運営関係

県立の図書館の基本理念

神奈川県立の図書館は「知」を集積し、新たな「知」を育む「価値創造」の場として、神奈川の文化と産業の発展、社会づくりに寄与します。

沿革

2館について

関係法規

神奈川県立図書館条例(PDF73KB)

神奈川県立図書館組織規則(PDF189KB)

神奈川県立の図書館の利用等に関する規則(PDF143KB)

神奈川県立の図書館の利用等に関する規則施行規程(PDF221KB)

運営方針・事業体系図・事業計画

平成29年度 神奈川県立図書館運営方針

平成29年度 神奈川県立川崎図書館運営方針

収集方針

神奈川県立図書館資料収集要綱(PDF215KB)

神奈川県立川崎図書館資料収集要綱(PDF94KB)

数値目標・活動評価

神奈川県立図書館数値目標 平成29年度活動評価(平成28年度)

神奈川県立川崎図書館数値目標 平成29年度活動評価(平成28年度)

利用統計

神奈川県立図書館・県立川崎図書館 利用統計  平成28年度

所蔵統計

神奈川県立図書館・県立川崎図書館 所蔵統計  平成28年度

事業年報

神奈川県立図書館要覧 平成28年度 

神奈川県立川崎図書館要覧 平成28年度

平成29年度 第1回図書館アドバイザー・レクチャー実施結果

日時・会場

平成30年1月26日(金)14:00~16:00 於:県立図書館本館1階 多目的ルーム

アドバイザー紹介

○アドバイザー:専修大学文学部教授 植村 八潮 氏

 1956 年生まれ、東京電機大学工学部卒業。東京経済大大学院博士課程修了。博士(コミュニケーション学)。 1978 年東京電機大学出版局勤務、同局長を経て2012 年より専修大学文学部教授および(株)出版デジタル機構代表取締役に就任。2014 年出版デジタル機構取締役会長を退任。 現在、日本出版学会会長、納本制度審議会委員などを務める。専門は出版学で日本の電子書籍の研究・普及・標準化に長らく携わってきた。

【著書】

『電子出版の構図:実体のない書物の行方』(印刷学会出版部2010年)
編著として『電子図書館・電子書籍貸出サービス:調査報告2017』(印刷学会出版部2017年)
『ポストデジタル時代の公共図書館』(勉誠出版2017年)ほか。

○概要 「電子図書館の現状と読書環境の変化」

1.出版環境の変化

1-1.印刷出版物市場の推移

 出版業界の現状について出版業界紙『紙文化』に掲載の2017年出版界10大ニュースがわかりやすい。まず、トップニュースは「コミックス売上急落」である。 以前は雑誌が売れなくてもコミックス(コミック単行本)は売れると言われていた。マンガは連載ではもう読まない時代が来たのである。 しかし、昨年はそのコミックスが売れず、代わりに電子版のコミックが売れた。マンガ業界の利益としてはゼロサムであると言える。 これは電子版ができたのでコミックスが売れなくなったのではなく、海賊版の普及と大きく関係があると言われている。このことは後にまた述べる。 2番目の「深刻さ増す輸送問題」は雑誌やマンガが売れなくなったことと大きく関連する。書店は雑誌とマンガで利益を出し、取次や流通を支えてきた。 その売上が落ちるということは、書籍流通がもたなくなるということである。したがって書店ではなくアマゾンなどのインターネット注文に集中することになる。 しかし、3番目の「アマゾン、日販へのバックオーダー停止」にあるように、今まではアマゾンは在庫がないと小さい版元でも自動的に照会して在庫を確保していたが、 それをやらなくなってしまった。一般の本を買う人たちにとってはアマゾンなどに在庫がないと世の中に存在しないことになってしまうのが問題である。 また、外資のプラットフォームによって日本の組織流通が決定化してしまうという現状がある。
 4番目の「今年もM&A、倒産の動き」とあるが、M&Aはもっと加速しないといけないと思う。日本の出版社は小さなオーナーが多いのでM&Aがなかなかなかったが、アメリカのようにインプリントにしていくべきである。
 あとは、9番目の「丸善ジュンク堂」であるが、ここは3年間赤字で展開しており、借金を続けて全国化していた。大型書店は利益を上げるのが厳しいという事例である。 個人書店は本来なら利益が出るはずである。今後は小さな形態の経営も見直していくべきである。
 次に学校読書調査について言及する。この調査結果によると、小学生はとてもよく本を読むということがわかる。 また、「朝の読書運動」に行政が取り組むことにより、中学生の不読率が下がった。本を読まなかった子どもが本を読むようになる機会を得たよい例である。 雑誌については小学生のほぼ半数が読まなくなってしまったことが問題であるが、一因には今の大学生が小学校時代に「学年誌」があった最後の世代で、 それ以降「学年誌」がなくなってしまったことがある。雑誌というパッケージで多様なものの中から思いもかけない出会いや知りたいことを見つけるという雑誌リテラシーが身につかなくなってしまう。 検索をすることでコンテンツを得る時代だが、そもそも「検索キーワード」が思いつく知識や経験がなければ調べることはできない。その知識や経験を得る一つとして雑誌が担っているといえるので、小学生が雑誌を読まなくなった状況は危惧される。
 日本の出版販売額を見ると、コミックスと文庫の売上が落ちている。今後の収益性を考えると単価の値上げが予想される。 現在日本の単価は欧米と比べるととても安いが、欧米並みに近づいていくだろう。出版市場の売り上げをみると、出版不況がまた話題になりそうな落ち込みである。 雑誌が支えてきた出版市場が、ついに書籍と雑誌の売上高が逆転するまで雑誌の売上高が落ち込んでいる。 これは雑誌の問題ではなく書店、取次など出版界全体の産業構造そのものの危機であると捉えていただきたい。 また、最後の砦であったマンガについては、コミックスの売り上げが対前年比13%落ちた。これは海賊版サイトが蔓延していることによる。 海賊版サイトへのアクセスはコミックスや電子版利用の量とは桁外れに多く、若者が無自覚に犯罪に加担してしまっているケースが多い。そしてなかなか海賊版サイトをたたくことができない状況で、問題がある。

