やさしい科学しんぶん  No.62(2012.9)

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生きている化石

   今から約150年前にイギリスの生物学者チャールズ・ダーウィンが書いた「種(しゅ)の起源(きげん)(1859年刊行)」という本の中に、「生きている化石」という言葉がでてきます。この言葉を最初に使ったのはダーウィンと言われています。
   化石というと恐竜の骨やアンモナイトなどを思い浮かべるかもしれませんが、今回は生きている化石について調べてみましょう。

■そもそも生きているのに「化石」っていうの?

   私たちが住む地球が誕生したのは約46億年前。地球誕生から約8億年後には生命が誕生していたと考えられています。それからたくさんの種類の生き物が誕生し、また、数回の大量(たいりょう)絶滅(ぜつめつ)もありました。生き物たちは、何億年もの長い間で、さまざまな進化をとげてきました。
   なかには、大量絶滅でもほろびずに、何億年前と同じ姿で現在も生きている生き物もいます。このような生き物を「生きている化石」といいます。発掘される化石では、生き物の色や形、どのように生息していたかなど正確にはわからないので、生きている化石は昔の生き物を知るうえで、とても重要な手がかりです。では、生きている化石には、どんな生き物がいるのでしょうか?


生き物が化石になるまでの過程、恐竜の暮らしぶりやなぜ絶滅したのかなどの、謎に迫ります。
『化石・恐竜の大研究』監修/冨田幸光 出版/PHP研究所 2009年 請求記号457

■絶滅したと思われていた古代魚シーラカンス

   1938年、南アフリカのイーストロンドンの沖合で、見たこともない魚が漁船の網にかかりました。学者が調べたところ、化石でしか知られていなかったシーラカンスと判明。シーラカンスは、約3億8000万年前に地球に出現し、約7000万年前に絶滅したと考えられていたので、生きたシーラカンスは奇跡の発見でした。
   その後の調査で、生きたシーラカンスは化石で発見されたシーラカンスと比べると、ほとんど姿が変わらないまま現代まで生きてきたことがわかりました。
   シーラカンスが生息する海底は、外敵が少なく、地上で起こっていた大量絶滅の影響もなかったので、今日(こんにち)まで進化せず、生存することができたのです。


ゾウの鼻はなぜ長い?という、ふと思った動物の疑問を50個わかりやすく解説。
『動物のはてな(はてなシリーズVol.2)』編/はてな委員会 出版/講談社ビーシー 2009年 請求記号480

■絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)に指定されたカブトガニ

   カブトガニは名前に「カニ」とついていますが、カニの仲間ではなく、クモやサソリの仲間です。そんなカブトガニが現在のような形になったのは、約2億年前。数十年前までは、瀬戸内海から九州北部の海にカブトガニは生息していました。しかし、海の埋め立てや環境汚染で、カブトガニの数がとても減り、環境省の絶滅(ぜつめつ)危惧(きぐ)種(しゅ)にも指定されました。2億年という長い間、いのちをつないできたカブトガニが、ほんの数十年で絶滅の危機にさらされています。現在ではカブトガニを守ろうとする団体が各地にあり、保護する取り組みが行われています。少しでも多くのカブトガニを未来に残せるように、われわれも海を汚さないようにしなければなりません。



小学生の男の子がペットショップでカブトガニを手に入れ、カブトガニをくわしく知るため、お父さんと調査の旅にでます。そこで知ったこととは?
『カブトガニ古代から未来へ』作・絵/佐藤ヒロシ 出版/佼成出版社 2004年 請求記号485

■哺乳類(ほにゅうるい)?爬虫類(はちゅうるい)?鳥類(ちょうるい)?とてもなぞめいたカモノハシ

   カモノハシはとても奇妙(きみょう)な動物で、発見されたとき「毛皮でおおわれているから哺乳類(ほにゅうるい)だ」「卵を産むから爬虫類(はちゅうるい)か鳥類(ちょうるい)だ」「くちばしとけづめがあるから鳥類(ちょうるい)だ」と学者の間で意見がわかれました。調べていくうちに、カモノハシは卵を産んで、お乳で育てる、ごく珍しい哺乳類(ほにゅうるい)であることがわかりました。諸説(しょせつ)ありますが、6500万年前から変化していないと考えられています。



『カモノハシのなぞ(月刊たくさんのふしぎ148号)』 文/羽田節子 絵/藤井厚志 出版/福音館書店 1997年 請求記号ZJ【※品切れ】

■ひみつの第3の目があるムカシトカゲ

   ムカシトカゲは、約1億4000万年前には生きていたとされています。恐竜でさえも絶滅したのに、ムカシトカゲが生き延びたことは驚くべき事実。なぜ生き残ったのかは、わかっていません。ムカシトカゲには、頭のてっぺんに第3の目「頭(とう)頂(ちょう)眼(がん)」とよばれる目があります。若いころには頭(とう)頂(ちょう)眼(がん)を確認できますが、成長すると皮膚(ひふ)に覆(おお)われ、見ることができなくなります。この目は光を感じとり、体内時計を調整しているといわれています。



『爬虫類(ビジュアル博物館 第26巻)』 監修/大英自然史博物館 出版/同朋舎出版 1992年 請求記号487

■雨ニモマケズ、風ニモマケズ 大量絶滅でもしぶとく残ったイチョウ

   植物にも生きている化石があります。イチョウがその一つ。イチョウのなかまは、約3億年前に出現し、種類もたくさんありましたが、今から数百万年前には絶滅してしまいます。しかし、一種類だけが中国で生き残りました。現在は、イチョウの種類は世界に1種のみです。



『植物のふしぎ(ポプラディア情報館)』 監修/小林正明 出版/ポプラ社 2011年 請求記号470

■ほかにもまだいる生きている化石たち

オウムガイ

約5億年前に出現。今日(こんにち)も深海でひっそり暮らしています。

『のんびりオウムガイとせっかちアンモナイト』 作・絵/三輪一雄 出版/偕成社 2006年 請求記号484


オオサンショウウオ

両生類(りょうせいるい)の中で、世界一大きいオオサンショウウオは、3000万年前に出現。

『川の王さまオオサンショウウオ』 編/広島市安佐動物公園 出版/新日本出版社 2007年 請求記号487


ジャイアントパンダ

実はパンダも生きている化石。パンダの祖先(そせん)の化石が800万年前の中国で見つかっています。

『パンダもの知り大図鑑』 著/倉持浩 出版/誠文堂新光社 2011年 請求記号489


チョウセンアカシジミ

オレンジの羽を持つチョウセンアカシジミは、天然(てんねん)記念物(きねんぶつ)にも指定されています。氷河期に日本に渡ってきたと考えられています。

『生きた化石のチョウ』 著/倉兼 治 出版/大日本図書 1990年 請求記号486



   今回のしんぶんで紹介した生きている化石は、ほんの一部です。実はわたしたちの身近なところにも生きている化石がいるんです。みんなが嫌いなあの昆虫、ゴキブリ!恐竜と同じころに誕生し、現代までほぼ姿を変えずに生きているゴキブリは、実に3億年の歴史があります。今度ゴキブリを見かけたら、「歴史ある昆虫」というあたたかい目でみてあげてください。最後がゴキブリの話題になってしまいましたが、また次号お会いしましょう。