県立図書館 利用者との懇談会 実施結果(平成28年3月)

平成28年3月、県立図書館では、日頃、県立の図書館をご利用いただいております皆様との懇談会を行いました。

当日、参加された県民の皆様のご意見は次のとおりです。どうぞ、ご覧ください。

県立図書館 利用者との懇談会「もっと県立図書館を知ろう!語ろう!」

・日時 平成28年3月12日(土) 13:30~15:55

・会場 新館4階セミナールーム

・参加者 一般参加者5名、県立図書館職員4名  計11名


〇館内見学 13:30~14:30

館内を、書庫等非公開エリアを中心に、県立図書館職員の案内により見学した。


〇懇談会 14:40~15:55

懇談会内容は、以下のとおり。(※[ ]内は発言者。発言の内容や順番は、発言趣旨を変えない範囲で、要約・整理した。)

[参加者1] 大学院修士課程を修了したが現在は大学に籍を置いていないため、大学の図書館は利用しづらい。そのため、高価な専門書や学術書はもっぱら県立図書館を利用しており、県立図書館の存在はありがたい。ただし、学術書などを読む利用者は、一般にはそう多くないかもしれない。

[参加者2] サラリーマンをリタイヤし、現在はボランティア活動などを行っている。その一つとして横浜市内の図書館で友の会の活動に関わっている。これは、横浜の読書環境を良くしたいとの思いで取り組んでいるものだが、横浜だけでなく県全体も考えなくてはいけないと思い、県立図書館のこの懇談会に、これまでにも参加している。
 しかし、この懇談会に出席して要望等を言っても改善されていない。また、つい先日には、県立図書館新棟計画についてPFI方式が最もよいとするコンサルの評価結果の提示があったとの報道に触れたが、PFIには問題が多いと考えている。
 いい街にはいい図書館があるというのが持論である。

[参加者3] 県内の他の図書館に勤務している。利用者の皆さんが図書館についてどのように考えているのか伺ってみたいと思い、自らの勉強のつもりで参加した。 県立図書館への要望としては、利用者が県立図書館で借りた資料を県内どこの図書館でも返却できるようにしてほしい。

[参加者4] 図書館は、人が文章として残したものを保存する機関だと思う。そこで、図書館は紙の資料のみを保存していく場所なのかどうか伺いたい。デジタル化すれば全文検索も可能となる。紙媒体の資料のPDF化や電子書籍の購入は行っているのか知りたい。県立図書館のHPに行けば、なんでも調べられるようなサイトにしてほしい。
 また、図書館の利用の仕方について、道徳教育がなされていないと感じることが多い。よく利用する地元の図書館でも、騒いでいる子どもや、ページをめくる音、咳など気になる事がしばしばある。マナーの悪い利用者に対しては、図書館の職員がもっと注意するようにして欲しい。

[参加者5] 図書館の休館日について、図書館に行けないと活字に触れられず、1日とて耐えられないほど図書館が好きな利用者にとって、県立図書館が年末年始に1週間も休館していることには耐えられない。現在、民間が運営している図書館には、休館日が無いところもある。とはいえ、週1日程度の休館日があることは当然だと思うので、県立図書館の場合、幸いすぐ近くに横浜市の図書館があるのだから、どちらかが開館していれば、そのような利用者は助かる。せめて横浜市と県の図書館とで休館日が重ならないように調整してほしい。


<電子書籍や資料の電子化について>

[県立図書館 ]当館は、紙の資料のみを扱っているわけではない。たとえば、昨年10月より「神奈川県行政資料アーカイブ」(*注1)を立ち上げ、県作成の電子資料を集めて公開、保存している。これは、全国に先駆けた取り組みである。
 一方、電子出版物については、著作権の問題や購入形態の問題(電子出版物の購入形態は、通常、利用する権利を購入するもので、保存が担保されない)など、図書館の資料として購入していくには、まだ課題も多い。全国のいくつかの図書館での導入事例があるとはいっても、実験段階といえる。なお、電子出版物の購入予算について、県に対し、概算を示して要望してはいる。しかし現段階では、予算があればむしろ、一般的な電子出版物の購入よりも、要望の多い技術関係等の電子ジャーナルやデータベースの契約などに振り向けたいと考えている。
 また、資料のPDF化については、国会図書館で進められており、それは当館でも閲覧できるようにしている(国立国会図書館 図書館向けデジタル化資料送信サービス)。当館では、国会図書館との役割分担を意識し、国会図書館では所蔵していないもの(=地域資料)に絞って取り組んでいる。先に紹介した「神奈川県行政資料アーカイブ」もその取組の一環である。

[参加者2] まず予算ありきでは、何もできない。基本的方向性を打ち出し、長期計画を立てると同時に、まずできることから取り組んでいくべきである。それらを示して県民にPRすれば県民の協力も得られると思う。多くの問題があることは認識しているが、躊躇せずにまずは動くという姿勢で取り組んでほしい。神奈川はデジタル化が遅れている。