1-2.電子出版市場の推移

 電子書籍は第一世代、第二世代と捉えるとわかりやすくなるので、「電子書籍(1.0)」とした。これは出版物の電子化であると言える。 もともと紙の書籍を読んでいる人がディスプレイの電子書籍を読むという現状がある。 電子新聞のサービスはもっと顕著で、電子新聞のサービスが新しい顧客は生み出さない。 スマートフォンなどは次々と新しいサービスが生み出されているが、電子書籍(1.0)は新しいサービスではない。 ただ、電子書籍化したことにより、コンテンツとパッケージが分離したことは大きい。 紙の時代はコンテンツとパッケージは一体であったが、電子書籍化によって分離を意識できるようになった。 パッケージはコンテンツに影響を与えるので、分離したことによってもまたコンテンツに影響する。それ以前に、流通が変わった、入手方法が変わったのである。
 電子書籍市場は確実に伸びていて、7,8割は電子コミックであり、電子版においてもコミックが市場を支えていることに変わりはない。 紙と電子の両方を出版物とすると昨年の出版物販売金額の約14%が電子書籍である。
 電子書籍がなかなか流通しない理由の一つは、初回注文ロットがゼロであることである。専門書には注文が来ないので、作成コストがかなり下がらない限り専門書は採算がとれず電子化できない。 売れない電子書籍は扱いづらいのである。他にもアメリカでは電子書籍が売れなくなったと言われているが、 それはディスプレイ疲れや価格の問題だけでなくセルフパブリッシングのコンテンツの売上が市場統計にないので、 実は増えているという説もある。価格を下げれば売れるのではないかという意見もあるが、 紙の本より電子書籍の方が流通も紙も印刷もないので一見安くなりそうであるが、 電子書籍は汎用性が確保されず膨大なチェックにコストがかかるため、利益が出づらい。
 出版の流通基盤は垂直統合と言われる。出版社は電子書籍を作ったらプラットフォームにゆだねればよいので流通基盤の変化に対応できるが、 取次や販売がなくなってしまうのでなかなか電子書籍が扱えない。販売(書店)との関係ではドイツが好例である。 ドイツでは端末を書店でのみ購入できるようにし、売上がそのまま書店の利益となるようなシステムにした。 さらに書店員と顧客の関係が近く、書店員のリコメンドが強い。書店で端末を売り、店頭でダウンロードをするという形で電子書籍を書店で取り扱うのに成功したが、 日本の書店は電子書籍を取り込むことに失敗してしまった。
 また、図書、新聞、雑誌はパッケージが違うものであり、取扱う場所も異なっていたが、それが電子化されディスプレイ表示されることで区別が無くなってしまった。 インターネットの世界では地方新聞でさえも見ることができるようになり、ブランドも溶けていってしまう。流通の違いがパッケージの違いだけでなく、コンテンツにも変化をもたらすことになる。

