やさしい科学しんぶん  No.56(2009.7)

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■自然エネルギーってなに

  アメリカのオバマ大統領はグリーンニューディール政策をかかげて自然エネルギーを広めようとしています。今回はその自然エネルギーを広めるためのとりくみをしている環境エネルギー政策研究所の方に、自然エネルギーについて話を聞きにいきました。
  また、自然エネルギーの新しいとりくみ、地中熱(ちちゅうねつ)を利用している川崎市の南河原(みなみかわら)こども文化センターを見学してきました。

Q:自然エネルギーってなんですか?

  私たちの今のくらしはたくさんのエネルギーを使うことで成り立っています。家の中では電気、ガス、水道でたくさんのエネルギーを使っているし、ほかにも車や電車などの乗りものや、パソコン、ゲーム機もエネルギーがなくては動かせません。そして、エネルギーをたくさん使うことによって、私たちの今のくらしはゆたかで便利になってきたのです。
  そうしたエネルギーのもとの大部分は石炭、石油、天然ガス、原子力ですが、自然エネルギーはそれらとはちがって、地球上のいたるところにある資源を利用して手に入れることのできるエネルギーのことです。たとえば、太陽の光や熱、風の力、地熱など自然のものから手に入るエネルギーのことを指しています。

Q:石油や石炭のようなエネルギーとはどうちがうのですか?

  石油や石炭はいつかはなくなってしまいます。石油はあと約40年、石炭はあと約130年たったらなくなるとも言われているけど、太陽はあと約50億年は今のままです。ほかのかぎりあるエネルギーにくらべて、自然のサイクルのなかでかぎりなくくり返し利用できることから、再生可能エネルギーとも呼ばれます。

Q:今注目されているのはどうしてですか?

  今地球温暖化の影響で、いろいろな困ったことが起きています。今後100年間で北極や南極の氷がとけて海水面が今より約1m上昇すると、太平洋の小さな島国では土地のほとんどが海に沈んでしまいます。こうした気候の変化によって、洪水や干(かん)ばつが起きたり、農作物がとれなくなったりと、私たち人間をふくめた地球上の生物が影響を受けます。
  そうした温暖化の大きな原因は石油や石炭を燃やすときにでる二酸化炭素(CO2)です。しかし、自然エネルギーは、二酸化炭素を出さないので、地球温暖化を防ぐのにとても役立つ地球にやさしいクリーンなエネルギーなのです。
  また、石油や石炭は取れる場所がかぎられています。たとえば、石油は日本ではほとんど取れないので、外国からの輸入に99%以上頼っていますが、太陽の光の強いところでは太陽光(たいようこう)発電(はつでん)とか、風の強いところでは風力(ふうりょく)発電(はつでん)とか、自然エネルギーはどんなところでもそれぞれの場所に適した(自然条件に合った)エネルギーを使えるので、自分たちの使う分を自分たちでまかなうことができます。

Q:もっと自然エネルギーを広めて、地球温暖化を防ぐためにはどうすればよいですか?

  太陽光や風力の発電量は日本ではまだ約1%に過ぎません。自然エネルギーをつくるためには、今は手間もお金もかかるのです。しかし、石油などのエネルギーに頼っている社会のしくみを変えていくことで広めていくことはできます。海外では、社会のしくみやお金の流れ、くらしかたを変えてきたことで、ドイツが太陽光発電の世界一に、アメリカが風力、地熱(ちねつ)発電(はつでん)の世界一になりました。また、日本でも、岩手県の葛巻町(くずまきまち)では風力、太陽光などで町の電力の約80%をまかなっています。

Q:私たち一人ひとりに今できることはなんですか?

