サイエンスカフェ結果報告(2009年度第4回:通算第19回)
ニセ科学の見破り方~危ない健康情報を見分けるコツ~
| テーマ | ニセ科学の見破り方~危ない健康情報を見分けるコツ~ |
|---|---|
| ゲスト | 小内亨(おないとおる)さん(おない内科クリニック院長) |
| 日時 | 2010年2月21日(日曜)午後2時~4時 |
毎回好評をいただいているテーマ「ニセ科学」ですが、今回も200名を超えるご応募をいただきました。なるべく多くの方に聴いていただくために、今回もテーブルをなくして椅子のみの座席配置とさせていただきました。会場が窮屈になり申し訳ありませんでした。
今回のゲストは内科専門医として開業するかたわら、「健康情報の読み方」というインターネットサイトを開設され、巷にあふれる健康関連の情報をどのように判断すべきかについて情報発信している小内亨さんにお越しいただき、健康情報を見分けるコツを解説していただきました。
〈あるある大事典の教訓〉
フジテレビの健康バラエティー番組「発掘あるある大事典2」の捏造問題を振り返りながら、その教訓を考えます。番組で「納豆ダイエット」が取り上げられ、捏造であることが発覚しましたが、小内さんは新聞のテレビ欄で見たときから怪しいと感じて録画していたそうです。
「納豆ダイエット」の根拠とされていた米国の論文は、そもそも平均71歳の男女の体脂肪減少効果を調べたものであり、体重が減ったとは書かれていません。また、(納豆に含まれるという)イソフラボンを摂取するとDHEAが増えると米国の研究者が言っているのは勝手に吹き替えた捏造でした。このほかにもたくさんの捏造があり、番組は打ち切られたのですが、どうしてこのようになったかというと、納豆でダイエットができるという構成で制作しようとしたために、架空のデータや情報をつなぎ合わせて番組を作ってしまったわけです。
こうしたテレビ番組などによる情報操作は「あるある大事典」に限ったものではありあません。NHKの「ためしてガッテン」で放送された「たまねぎで血液サラサラに」という例もその一つです。そもそも、紹介された血液サラサラの画像は血液にたまねぎのエキスを加えたもので、たまねぎを摂取したあとの血液ではないのです。
こうしてみると、マスメディアから提供される健康情報には次のような点で、バイアス(偏り)がかかっていると思わなければいけません。
- 重要性より話題性が重視される(視聴率、販売部数重視)
- 伝えたいことを伝える(都合の悪いことは伝えない)
- スポンサーの意向に反した情報は提供しない。
〈ダイエット広告の見分け方〉
テレビ以外にも、新聞の折込チラシも問題があります。とあるダイエット広告のチラシはでっち上げだらけだということを公正取引委員会が調べ上げました。しかし、作る方は簡単で、調べる方はかなりの時間と労力を使います。また、こうした会社が公取に指摘を受けて止めても、また同じ人間が別の会社を起こして始めるといった、いたちごっこになっています。行政で取り締まってもらうのを期待するのは難しいので、自分の目で確かめる必要があります。
ダイエット食品使用前、使用後の写真もコンピュータグラフィックで簡単に作れます。しかし、その場合膝の幅を見るとよくわかります。本当のダイエットでは膝の幅はほとんど変わりません。ダイエットに王道はありません。
油の消化、吸収を減らすというサプリメントの広告では、コップの中でサプリと油が固まって沈殿するという実験がよく行なわれていますが、コップの中で起こることが身体の中で起きるとはいえません。
ダイエット効果が科学的に証明されたサプリメントはほとんど無いといってよいでしょう。(エフェドラというサプリがダイエット効果があると証明されたことがありますが、アメリカで100人以上の死亡例があります。)
ダイエット効果を調べるにはきちんとした実験をしなければなりませんが、注意しなければならないことがいくつかあります。
まず、ホーソン効果といって、実験の対象になっただけで効果が上がります。納豆を食べて体重が減ればテレビに出られると思えば、それだけで痩せようとするでしょう。
次に、セルフモニタリング効果といって、体重を記録するだけで減ることがあります。
〈体験談〉
宣伝、広告のテクニックとして体験談がよく使われます。「使った、治った、効いた」という論法ですが、心理的効果や自然の経過で治ることもあります。また、慢性の病気は回帰現象といって自然に良くなったり悪くなったりします。健康食品が効いたとはいえない場合があるので、自分ではっきりした判断基準を持たないといけません。
〈抗酸化神話〉
抗酸化サプリメントを摂取すると老化防止になるということが言われていますが、そうしたサプリメントのひとつのβカロテンは二重盲検(治験薬の薬効を客観的に調べる臨床試験の方法。多数の患者に調べたい薬と偽薬とを投与し、だれにどちらを与えたかは患者にも医師にもわからないようにしておき、結果を統計学的に判定する。…デジタル大辞泉より)を行なった研究の結果、死亡リスクが上昇するという報告が出されています。ビタミンAやEでも同じような結果が出ています。