<休館日について>

[参加者2 ]整理日が必要であることは理解できる。無休の図書館は、書架の整理がきちんとできていなかったり、整理のためにスタッフがサービス残業していて、ブラック企業との指摘も出たりしていると聞いている。ただし、民間だから年中無休にできるとするのは間違い。公営でも年中無休の施設はある。なお、(1日でも図書館が利用できないのは耐えられないとのことだが)近くの図書館、分館なども含めて探すと、開館している図書館はある。自分が利用するベースの図書館を決めつつも、様々な図書館を利用すれば、毎日図書館を利用することは可能なのではないか。
 県と横浜市で休館日をずらすのは容易にできることだと思う。

[県立図書館] これまでにも、月1回の館内整理日が重ならないようにするなどの調整はしているが、引き続き、検討課題として認識している。


<PFIや民間委託等について>

[参加者2] 新棟建設について、PFIのBTO方式(*注2)が最もよいとするコンサルによる評価結果が示され、これを踏まえて検討を進めると聞いた。PFIの事例は長崎市や桑名市、稲城市があるが、この方式のメリット、デメリットをきちんと精査したのか疑問である。事業期間は15年とのことだが、その後に継続性が担保されるのかなど、問題点をきちんと検討したうえで決定するようにしてほしい。2012年の神奈川臨調による方向性の提示の時のように、問題点ときちんと整理せず、公表後に各方面から指摘されて、すぐに公表内容を覆すといったずさんな対応は避けてもらいたい。

[県立図書館] コンサルの提案は尊重し、参考にするのはもちろんだが、決定ではない。検討会議はまだ終わっていない。

[参加者2] 現在、公共図書館の運営形態にはさまざまな形(PFI、PPP(*注3)、指定管理、業務委託、直営)があるが、民間に任せて、とてもよい図書館ができた例はない。民間は"儲け"が第一であるから、図書館にふさわしくない本を選書するなどの問題が発生している。公立の図書館は、直営で責任をもって運営すべきだと考える。学校教育は直営で行いながら、社会教育は民間に任せてよいとする姿勢は、憲法や社会教育法、図書館法などに照らしてみても考えられない。

[参加者4] 民間企業は、利潤追求を第一に考えるものであり、その理屈だけで選んだ本を図書館に入れているようでは困る。公営施設である図書館が「もうからない本」を持つことは大切だと思う。ただし、本をそろえただけでは本好きしかこない。飲食店や書店を同じ建物の中に入れるといった、民間が得意とする手法は魅力的である。公営と民営それぞれの良さを上手に組み合わせて運営していくとよいのではないか。

[参加者2] 飲食コーナーを作るなど、民間でなくてもできることはある。民間の手法をまねて工夫してほしい。


<返却場所について>

[県立図書館] 県立図書館で借りた本を、県内のどの図書館でも返却できるようにしてほしいとの要望については、当館として、将来的に実現したいと考え模索しているところである。ただし、特定の市町に返却が集中する可能性があることや、受取館の責任の範囲、個人情報の問題などクリアすべき課題はまだ多い。そこで、まずできることとして、宅配による貸出/返却ができるようにしている。


<利用マナーについて>

[県立図書館] マナーについての利用者同士でのやり取りは、確かにトラブルに発展する場合があり、注意が必要であると認識している。ただし、利用マナーについては、図書館だけで解決できる問題ではなく、家庭教育や学校での初等教育などとも関わってくることと考える。学校の教員にも、図書館の利用経験がないという人が少なくないことも関係があるかも知れない。

[参加者2] 横浜市では3年前から学校司書の配置を始め、今度の4月で全校配置となる。学校司書がいる環境の元で、図書館の利用マナーもきちんと学んだ子どもたちが育ってくることを期待したい。

以上


〇注

*注1)「神奈川県行政資料アーカイブ」http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/data_catalog/ 従来紙媒体で提供していた県の主要な行政刊行物のうち、県のウェブサイトで公表している、統計書、年報等(行政資料)の電子ファイル、統計データ等を提供するサイト。県立図書館および、県政情報センター、県立公文書館が連携して構築したもので、行政刊行物電子ファイルの網羅的かつ継続的な収集、一元的な保存管理、県民への提供を行う基盤として今後機能していくことが期待される。

*注2)PFI(Private Finance Initiative 民間資金活用事業)公共部門が担ってきた、社会資本形成を伴う公共サービスの提供を行う分野で民間事業者の資金、経営能力、技術力などを活用する手法。 BTO(Build Transfer Operate)PFIの主要な事業方式のひとつ。PFIを担う事業者は、施設を建設(Build)した後、その施設の所有権を行政に移管(Transfer)する。そのうえで、PFIを担っている事業者が、一定の事業期間中、当該施設の維持管理と運営(Operate)を実施する方式のこと。

*注3)PPP(Public Private Partnership 官民協働)従来、公共部門で行われていたサービス分野を、民間部門に開放、移譲すること。

(注2、3の出典:中邨章ほか著「行政カタカナ用語辞典」イマジン出版 2008年)