  まず、エネルギーの使い方を見直して、むだをなくしていくことです。テレビや部屋の電気をつけっぱなしにしないとか、クーラーの温度を下げすぎないなど、日常生活でできることはたくさんあります。
  また、自然エネルギーについて、もっとよく知ることも大切なことです。太陽光発電や風力発電をおこなっているところに見学に行くのもいいと思います。
  私たち環境エネルギー政策研究所は、自然エネルギーを広めたり、省エネルギーが進んでいったりするように社会のしくみをつくることにとりくんでいます。みなさんも、この地球を将来に残していくために自然エネルギーに興味を持って、さらに温暖化防止の活動にとりくんでもらえたら、と思います。

(取材協力:環境エネルギー政策研究所 入江理沙さん、山下紀明さん、ほかインターンの学生の方たち)

■まとめ

■自分で調べてみよう

・自分の家の中でどれくらい電気が使われているか、調べてみよう。
(参考)「環境家計簿」(家庭のエネルギー使用量をチェックできます。)

・自然エネルギーを利用している身近な施設、建物を探して、できれば見学に行ってみよう。

■地中熱を利用したエアコン-自然エネルギーの新しいとりくみ

  電気は夏にいちばんたくさん使われます。家の中でエアコンが使われることが多くなるからです。でも、地中熱という自然エネルギーを利用して、ふつうよりも電気を使わないエアコンがあるのを知っていますか?その研究にとりくんでいる施設を見学してきました。
  そこは南河原(みなみがわら)こども文化センターで、JR川崎駅から歩いて10分ほどの川崎市幸区にあります。ここで川崎市環境局とJFE鋼管、JFEスチールという二つの会社がいっしょに地中熱エアコンの研究にとりくんでいます。
  地中熱といっても熱いわけではありません。深さ5mぐらいから下の地中の温度は1年をとおして約15度で一定です。それをエアコンに利用します。

  ふつうのエアコンは、外の空気を利用します。夏の冷房では、家の中の熱をうばいとり、外の空気に逃がします。逆に冬の暖房では、外の空気から熱をうばいとり、家の中に出します。 これに対して、地中熱エアコンは、夏の冷房では外の空気より低い温度の地中に熱を出し、冬の暖房では外の空気より暖かい地中から熱を取り出すことができます。

地中熱エアコンとふつうのエアコンをくらべると

(※ヒートアイランドとは、エアコンからの熱い風などによって都市が高温化すること。)

  家を建てるときに深い穴を掘らなくてはならないので、お金も手間もかかります。でも、地球にやさしいエアコンなので、この研究がうまくいくと将来みなさんの家にもつけられるようになるかもしれません。この場所を見学して、話を聞きたいときはここに連絡してください。

TEL 044―522―3286 川崎市環境技術情報センター

(取材協力:川崎市環境局 井上さん、JFE鋼管 君塚さん、小間さん 橋爪さん、JFEスチール 坂本さん 林さん)

県立川崎図書館1階のやさしい科学コーナーがおすすめする
「自然エネルギー」 のことがわかる本

◎環境エネルギー政策研究所 山下紀明さんのおすすめの本

『調べてみよう エネルギーのいま・未来』(岩波ジュニア新書444)
槌屋治紀/著 岩波書店 (請求記号501)

  「エネルギー」というと何かむずかしく思うかもしれませんが、毎日のくらしの中に必ずあるものです。この本は、私たちの身のまわりにある身近なエネルギーのことから、未来のエネルギーについてわかる1冊です。

◎自然エネルギーがよくわかる本

『地球温暖化と自然エネルギー』(いますぐ考えよう!地球温暖化 3)
田中優/著 山田玲司/画 岩崎書店 (請求記号451)

  日本の各地ではどんどん自然エネルギーの発電施設がつくられています。実際に使われている自然エネルギーを見ながら、私たちが未来の地球にできることを考えます。

『エネルギーの本』(考えよう地球環境 6) 
住明正/監修・山地憲治/執筆 ポプラ社 2004年(請求記号519)

  現在のままエネルギーを使いつづけると、地球はどうなるか。わたしたちのくらしとエネル ギーの関係を理解し、エネルギー問題の解決にむけてひとりひとりができることを考えます。

『「クリーン発電」がよくわかる本』
山本良一/監修 東京書籍 2005年(請求記号543)

  今、私たちが住んでいる地球はどんな状態にあるのでしょう?まず、地球の現状を知り、なぜクリーン発電が必要なのか。クリーン発電の基礎知識をわかりやすく解説。

近刊のお知らせ

◎夏休みの宿題の参考になる本

『科学工作図鑑』1巻エコパワー 2巻メカパワー 3巻光パワー
立花愛子、佐々木伸/著 いかだ社 (請求記号 507)

  作るのも楽しい、でき上がって遊んでも楽しい、そんな工作がたくさんのっています。夏休みにぜひ作ってみては?