1-3.出版と図書館の関係

 出版流通はもともと著作権者から出版社を通し、取次や書店を通して読者に届くシステムであるが、これはとても素晴らしく、 読者による購入のみが出版社や取次、書店が運営を支えており、原則として国家のお金が入らない。憲法における表現の自由が保障されているのである。 国民による自立的な流通のチャネルを確保したことにより、表現の自由、出版の自由が獲得できた。図書館はそれを貸し出すことにより「知る権利」を担保している。これが車の両輪である。
 情報を知る際に、今は多くの人がパソコンやスマートフォンによって検索するものになっているが、少し前までは書店や図書館の本が確実な情報のハブであった。 信頼性のあるコンテンツや情報を提供するのが図書館の仕事であるが、それが全体の中で矮小化されていないだろうか。膨大なデジタル情報に図書館がアクセスしないで、「知る権利」の入り口としての立場を維持できるだろうか。
 電子書籍はこの出版流通の延長上で考えるとうまくいかない部分が出てくる。アーカイブをどうするのかという問題も出てくる。その中で図書館の役割はどうなるのか。 今までは図書等を購入して蔵書として利用者に提供していたが、電子書籍では図書館は契約をして利用者に提供することになり蔵書ではない。 従来通り無料で読める環境を提供しても、電子図書館の電子書籍のコンテンツは出版社のクラウド上にあるというシステムである。

2.電子書籍と電子図書館

 図書館では選書することで価値が生まれるとされている。そのうえでも郷土資料は重要である。 国立国会図書館では行政資料のアーカイブを収集しているが、各地域の郷土資料のデジタルコンテンツを収集するためには、 各地域の図書館がデジタル化する必要がある。それを収集し統合することで新たなことが分かることもある。
 図書館で電子書籍を扱わない理由を調査するとニーズがない、という回答がある。ニーズを待つのではなく、 図書館の使命や理念として収集することを考えていきたい。2008年の図書館法の改正で電磁的記録は図書館資料に含むと改正されたが、 図書館においてインターネットやデータベースといった情報源へアクセスすることは図書館資料の利用にはあたらないという見解が当時示されている。 必ずしも電子情報を無料で提供することはない。電子データに所有権もないので、電子書籍の提供は貸与ではない。 電子書籍サービスと契約の中で著作権等の問題も解決しているケースが多い。ただし、電子書籍を売るのはいいが電子図書館に提供したくないという著作者も多いので、 なかなか電子図書館で扱えるコンテンツが増えていかない。また、電子書籍を取り扱う会計制度も変化に対応できていない現状がある。
 アメリカの公共図書館における電子書籍サービスは、およそ9割の館で電子書籍の貸出を行っている。 ただし、コレクションは大人の娯楽用フィクションに偏重している。また、ベンダーごとにアカウント、 アプリが必要であることが課題である。統一されたアプリの開発などの対応も始まっている。
 図書館の開架や書店の棚などと異なり、電子書籍では思いがけない発見や偶然の出会いを提供する機会がどうしても少ない。 一方で、検索機能やアクセシビリティの機能がある。図書館と電子書籍をコラボレーションすることが効果的である。
 電子書籍の利用モデルとしてアメリカの例を見れば、一度に一人への貸出をするシングルユーザーモデル、利用回数に応じた課金のモデルなどがある。 しかしシングルユーザーモデルでは、せっかくデジタルなのにマルチアクセスできないのは惜しい気がするし、利用回数に応じた課金だと、 予算を立てにくい問題がある。現在の電子書籍販売と似た利用者主導型購入方式もあるが、これは閲覧履歴の扱いに懸念が残る。

