県立図書館特別展示「友好の大旆(たいはい)とマリア・ルス号事件」の開催

展示会場の様子 神奈川県立図書館では、特別展示として12月1日(土)から12日(水)まで「友好の大旆(たいはい)とマリア・ルス号事件」を開催します。

 展示の主役は「大旆(たいはい)」と呼ばれる大きな旗です。今回展示するのは、明治6(1873)年に当時の神奈川権令(現在の県知事に相当)だった大江卓に贈られたもので、大きさは縦349cm×横188cmになります。これだけ大きなものを展示するとなると、通常の展示コーナーではとても収まりません。そのため今回は会議室が会場となりました。
 しかし、この大旆を会議室に運び入れるだけでも大変です。桐箱に収められた状態の大旆を新館書庫の5階から本館1階の会議室まで運ぶのは、途方もない道のりに感じられました(業務用のエレベーターにぎりぎりで入るのが幸いです)。
 さらに貴重な大旆を剥き出しで展示する訳にもいきませんから、特注の展示ケースに収めます。この展示ケースの組み立ても容易ではありません。折り畳んである木枠を広げ、ネジで止めたら中に大旆を収めて、上からアクリル板をかぶせ…手順は簡単に聞こえますが、何しろ大きなものを扱うのでひとつひとつの作業が一苦労です。特にアクリル板に傷をつけないように慎重に作業を進めていきます。
大旆に施された刺繍 苦労して広げた大旆は、赤い布地に色鮮やかな刺繍が施され、しみじみと見入ってしまいます。金泥で記された文字は時間の経過と共に色を失いつつありますが、一見の価値があると思います。

 大旆は、「マリア・ルス号事件」の解決に尽力したことへの感謝の顕れとして、横浜の在日中国人の団体である中華会館が、大江ともう一人の功労者である外務卿副島種臣へそれぞれ贈ったものです。このうち大江卓宛の大旆は、伝記には「鶴見の総持寺に納めた」と記されていますが、一時所在が不明とされていました。しかし昭和34年5月15日に子孫の方から当館へ贈られました。一方、副島種臣宛の大旆は家宝として保管されていましたが、昭和30年2月16日に孫の副島種経氏から当時の内山神奈川県知事に教育資料として贈られ、当館の所蔵となりました。
 この2旒の大旆は昭和48年に新設された県立文化資料館に移管され、節目の展示には県民の皆様の目に触れてきました。その後、平成5年の県立公文書館の開館に伴い移管されていましたが、平成24年当館に再び戻されました。
 副島宛の大旆は、今回パネルでのみご紹介します。大江宛ての大旆と違って、赤地に金文字と金の枠が刺繍されただけの厳粛な作りです。

 ところで、そもそも「マリア・ルス号事件」とは何でしょう。これは明治5(1872)年6月横浜港に入港したペルーの帆船マリア・ルス号で奴隷状態にされていた清国人の苦力(くーりー)を、外務卿副島種臣の指示を受けた神奈川権令大江卓が、県庁内に特別法廷を開き、裁判を行って解放した事件です。
今回の展示では「マリア・ルス号事件」の裁判記録である、『秘魯國マリヤルヅ舩一件』(神奈川県編・発行 1872)や『白露國馬厘亜老士船裁判略記』(G.W.Hill著 神奈川県 1874)などの資料と事件の解決に尽力した、大江卓と副島種臣に関する資料などをご紹介いたします。

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(県立図書館職員:マリア・ルス展担当)