また、別の抗酸化サプリメントのコエンザイムQ10については、人を対象にして死亡率の低下を証明した研究は見つかりませんでした。コエンザイムQ10は摂取しなくても身体の中で自然につくられるものなので、補給しなくてもよいのです。
このように考えると、抗酸化サプリメントについては、もっといいデータが出るまで使うのは待った方がいいと思います。
〈足らないから補充する?〉
補充療法という考え方があります。例えば、糖尿病ではインスリンの分泌不足により血糖値が上がるので、補充することによって合併症を予防することができます。しかし、サプリメントについては、不足している事実があるのか、補充の効果があるのか、などをよく考えなければいけません。コエンザイムQ10を例に挙げると、それぞれの内蔵によって、増減の違いがあり、心臓では減るものの、肝臓や副腎ではそれほど変わりません。それは身体の中で必要に応じてつくっているからかもしれません。もしそうなら、むやみにサプリメントで補充する必要はないといえます。
また、医薬品とサプリメントは開発過程が違っていて、医薬品は開発、臨床試験、市場と様々な段階で検証、評価を受け、効果の無いものや、問題のあるものは排除されますが、サプリメントは開発後そのまま市場に出回り、安全性の検証はされず、医薬品のように効果が証明されて市場に出回るものではないのです。サプリメントに期待しすぎてはいけません。
〈代替医療〉
最近厚生労働省が統合医療を推進しようとしています。鍼灸やサプリメントなど、民間医療的なものの有効性を分析しようとしていますが、そうした動きには疑問を持っています。
そのことを検証している本を紹介して話は終わりにします。『代替医療のトリック』(新潮社)という本です。著者のひとり、エルンスト・エツァートは代替医療に関する科学的評価の論文を多数書いていて、信用できます。これにはホメオパシー、鍼灸などの民間療法、代替医療が、本当に効果があるか調査してまとめてあります。これを読めば、現在行なわれている代替医療の有効性はわかるので、厚労省の動きはいまさら必要なのかという気がします。
引き続いて、会場からは数多くの質問が寄せられました。主なものを挙げます。
Q:最近下火になりましたが、マイナスイオンをうたった電化製品があります。効果はあるのでしょうか?
A:いろいろ論文を調べたこともありますが、基本的には怪しいものだと思います。家電製品は「健康によい」という付加価値をつけると売れるので、営業上「マイナスイオン」に目をつけただけで、メーカーの人も本当に効くとは思っていないのではないでしょうか。
Q:何が健康によいかというのは時代とともに変化していますが、見極める判断基準はあるのでしょうか?
A:はっきり見分ける基準はありません。ただ、以下のようなことはいえると思います。
1.マイナス面とプラス面を両方出しているところは信用できます。
2.あることを断定的に言っている情報
3.極端に振れる情報(やればやるほどよい等)
4.特定の商品を推奨する情報(陰にスポンサーがいるかも)
2~4については一歩引いて考えた方がよいと思います。

休憩時間中も質問攻めにあう小内さん
Q:以前病気で手の握力が無くなり、大学病院の医師にも見放されたのですが、グルコサミンを飲んだら握力が回復しました。これはどういういうことなのでしょうか?
A:グルコサミンやコンドロイチンについては臨床試験も数多く行なわれていて、実は効果があるという報告もないこともありません。ですから効かないとは言いきれませんが、補充療法といった「足りないから補う」という発想では説明がつかないと思います。
他にもたくさんの質問、意見をいただきました。ありがとうございました。
参加者のアンケートから
・世の中の健康食品や食品添加物の誤った認識があふれていることを、常に思っていました。今日の話は全くその通りで、企業の全く根拠のない話で売らんかなというのは、世の中でだましている印象さえ持ちます。こういう話をどんどん知って欲しいと思う訳です。
・先生、皆の質問にかなりていねいにお答えくださってましたね。
・活発に意見交換ができて大変よかった。
・今回のお話はとても面白くためになりました。ゲストのお話が大変よかったので、実施時間がもっと長くてもよかったと思いました。質疑も活発で驚きました。
小内さんから
多くの方にご参加いただきありがとうございました。健康関連の話題はしばしばマスメディアで取り上げられますが、それらが常に科学的に正しいとは限りません。最初から信じ込んでしまうのではなく、「ちょっと待てよ」と自分自身で考えることが重要ではないかと思います。今回の私の話が、少しでも皆さんのお役に立てればと思います。


