資料の傷みはこうして防ぐ(2)-保存箱

 「酸性紙」をご存じでしょうか。1980年以降、製紙の工程でにじみ止めの定着剤として「硫酸アルミニウム」を使用した紙のことです。硫酸アルミニウムが紙の中で加水分解して硫酸を生じ、紙を内部から崩壊させます。日本では1980年代に問題提起され、上質紙の大半が中性化されました。
「酸性紙」を使った本は、そのままにしておくと急激に劣化していきます。もともと紙は寿命が長く、250年以上とも言われていますが、酸性紙は早ければ20年で使えなくなるそうです。また、酸性紙の「酸」が隣接している資料にも移行し、他の資料をも崩壊させます。それを防ぐためには、専門業者による資料の「脱酸性化処理」が必要ですが、多額の費用がかかります。
県立図書館では、次善の策として、酸性紙を用いた本を厚手の中性紙で作った箱に収めることで、紙の劣化を遅らせ、隣接する本への酸の移行を防いでいます。紙質の良くない、昭和20年代までに発行された本は、だいたい箱に入っています。また、酸性紙以外でも、傷みが激しく、修理が困難な本を箱に入れています。
この箱を、「保存箱」と呼びます。

中性紙を切る

中性紙を切る

[保存箱の作り方]
1 本の縦・横・高さを採寸する
2 厚手の中性紙を寸法に合わせて切る
3 両面テープで貼りあわせて箱の形にする

貼り合わせる前の保存箱

貼り合わせる前の保存箱


本を入れて保存箱完成

本を入れて保存箱完成

 保存箱はそれぞれの本の寸法を測って作るオーダーメイドです。保存箱が大きすぎると、その中で本が動くため、本が傷む原因となります。小さすぎると本に余計な力がかかるため、これも本が傷む原因となります。大きすぎず、小さすぎず、ちょうどいい箱を作るべく、採寸には細心の注意をはらいます。
 また、利用の際に手をけがする人がいないように、端は全て角を丸くしています。そのまま並べてしまうと何の本だかわからないので、本のタイトルを背に貼り、請求記号を書いたラベルもちゃんと貼って、完成です。
 傷んだ本を優しく包み、守り、酸を吸収し、取り扱いに注意を要することを示す、保存箱は本の「服」なのです。平成22年度には、全館で約290冊分の保存箱を作りました。
 ちなみに、この保存箱の材料となる中性紙は、80cm×110cmという大きなもので、厚みもあるので、本の寸法にあわせて切るのは一苦労。しかも、1枚で保存箱4つ分くらいしか作れません。値段も普通の厚紙よりはかなり高額です。保存箱という服は生地もなかなか高級な素材を用いているのです。

(県立図書館図書課)