3.学校図書館における電子書籍利用調査

 この調査は公共図書館の電子書籍サービスを使用してもらって児童生徒にアンケートをとったものである。詳細はweb上に上がっている。
 児童生徒の電子書籍の利用経験者は全体を通じておよそ半数である。児童生徒、教職員ともに半数以上は好印象をもっており、 特に小学校高学年が中高生よりも高い評価をしている。電子書籍の利用意向は、「ぜひ使いたい」「あれば使いたい」は7割で、 小学校高学年では高校生の3倍の児童が「ぜひ使いたい」と回答し、校種が下がるほど肯定的であることがわかった。 また高校生の「1か月間の読書量」と「電子書籍の利用意向」をクロス分析したところ、不読者の53%が利用意向を示していることに注目したい。 スマホ読書は、この不読者層が本を読むきっかけとして有効なのではないか。本を読む児童ほど電子書籍を読みたいというところも注目すべきである。
 また、「小説家になろう」などやLINEマンガなどを読むことを「読書」と捉えていない傾向も見られた。読書とは何かという問いにもなっている。

4.電子書籍のアーカイブを誰が担うのか

 最近では新たなメディアとしての「電子書籍(2.0)」を考える必要がある。すなわち、本の電子化ではなく、先にデジタルコンテンツとして生み出されるケースが増えてきた。 そして小学生の方が支持をする傾向が強い。読者が変わっていることに対し、図書館はどう対応していくのかを考えるのが重要である。
 文字情報流通の主役が紙からデジタルメディアに交代しつつある。問題があるとしたらその信頼性はどこが担保しているのかという点である。 図書館が持っている蔵書は、出版社によって信頼性が担保されている。今、図書館に来ている人たちに対して、ここにしかないものをどう提供していくかが、これからの図書館が考えていくべきことではないだろうか。

【質疑応答】

Q.小学校の教科書の電子化が一番教育効果あるのではないかと思うが、現状はどうか。

A.それは歴史が古く、教育工学という概念が生まれたのは大型コンピュータをメインフレームでサービスしようと言ったのが60年代である。 70年代80年代はスタンドアローンのパソコンが登場しCAIと呼ばれ、その後はeラーニングでインターネットにつながったが、それでもうまくいかなかった。 デジタル教科書の推奨は教育関係者ではなくデジタル技術者が唱えているが、それはそこに膨大なサービスと経済効果が生まれるからであって、教育効果があるかどうかは判断つきかねる。 また、タブレット等の端末を使用しては教室で先生が生徒をコントロールするのが難しい場面も多い。そこで副教材で取り扱う道が考えられている。 また、パソコン教室を作りたいが現場環境としてネットワーク化することが厳しい現実がある。海外と同じように図書館に行けばネットワークにアクセスできるなど、 子どもたちにデジタルデバイスを使用して情報と出会う機会を与える場が欲しい。学校図書館ではマルチアクセスになるともっと良い。 みんなで同じ作品に同時にアクセスできることができれば良い。子どもたちの興味関心に沿うアプローチが大事だ。


Q.行政資料のデジタル化について国立国会図書館はどの程度収集できているのか。

A.国立国会図書館ではかなりの部分で収集はできたが、利活用についてはまだまだできていない。 出版社よりも行政の方がアーカイブされることに抵抗が強いように思う。国会図書館が集めたものをどこからでもアクセスできる仕組みを早く作らなければいけない。 収集の段階では制度の無駄や手間がかかるところがあるが、それは声をあげて改善につなげてほしいと思う。


Q.電子ジャーナルについて、特に欧米のものについて価格高騰が進んでいるがそれが止まることはあるのか。

A.ヨーロッパの商業電子出版社が、コストがかかるので電子ジャーナルの価格を上げることにした一方で、 対抗軸として主としてアメリカにおいてオープンアクセスや大学による機関リポジトリでパブリックドメインにして権威づけをしようという動きが生じた。 その後あまり動いていない印象がある。ただ、信頼性を付与する機関として大手出版社ではなく日本でもヨーロッパ系でも学会で信頼が高いので、 インパクトファクターを取るには検索をかけてヒットするオープンアクセスの方向で進んでいる。
 次は政府がダークアーカイブをすることが大事だと思う。


Q.専門書のデジタル化の見込みはどうなのか。
 また、電子ジャーナルを継続して購入するためのアピール方法は、統計の他に無いでしょうか。

A.世代が変わらなければニーズができあがっていかないので現状はまだまだニーズは低いように見える。 しかし利用者が育つのには時間がかかるが、一度電子ジャーナルを使用するようになった研究者が紙媒体のものには戻らない。ニーズ(需要)ではなく、シーズ(種蒔き)をすることも責務ではないか。


以上