「子ども読書活動推進フォーラム」を開催しました。

清水眞砂子先生

  清水眞砂子先生

 秋の好天に恵まれた10月27日(土)の午後、横浜駅西口のかながわ県民センター ホールにおいて、「子ども読書活動推進フォーラム」を開催いたしました。

 講演の講師としてお招きしたのは、清水眞砂子先生。『ゲド戦記』でそのお名前をご記憶の方が多いかもしれませんが、先生は児童文学の評論も多数執筆しておられます。児童文学を批評的に見る視点を提示し、深い理解へと導いてくれる論考は、子どもの読書に関わる人たちに多くの示唆を与えてくださっています。
 講演に続く事例発表では、県内で長く活動を続けているボランティアグループ「相のおはなし会」(相模原市)「おはなしころりん」(秦野市)の皆さんと県立鎌倉高校図書委員会の生徒さんたちにご参加いただき、ストーリーテリングや読み聞かせを実演いただくというプログラムでした。

 さて当日。スタッフは午前中から会場入りしましたが、掲示の準備、受付の手順確認などをするうちに、あっという間に時間が過ぎていきます。気が付くともうリハーサルの時間! 事例発表をしていただく皆さんには、普段とは異なる環境(図書館のおはなしの部屋のような空間ではなく、200人規模のホールです!)で語っていただくので、リハーサルを行うことにしていたのです。発表者の方たちと一緒に、椅子の位置、マイクの響き具合などを確認していきます。ここで、発表者の皆さんの経験に大いに助けられました。後方の人まで舞台上がよく見えるように椅子の並びが互い違いになるようにしたり、集中して聴けるよう、照明を暗くしたり…。“語り”をするのによいとはいえない環境のなかでも、少しでも聞き易く、心に残るものになるようにアドバイスしてくださいました。
 そして、次は清水先生をお迎えする時間です。実は、直接お会いするのは当日が初めて。写真でお顔は存じ上げているものの、ちょっぴり不安に思いながらお待ちしていたところ…、凛としたお姿に、すぐ「あっ!清水先生」と声をおかけすることができました。

 ご講演のテーマは「“かわいい”ってなに?-子どもと子どもの本を考える」。
 今や日本は“かわいい”文化の発信地。しかし何でも“かわいい”で済ませてしまうことで、子どもの文化が追い込まれてしまうのではないか。先生はそんな危機感を持っていらっしゃるようでした。
 印象的だったのは、二つの桃太郎の絵本の比較です。同じく桃を割った瞬間を描きながら、一方は、育児絵本に描かれたつぶらな瞳の人形のような桃太郎、そしてもう一方は、手足を大きくのばし、その全身から「おぎゃー!」という泣き声が発せられているような、赤羽末吉が描く桃太郎。かわいいのはどちらでしょうか。学生にそう問いかけると圧倒的に前者を選び、後者には“気持ち悪い”という感想もあったそうです。ここから見えるのは、おとなしく言うことをきく子ども=かわいい子どもという見方です。そしてその“かわいい”という感覚は、子どもを「弱者」として囲い込む感覚です。子どもを「弱者」としていたほうが、大人は安定した立場に立てるのです。(「「良心」のいきつくところ-灰谷健次郎論」 『子どもの本の現在』所収)
 そして、子どもを弱者として閉じ込める状況は、子どもの投げかけや真剣さに、大人がしっかりと応えていない状況でもあるのではないか。人として生きていく基準となる「罪と罰」「善と悪」をきちんと伝えず、「かわいい」ものだけを与えることは、大人の犯罪なのではないか、という大きな問いを投げかけて講演がしめくくられました。

事例発表の様子

 事例発表の様子

 休憩をはさんで後半は事例発表です。高校生の初々しく爽やかな発表は、日ごろ、読み聞かせの活動をされている皆さんへの大きな励ましになったようでした。また、続くベテランの皆さんのストーリーテリングは、“声”のみで、あっという間に聴き手をお話の世界に連れて行ってくれるすばらしいものでした。豊かな方言の語りあり、子どもの時間を思い出させてくれるお話あり、そして物語をたっぷり堪能させてくれる作品あり。こんな“語り”に触れる機会をもっている子どもたちは、なんて幸せなのかと、ちょっぴりうらやましくなりました。

 ご参加いただいた方の多くが、日ごろから子どもや子どもと読書に関わる活動をされているだけあって、講演・事例発表ともに、皆さん高い関心をもってお聴きくださっていたのが印象に残りました。ご参加くださった皆さま、ありがとうございました。

(県立図書館職員:子ども読書活動推進フォーラム担当)