多くあります。そういう資料のなかにはしばしば間違いがあるそうです。しかし、良書も多く存在します。○か×で決まらないこともあり、読者側が前後の文章を読み判断することが必要になってくるといいます。
 最後に質疑応答の時間が設けられました。そのなかで「最新データと違う古い本のあつかいについて」という質問がでました。先生は、歴史のなかで数値がどのように移り変わってきたのかということが大事になってくるので、古い資料も必要だと回答してくれました。現在とは違うものも「間違いではなくその時代の答え」と表現していたのが印象的でした。その他に天文系の出版社の特色などについてもお話して頂きました。
 宇宙が広がりつづけるように、図書館の資料も日に日に増えていきます。今回の研修を通して、星の数ほどある資料のなかから自分の目では気づくことができなかった光り輝く資料の数々を先生の案内でみつけることができました。

(県立川崎図書館職員:さそり座の女ではない)